クジラ特集|海の王者を支える“驚きの進化”とは?
今回のアニマルドックは、地球最大の生きもの・クジラをテーマに、その驚きの体の仕組みや生態をたっぷり紹介しました。南極から北極、そして赤道付近まで世界中の海に生息するクジラは、まさに海の食物連鎖の頂点に立つ存在です。番組では、その巨大な体がどうやって作られたのか、なぜほ乳類でありながら海で暮らすのか、そして潜水や音の使い方といった特殊能力まで、さまざまな角度から解説がありました。
クジラはなぜほ乳類なのに海で暮らすのか
クジラはイルカと同じ「鯨類」に属し、体長4m以下をイルカ、それ以上をクジラと呼ぶことが多いです。全長33.6mにもなるシロナガスクジラは、動物の歴史4億年の中でも恐竜と並び最大級の大きさです。なぜここまで大きく進化したのかという疑問に対して、番組は「豊富な食料」と「効率的な捕食法」が大きな理由だと説明しました。
巨大な体を支える驚きの食事スタイル
取材は福岡県のマリンワールド海の中道から始まりました。ここで一番大きなクジラはコビレゴンドウのユキちゃんで、全長6m。これ以上のサイズは水族館での飼育が難しいとのこと。野生のシロナガスクジラは、魚やイカではなくオキアミなどの小さなプランクトンを主食にしています。
クジラの下あごから腹にかけてある畝(うね)は蛇腹のように伸び、口の容量を数倍に広げます。この仕組みで、一度に約70トンもの海水とプランクトンを取り込むことができます。さらに口の上あごには「ヒゲ板」が並び、海水をこし取り、プランクトンだけを残して食べることができます。セミクジラでは、このヒゲ板が約400〜500枚も並んでいます。
プランクトンを食べる仲間たち
プランクトンを食べるのはクジラだけではありません。ウバザメやジンベイザメ、メガマウスなども鰓耙(さいは)という部分で海水をこし取り、効率よくプランクトンを捕食します。さらにカニクイアザラシは、歯のすき間を利用してオキアミを絡め取るなど、それぞれ異なる工夫で同じ小さな獲物を食べています。
南極海にはナンキョクオキアミが推定6000万〜4億2000万トンも生息しており、この圧倒的な量のエサが、クジラの巨大化を可能にした背景になっています。
深海への驚異的な潜水能力
マッコウクジラは深さ2000mまで潜り、1時間以上も潜水できます。さらにアカボウクジラは潜水深度2992m、潜水時間2時間18分という驚異の記録を持ちます。秘密は心拍数にあり、シロナガスクジラでは潜水時に心拍数がわずか2回/分まで下がります。これにより酸素消費を最小限に抑え、脳や心臓といった生命維持に必要な器官に酸素を優先的に送ります。
また、クジラの臓器は丸みを帯びた形状をしており、水圧を均等に分散させることで深海の高い圧力にも耐えられるようになっています。
酸素を蓄える赤い筋肉
クジラの肉が赤いのは、筋肉に多く含まれるミオグロビンというタンパク質の影響です。人間の筋肉の含有量が約0.5%なのに対し、マッコウクジラでは1.6%と3倍以上。ミオグロビンは酸素を貯蔵し、潜水時に放出することで長時間の潜水を支えています。まるで筋肉に内蔵された酸素ボンベのような役割です。
ザトウクジラの泡のカーテン
海面に白いリング状の泡が浮かぶのは、ザトウクジラが行う「バブルネットフィーディング」の証。仲間と連携して泡で囲いを作り、中に小魚やプランクトンを閉じ込めて一気に捕食します。この狩り方はチームワークが重要で、ザトウクジラならではの迫力ある行動です。
深海で響く爆音と音の使い分け
暗く視界のきかない深海では、クジラは音で獲物を探します。ハクジラ類は美声門を震わせて超音波を出し、反響で障害物や獲物の位置を把握します。マッコウクジラはジェット機並みの大音量のクリック音を発し、数十キロ先まで探査することができます。音の増幅には頭部の脳油とジャンクが関わり、メガホンのような役割を果たしています。
