「編み物男子は神の繊維を編む!?」
2025年6月21日放送のNHK総合『所さん!事件ですよ』では、今、静かに広がりを見せている編み物ブームと、世界中で注目を集める“神の繊維”について特集されました。番組では、編み物を趣味とする男性たちの姿や、超高級素材ビキューナ、さらには卵殻膜をはじめとする新素材まで、繊維の魅力を多角的に紹介していました。
編み物男子が注目される時代に
近年、編み物を趣味として楽しむ男性が増えており、番組ではこの新しいライフスタイルが注目されていました。SNSを中心に「編み物男子」という言葉も広がり、手作業の魅力や癒やしを求める人たちが集まっています。番組で紹介されたのは、今や世界的に活躍するLE SSERAFIMのSAKURAさんや、モデル・女優の佐々木希さん、そして東京オリンピックの男子高飛び込み金メダリスト・トーマス・デーリーさん。いずれも編み物に親しみ、日常の中に取り入れている様子が映像で紹介されました。
編み物は、手軽に始められる一方で、作品が完成するまでには集中力と根気が求められます。これまで「女性の趣味」と思われがちだった編み物に、性別の壁を超えて多くの人が興味を持ち始めている背景には、ストレス社会において心を落ち着かせる「編む時間」の価値が見直されていることも関係しています。
番組に登場したのは、編み物男子の佐藤さん。彼は「所さん!事件ですよ」のために特別な作品を編み上げており、作品には番組タイトルが丁寧に編み込まれ、裏側には番組公式サイトにつながるQRコードまでが織り込まれていました。実際にそのQRコードからアクセスができることが検証され、スタジオではその技術力と遊び心に驚きの声が上がっていました。
この作品は以下のような特徴を持っていました。
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文字の編み込みが細かく丁寧で、番組名がはっきりと読める
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裏側に埋め込まれたQRコードは、スマートフォンで読み取るとすぐに公式サイトに接続できる
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糸の色使いやデザインにも工夫が施されており、見る人にインパクトを与える作品だった
また、東北大学加齢医学研究所の川島隆太医学博士は、編み物の効果について科学的な視点から解説しました。編み物は手先を動かしながら頭を使う活動であり、脳の加齢による機能低下を緩やかにする効果があると考えられているそうです。さらに、定期的に編み物を行うことで認知症の予防につながる可能性も示唆されていました。
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編み物は両手を使う作業で、右脳・左脳をバランスよく刺激する
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作品が完成する達成感が心の安定にも役立つ
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継続することで、集中力や記憶力の維持に良い影響を与えるとされる
このように、編み物は年齢や性別を問わず、誰でも始められるクリエイティブな趣味であると同時に、心と体にやさしい生活習慣のひとつとして注目されているのです。番組では、その魅力がさまざまな角度から丁寧に紹介されていました。
世界中が注目する“神の繊維”ビキューナとは?
