祭りヤバいぜ!230年の伝統が海で燃える!日和佐ちょうさの挑戦
太鼓の音とともに潮風が吹き抜け、波しぶきが光る——。徳島県美波町で続く「日和佐ちょうさ」は、まさに“海と生きる人々”を象徴する秋祭りです。太鼓屋台を担いで海へ突っ込む「海入り」は全国でも珍しく、見る人の心をつかんで離しません。230年以上の歴史を持つこの祭りは、日和佐八幡神社の秋季例大祭として続けられており、町の誇りであり魂そのものです。
しかし、いま美波町は大きな転機を迎えています。担ぎ手の高齢化、若者の流出、資金不足――。祭りを支える力が年々弱まり、「昔はよかった」と嘆く声が聞かれるようになりました。けれど、町の人たちはあきらめません。伝統を止めるのではなく、形を変えてでも残す。その情熱が新しい挑戦へとつながっています。
【午後LIVE ニュースーン】悪石島ボゼ祭り2025―地震の夏に若者がつないだ伝統と祈り|ユネスコ無形文化遺産
海とともにある町、美波町が誇る「日和佐ちょうさ」
徳島県南部の黒潮が洗う町、美波町。ここは、ウミガメの産卵地・大浜海岸でも知られる自然豊かな港町です。古くから漁業とともに発展してきたこの町で行われる「日和佐ちょうさ」は、江戸時代から続く神事。町内8つの地区から8台の太鼓屋台が出て、力強い太鼓と掛け声で町を練り歩きます。
祭りの最大の見せ場が「お浜出(おはまいで)」です。クライマックスでは、大浜海岸の白い砂浜を進み、太鼓屋台ごと海に突入。波が打ち寄せる中で太鼓を打ち鳴らすその姿は、まさに“命を懸けた伝統”と言えるでしょう。海に入るたびに担ぎ手たちはずぶ濡れになりますが、その笑顔には誇りが宿っています。
この祭りには「海の恵みへの感謝」「地域の繁栄への祈り」が込められています。祭りの太鼓の音は、海の向こうへ漁に出た人々へ届ける合図でもありました。いまでも、町の年配の人々はこの音を聞くと昔の仲間を思い出すと言います。
担ぎ手不足の現実、それでも祭りを止めない理由
美波町の人口は現在およそ5000人。かつては子どもから大人まで町全体が祭り一色に染まりましたが、今では担ぎ手が集まらず、屋台を動かすことさえ難しい年もあります。太鼓屋台は1台あたり数トンにもなるため、相当な力と人数が必要です。高齢化が進み、若い世代が県外に出てしまうことで、祭りを続けるのは年々困難になっています。
「昔はよかった」という声があがる中、ある年長者が言いました。「今の子らが“自分たちの時代の祭り”を作ればいい」。この言葉をきっかけに、地元保存会や商店街、学校、観光協会が協力し、次世代につなぐ新しい方法を模索し始めたのです。
未来を開く!「ドジャース方式」と「ウミガメ作戦」
美波町の人々が考え出したのが、「ドジャース方式」と「ウミガメ作戦」。このユニークな名前には、“伝統を閉ざさず、開いていく”という想いが込められています。
「ドジャース方式」は、野球チームのように人を“補強”していくという発想から生まれました。地元だけでなく、県外の出身者・帰省者・移住者・観光客にも広く声をかけ、祭りに関わるチャンスを増やしたのです。特にUターン・Iターンで美波町に戻ってきた若者がリーダーとなり、SNSを使って全国に呼びかけました。「祭りに参加してみたい」という声が広がり、担ぎ手の輪が少しずつ広がっています。
一方の「ウミガメ作戦」は、美波町の象徴でもあるウミガメをモチーフにした地域連携の試みです。ウミガメが毎年大浜海岸に帰ってくるように、「人も帰ってこられる町」を目指しています。ウミガメ観察や清掃活動を通して子どもたちが自然を学び、その延長で祭りに関わる。環境と伝統がひとつにつながるこの取り組みは、“文化の循環”を象徴する新しい形として注目されています。
230年の伝統を「開く」勇気、そして次の世代へ
230年もの間、日和佐ちょうさは“守られてきた”祭りでした。しかし今の時代に必要なのは、“開く”という勇気です。外からの人を受け入れ、形を変えながらも魂を残す。これこそが、伝統を次の時代へつなぐ新しい道。
町の長老たちも今では「若い人に任せよう」と背中を押しています。祭りの中心には太鼓がありますが、その音を響かせるのは人の心。太鼓を叩くたびに、過去と未来が重なり合う瞬間なのです。
町の人々の目標は、「子どもたちに“自分たちの祭り”と言わせること」。そのために、学校でも太鼓練習の時間を作り、地域全体で支えています。地域の高齢者が太鼓の作り方を教え、若者が動画で発信。昔と今が交差する温かい風景が、美波町のあちこちに生まれています。
放送で描かれる“リアルな奮闘”
番組では、こうした地域の現実と努力を丁寧に映し出します。屋台の修理を手伝う人、休みを取って帰省する若者、太鼓の音を聞いて涙を流す年配の女性。どれもが「祭りを止めない」という町の誇りそのものです。
祭り当日は天候次第で「海入り」ができない年もありますが、それでも太鼓の音は町に響き続けます。230年の伝統は、形が変わっても“音”として生きているのです。
これからの注目ポイント
・ドジャース方式で新たな担ぎ手がどれほど集まるか
・ウミガメ作戦が観光・教育・環境保全にどんな相乗効果を生むか
・地域の若者がどんな形で継承に関わるのか
・230年の歴史を未来へどうつなぐか
これらは、美波町だけでなく全国の地方祭りにも共通するテーマ。日和佐ちょうさの挑戦は、地域文化の再生モデルとして他の町にも影響を与えるはずです。
まとめ
この記事のポイントは3つです。
-
日和佐ちょうさは、徳島・美波町で230年以上続く「海と共にある祭り」。
-
担ぎ手不足という現実を乗り越えるため、「ドジャース方式」「ウミガメ作戦」という革新的な方法を導入。
-
伝統を“守る”から“開く”へ。人と自然と文化がつながる新しい形の祭りづくりが進行中。
放送では、これらの取り組みがどのように結実するのか、町の笑顔や涙を通して描かれるでしょう。放送後には、参加者の声や新しい試みの成果を追記予定です。
放送情報
番組名:祭りヤバいぜ!
放送日:2025年11月2日(日) 16:00〜16:30
放送局:NHK総合
特集:徳島県美波町「日和佐ちょうさ」〜230年の伝統をつなぐ秋〜
出典:徳島新聞デジタル/美波町公式サイト(town.minami.lg.jp)/NHK番組情報ページ
気になるNHKをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。


コメント