秋の王様・まつたけを増やした男!長野・伊那の山で見た奇跡の「根切り」技
秋になると一度は食べたくなる『まつたけご飯』や『土瓶蒸し』。でも、最近では「高くて手が出ない」「昔より見かけなくなった」という声が増えています。実は今、まつたけは絶滅危惧種にも指定されるほど希少になっているのです。けれど、そんな状況に希望をもたらす一人の名人がいます。
舞台は長野県伊那市。ここは日本一のまつたけ産地として知られています。その山の中で70年近く、ひとり黙々と山と向き合い続けた藤原儀兵衛さん。彼が編み出した『根切り』という技が、今、まつたけ再生のカギとして注目を集めています。
「もう一度、あの香りを山に戻したい」。そんな思いから始まった挑戦は、やがて“狙った場所にまつたけが生える”という奇跡を起こしました。この記事では、藤原さんの技術の秘密と、地元で受け継がれるまつたけ料理の魅力を紹介します。
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まつたけを生む“シロ”を育てる、奇跡の山づくり
まつたけが生えるには「運まかせ」ではなく、実は繊細な条件があります。アカマツの根と菌が結びついて生まれる『シロ』と呼ばれる場所がその鍵。藤原儀兵衛さんは、この“シロ”を人の手で増やす方法を長年かけて確立しました。
その中心となるのが『根切り』。松の根が混みすぎると、菌が息をできなくなる。だから、根の一部を切って“間”をつくることで、菌が新しい根に共生しやすくなるのです。藤原さんは「山の声を聞くようにして、木の根の流れを読む」と話します。これは単なる伐採ではなく、森と呼吸を合わせる作業。地表を整え、落ち葉や腐葉土を取り除き、日当たりや風通しを調整する――。まさに「森の医者」のような丁寧さです。
この“根切り”を行った山では、数年後にまつたけが群生。40本の根を切った一帯で約20のシロが生まれたという記録も残っています。まつたけが自然に戻ってくる。その光景は、まるで山が息を吹き返したかのようだといいます。
「何もせず待つ」から「環境を整える」へ
藤原さんの方法のすごさは、“人が手を入れる=自然を壊す”という従来の考え方を覆したことにあります。彼の考えはシンプルです。「人が山を守れば、山も応えてくれる」。
落ち葉をかき、腐葉土を薄くし、松の根が光と風を感じられるように整える。こうして土の通気性を保つと、まつたけ菌は再び活発になり、アカマツと共生を取り戻します。
この『森を整える=まつたけを増やす』という考え方は、今では長野県の林業関係者の間でも注目されています。まつたけだけでなく、アカマツ林そのものの保全にもつながるからです。人と自然の関係を見つめ直す、持続可能な取り組みとして評価されています。
地元の味に受け継がれる、香りをいかすまつたけ料理
長野県伊那市では、秋になるとまつたけを使った料理が地元の食堂や宿で並びます。まつたけの香りを最大限にいかすには、「火を通しすぎない」ことと「味を重ねすぎない」ことがポイント。
代表的な料理はやっぱり『土瓶蒸し』。まつたけを薄く切り、鶏肉やえびと一緒に出汁で蒸すだけ。ふたを開けた瞬間に立ちのぼる香りは格別です。
もうひとつの人気が『焼きまつたけ』。傘に十字の切れ目を入れて炙ると、香気がふわっと広がります。仕上げにすだちを絞ると、香りの輪郭が引き立ちます。
そして家庭でも人気なのが『まつたけご飯』。他の具材を入れすぎず、まつたけを細く裂いて炊くのがコツ。炊き上がったらすぐにふたを開けず、5分ほど蒸らすと香りがご飯全体に広がります。
どの料理も共通して大切なのは、“香りを逃さない”こと。まつたけは水で洗わず、濡れ布巾で軽く拭くだけ。火を入れすぎないことで、シャキッとした歯ざわりと山の香りが楽しめます。
香りを未来へ。藤原さんの願い
藤原さんが語る言葉には、深い想いがにじみます。「まつたけは、人と山の絆。山を手入れすれば、また香ってくれる」。その信念のもと、彼は70年近くも山に通い続けています。今では若い林業家や地域の住民もこの技を学び始め、伊那の山は再び活気を取り戻しつつあります。
まつたけの香りは、ただの“味覚”ではなく、人と自然の関係を映す象徴。藤原さんの根切り技は、日本の里山がまだ息づいている証なのです。
まとめ
この記事のポイントは3つです。
・長野県伊那市の藤原儀兵衛さんが70年かけて確立した『根切り』技術により、まつたけの発生率を高めている
・「森を整える=まつたけを増やす」という理念が、里山の再生と持続可能な林業に貢献している
・まつたけの香りを最大限に引き出すには、火を通しすぎず・味を重ねすぎず・水で洗わないことがポイント
この番組では、藤原さんの山での実践の様子や、地元で受け継がれるまつたけ料理のコツが詳しく紹介される予定です。放送後には、番組で紹介された具体的な技や料理を追記します。
秋の香りを未来へ――。長野の山で生まれたこの“奇跡の技”が、全国に広がる日も遠くないかもしれません。
(放送後、うまいッ!公式サイトおよびNHK総合にて詳細を追記予定)
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