番組後半では、“神の繊維”と呼ばれるビキューナが紹介されました。ビキューナは、南米の高地に生息する動物ビクーニャから採れる繊維で、その希少性と品質の高さから、世界中のセレブや高級ブランドからも注目されています。繊維の太さはわずか0.012mmと非常に細く、毛と毛の間に空気が多く含まれるため、高い保温性を持つのが特徴です。
この繊維は、手触りがとてもなめらかで、軽さと暖かさを兼ね備えており、着心地の良さも格別です。しかし、希少な理由として、ビクーニャの毛は2~3年に一度しか刈ることができず、さらに1頭からわずか200g程度しか繊維を採取できないという点が挙げられます。このため、ビキューナは世界で最も高価な天然繊維のひとつとされています。
番組内では、ビキューナを愛用している著名人として、イギリスのチャールズ3世や俳優のブラッド・ピットの名が紹介されました。高級スーツやコートなどの素材として使用されることが多く、富裕層の間で人気が高まっています。
また、ビキューナの生息地についても番組で詳しく説明されていました。
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ペルー:ナスカ、リマ、ルカーナス村などが有名な産地
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アルゼンチン、チリ、ボリビア、エクアドルなどのアンデス山脈沿いの3000m以上の高地にも分布
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自然保護区域に指定されている場所も多く、現地では毛刈りの際に捕獲・解放する「チャク」と呼ばれる伝統的な方法が用いられている
このように、ビキューナは単なる素材ではなく、地域の文化や生態系とも深く関わっています。
現在、世界で使われている繊維の多くが石油由来の化学繊維である中、自然環境に配慮した持続可能な素材としてビキューナのような天然繊維への注目も高まりつつあります。再生可能な資源でありながら、限られた量しか生産できないという希少性が価値をさらに高めています。
このように、ビキューナは見た目の美しさや品質だけでなく、その背景にある自然との共生や持続可能性といった面からも、世界中から注目を集める“神の繊維”となっているのです。
卵の殻から繊維?未来を変える新素材
番組の終盤では、思わず驚いてしまうような素材「卵殻膜(らんかくまく)」が取り上げられました。これは、卵の殻の内側にある薄い膜の部分を再利用し、新たな繊維として衣料品に応用するというものです。紹介されたのは、2025年大阪・関西万博に設けられる「大阪ヘルスケアパビリオン」。そこでは、この卵殻膜を原料とした繊維が未来を変える素材として展示され、注目を集めていました。
卵殻膜は、もともと保温性や保湿性に優れている天然素材で、従来は捨てられてきた存在でしたが、廃棄物を資源に変える発想から見直されるようになりました。今回のプロジェクトでは、「Nest for Reborn」という名前のもとに開発が進められています。この繊維を作るまでには、実に7年という長い研究期間がかかったと番組で紹介されていました。
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卵殻膜は、非常に薄く軽いのに保温性が高い
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加工することで柔らかく通気性のある繊維となる
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食品廃棄物の有効利用として環境にもやさしい
番組では、1年で約1300個の卵を消費する4人家族を例に、廃棄される卵の殻がどれだけ多いかも紹介されており、その再利用の可能性に視聴者も関心を寄せた内容でした。
さらに卵殻膜だけでなく、他の食べ物の副産物から繊維を作る技術も進んでいることが紹介されました。具体的には以下のような素材が挙げられていました。
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バナナの茎:太くて繊維質が豊富。織物や糸に加工される
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パイナップルの葉:軽量で通気性に優れた繊維が取れる
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トウモロコシの皮:柔らかくて自然な風合いがある
これらの天然素材は、元々は廃棄されるものですが、今や衣服やインテリア素材として再注目されています。番組では、こうしたサステナブルな繊維技術が衣類産業に新しい可能性をもたらしていることも伝えていました。
背景には、現在の世界の繊維事情があります。実際、世界で生産される繊維の約3分の2が石油由来の化学繊維であるとされています。大量生産・大量消費による環境負荷が大きな課題となっている中で、こうした天然由来の新素材は、持続可能な社会づくりにとって重要なカギとなります。
繊維をめぐる世界の動きは、単に「服を作る」だけにとどまらず、環境、技術、ライフスタイルといった多方面に影響を与えています。卵の殻やバナナの茎が洋服に生まれ変わるという発想は、次の時代の「ものづくり」を考えるうえで、とても大きなヒントとなるでしょう。
番組を通して見えてきたこれからの繊維のかたち
今回の放送では、趣味としての編み物から、超高級素材ビキューナ、そして未来の衣料を支える新素材まで、繊維をめぐる最新事情がわかりやすく紹介されました。
編み物は単なる趣味ではなく、心と体を豊かにする生活の一部になりつつあり、そこに使われる素材もまた、環境への配慮や技術の進歩とともに進化していることがよく伝わりました。
今後も「所さん!事件ですよ」では、身近なテーマにひそむ意外な社会の動きを紹介してくれることでしょう。今回の放送内容は、編み物や素材に興味を持つきっかけとして、視聴者にとっても実りある30分となったのではないでしょうか。
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