さらにザトウクジラのオスは、繁殖期に低周波の「ラブソング」を歌い、遠く離れたメスにアピールします。この低周波は波長が長く、広範囲に届く性質があります。
クジラの進化の歴史と海への適応
クジラはもともと陸上で生活していたほ乳類が進化した生きものです。約5000万年前、インド付近にいたパキケトゥスという犬に似た動物が祖先とされ、川や海辺で生活を始めたのが第一歩でした。その後、足はヒレに変化し、鼻の穴は頭の上へ移動。水中で長時間過ごせるように肺や循環器系も適応していきました。こうして完全に水中生活に適した体になり、現在のクジラの形に進化していきました。
人間とクジラの関わりの歴史
古代からクジラは人々の生活や文化に深く関わってきました。日本では縄文時代の貝塚からクジラの骨が発見されており、食料や道具の材料として利用されていたことがわかります。世界各地でも捕鯨文化が発達し、肉や油、ヒゲ板などは貴重な資源でした。しかし、20世紀に入ると過剰な捕鯨により多くの種類が激減。国際的な捕鯨規制や保護活動が始まりました。
現在の保護活動と課題
現在、多くのクジラは国際捕鯨取締条約(IWC)の下で保護されていますが、海洋汚染や船舶との衝突、気候変動によるエサの減少など、新たな脅威が増えています。特に南極海の氷の減少はナンキョクオキアミの生息環境に影響を与え、ヒゲクジラ類にとっては深刻な問題です。また、海に漂うプラスチックごみを誤飲するケースも報告されており、世界中で対策が急がれています。
クジラ観察とエコツーリズム
近年は捕鯨よりも「ホエールウォッチング」が盛んになり、経済効果と環境保護を両立する取り組みが広がっています。北海道や小笠原諸島、沖縄などでは季節ごとに異なる種類のクジラが見られ、観光客を楽しませています。ただし、距離を保った観察や音によるストレスを避けるルールを守ることが重要です。
クジラ研究の最前線
最新の研究では、クジラの鳴き声や行動を長期間モニタリングする装置が開発され、生態の解明が進んでいます。人工衛星を使って回遊ルートを追跡する試みもあり、これにより餌場や繁殖地の保護がより効果的に行えるようになっています。こうした技術は、将来のクジラ保全に欠かせない存在になっています。
実物大のクジラに会えるスポット紹介(家族連れにおすすめ!)

ここからは、私からの提案です。ここでは、実物大に近いクジラの骨格や模型を見られる全国の施設を紹介します。どこも子どもから大人まで楽しめる展示がそろっていて、体験や学びも充実。家族で訪れて、巨大なクジラの世界にじっくり触れてみてください。
くじらの博物館(和歌山県・太地町)【原寸大のシロナガスクジラに圧倒される!】
内容
この施設の目玉は、体長約26メートルのシロナガスクジラ全身骨格レプリカ。そのほか、セミクジラやホッキョククジラ、シャチの実物標本も、吹き抜けの大ホールに迫力満点で吊り下げられています。水槽や映像展示も多く、クジラの生態や漁の歴史も学べます。
おすすめポイント
頭上に広がる骨格展示は本物さながらのサイズ感で、空間全体がクジラに包まれているような感覚になります。さらに、タッチ可能な模型やジオラマ、水中探検風のコーナーも充実。大人も子どもも時間を忘れて楽しめます。
家族向け情報
ミュージアムショップではぬいぐるみや図鑑が揃い、お土産にも困りません。さらにカヤックに乗ってイルカに餌やり体験ができるなど、海と生き物を満喫できるアクティビティが豊富です。半日から1日かけてゆったり楽しむのがおすすめです。
名古屋港水族館(愛知県名古屋市)【進化の海で骨から学ぶクジラの歴史】
内容
