空を切り裂く小さな狩人!チゴハヤブサの驚異のスピードと家族の絆
あなたは「チゴハヤブサ」という鳥を知っていますか?名前はかわいらしいですが、その実態は空のハンター。世界最速といわれるハヤブサに匹敵するスピードを持ちながら、体の大きさはわずか鳩ほど。小さな翼で広い空を自在に飛び、命をつなぐために戦い、愛する家族を守り抜く――そんなドラマが、2025年10月19日放送の『ダーウィンが来た!』で描かれました。この記事では、番組で明らかになったチゴハヤブサの生態、狩りの秘密、子育ての奮闘、そして人々の知らない「生きるための知恵」を徹底的に紹介します。
秋田の田園に生きる“空のアスリート”
舞台は秋田県仙北平野。黄金色の稲穂が風にそよぐ広大な田園地帯に、屋敷林を囲む家々が点在しています。その静かな風景の上空を、音もなく駆け抜ける影――それがチゴハヤブサです。
名前の「チゴ」は“稚児(ちご)”、つまり小さな子を意味します。体長30センチほど、重さは200グラムほどの小型の猛禽類。しかしその小さな体に秘めた飛行能力は驚異的。トンボを見つけると一気に加速し、なんと一度追い越してからUターン、正面から先回りして捕らえるという戦略を見せます。獲物の動きを読み、わずか一瞬のタイミングで襲いかかる――その動きはまさに「空の忍者」。
番組では、高速度カメラでその飛行を分析。わずか1秒の間に羽ばたき角度を巧みに変え、風を切り裂くように方向転換する姿が捉えられました。獲物はトンボだけでなく、スズメやツバメなど俊敏な小鳥まで。ハヤブサの仲間にふさわしい超反射神経の持ち主です。
“借りぐらし”の知恵 巣はカラスからの再利用
驚くべきことに、チゴハヤブサは自分で巣を作ることができません。全国219か所の巣を調査した結果、すべてがカラスの古巣を再利用していたことが判明しました。樹上高くに作られた頑丈なカラスの巣は、風通しもよく、外敵からも見つかりにくい理想的な子育ての場所。まさに“自然界のリサイクル”。
しかし、カラスの縄張りを奪うということは、危険も伴います。ある日、巣の近くにハシボソガラスが接近。するとチゴハヤブサの親鳥は一瞬で上空から急降下し、見事な飛び蹴りをお見舞い! そのスピードと正確さは、まるで格闘家のよう。さらにスタッフが実験的に“カラスのぬいぐるみ”を設置すると、チゴハヤブサは本物と同じように怒りの一撃を加え、羽毛をむしり取るほどの攻撃を見せました。巣に近づく者は誰であろうと容赦なし。こうして家族の安全を守るのです。
地面に伏せる謎の行動に隠された“生きる術”
取材班が新たに目撃したのは、これまで文献にもほとんど記されていなかった奇妙な行動。チゴハヤブサが翼を広げ、地面に伏せるような姿勢をとっていたのです。一見するとケガをしているように見えますが、実はこれが“砂浴び”や“殺虫行動”である可能性があるとのこと。羽根についたダニや寄生虫を落とすだけでなく、太陽の熱で体を殺菌するという自然の知恵。
砂煙をまといながら静かに佇む姿は、戦いの合間に心身を整えるようでもあり、その逞しさに胸を打たれます。
命をつなぐ、壮絶な子育ての現場
メスが卵を温め、やがて小さな3羽のヒナが誕生します。オスは一日中飛び回り、トンボや小鳥を狩っては巣に運びます。その数はなんと一日20回以上。メスは巣でヒナを守りながら、オスの持ち帰った獲物を小さく裂き、一羽一羽に分けて与えます。雨の日には、メスが羽を大きく広げて傘のようにヒナたちを覆い、体温が下がらないように守る姿も。自然の中で生きる母親の愛情がそこにはありました。
やがてヒナが大きくなり、巣立ちの時を迎えるころ、悲劇が起きます。巣に忍び寄ったヘビがヒナを襲い、一羽が犠牲に。驚いた別のヒナが巣から落下してしまいました。しかし、残された親鳥たちは諦めず、狩りの回数を増やし、残った子たちに食べ物を届け続けます。1週間後、巣から落ちたヒナは奇跡的に生き延び、元気に飛び立ちました。自然界の厳しさと、親のたくましさが交錯する瞬間でした。
初めての狩り、旅立ちの季節へ
成長したヒナたちは、やがて自分の力で獲物を捕らえる練習を始めます。この時期にぴったりの相手が『アブラゼミ』。動きがゆるやかで、初めての狩りにはうってつけ。親鳥はセミを捕まえて見せ、まるで“手本”のように何度も実演します。子どもたちはその姿を真似て、少しずつ独り立ちへの道を歩みます。
そして秋。家族はそれぞれ空高く舞い上がり、インドや東南アジアの越冬地を目指して長い旅に出発します。北国の夏を生き抜いた小さな命が、再び春に戻ってくることを願わずにはいられません。
まとめ ― 小さな翼が語る“生きる強さ” ―
・チゴハヤブサは鳩ほどの体ながら、ハヤブサに迫るスピードで空を支配する。
・カラスの古巣を再利用し、強烈な防衛本能で家族を守る。
・砂浴びや殺菌行動など、自然の知恵を駆使して生き抜く。
・子育てでは、親が命を懸けてヒナを守り、狩りを教えながら巣立ちを支える。
小さな翼で風を裂くその姿には、“生きる力”が凝縮されています。どんなに小さな命にも、戦う知恵と愛がある。チゴハヤブサは、自然界の中で生きるすべての命の象徴ともいえる存在でした。秋田の空を駆け抜ける一羽の姿は、見る者の心に静かな感動を残します。
【出典】
NHK『ダーウィンが来た! 初密着!超高速ハンターチゴハヤブサ』(2025年10月19日放送)
https://www.nhk.jp/p/darwin/
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