「進化の海」と名付けられた展示エリアには、5000万年前の陸上哺乳類から現代のクジラまでを再現した進化模型と化石レプリカが多数並びます。ミンククジラやキタトックリクジラ、マッコウクジラの骨格標本は、間近でその大きさを体感できます。
おすすめポイント
骨格標本は天井から吊るされ、真下からも見上げられる設計で、あごの形や背骨のつながりなど、教科書ではわからないリアルな構造が見られます。イルカやシャチのパフォーマンスも同じ館内で開催されていて、一日中飽きません。
家族向け情報
ショーの合間に骨格展示を楽しんだり、自由研究用のメモやスケッチを取ったりするのに最適。夏休み中にはクジラについて学べるイベントも開催されており、学びとエンタメのバランスがちょうど良い施設です。
国立科学博物館(東京都・上野)【マッコウクジラの内部までリアルに再現】
内容
地球館1階には、13.77メートルのマッコウクジラ骨格標本と半身模型が並んで展示されています。内臓や神経系、筋肉の構造まで再現されており、クジラの「中身」を深く学べます。
おすすめポイント
ただの骨格だけでなく、目や口、肛門の形まで本物に近づけたリアルな模型は他にない展示。映像や音響の解説も加わり、科学的な視点からクジラを立体的に理解できます。
家族向け情報
科学好きな子どもにはぴったり。展示をめぐるスタンプラリーやワークシートも配布されていて、自由研究にも使えるヒントが豊富です。雨の日でも安心な屋内施設で、アクセスも良好です。
海の博物館(千葉県立中央博物館分館・勝浦市)【巨大なあごの骨をじっくり見られる】
内容
房総の海をテーマにした自然史系博物館で、マッコウクジラの下顎骨(約4.9メートル)やツチクジラの全身骨格などが展示されています。室内の展示ながら、海中を泳ぐように配置された構造が特徴的です。
おすすめポイント
他の施設と比べるとコンパクトですが、その分展示との距離が近く、じっくり観察できるのが魅力。顎の湾曲や歯の形状などを細かく観察したい方にはぴったりです。
家族向け情報
10分程度の体験交流員による展示ガイドがあり、小さな子ども連れでもわかりやすく楽しめます。静かな環境で、短時間で効率よく学びたいときにもおすすめです。
比較まとめ:おすすめ施設のスペック一覧
施設名 | 場所 | 特徴 | 所要目安時間 | 対象年齢/楽しみ方 |
---|---|---|---|---|
くじらの博物館 | 和歌山県太地町 | 原寸大シロナガスクジラ全身骨格・多種標本 | 2〜3時間+体験 | 小学生〜大人、触れる・野外体験も楽しめる |
名古屋港水族館 | 愛知県名古屋市 | 進化展示+多数クジラ骨格標本 | 2〜3時間 | 幅広い年齢、イルカショーと合わせて学べる |
国立科学博物館 | 東京都上野 | マッコウクジラ模型+骨格展示、内部構造がリアル | 1〜2時間 | 理科好きの子どもや中高生、パネルや映像で学べる |
海の博物館(千葉) | 千葉県勝浦市 | 下顎骨やツチクジラ展示、静かな交流型施設 | 1時間程度 | 幼児〜小学生向け、じっくり観察にぴったり |
家族のおでかけプランにもなる魅力ポイント
学びと驚きが両立:骨格や模型を通じてクジラの大きさや構造をリアルに実感でき、体験型展示で楽しみながら学べます。
施設ごとの特色を活かせる:和歌山では漁の歴史、名古屋では進化の過程、東京では構造理解、千葉では部位観察と、各施設の個性が光ります。
自由研究にも最適:骨の長さを測って記録したり、標本の違いを比較したりと、学校の課題にもそのまま使える素材が豊富です。
このようなスポットを訪れることで、テレビで見たクジラの世界がさらに身近になり、子どもたちの記憶にも深く残る体験になります。放送とあわせて計画してみてください。
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