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NHK【日曜討論】クマ被害多発 影響は 対策は 中山間地域の現実と「県民緑税バッファーゾーン」が開く未来|2025年11月2日

日曜討論
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クマが増えてる!?人と自然がせめぎ合う“今”を考える

「最近、住宅街でクマを見た」「山の実りが減って人里に降りてきたらしい」──そんなニュースを目にして不安に思ったことはありませんか?秋になると、全国各地でクマ出没の報道が相次ぎます。けれど、単なる“山の問題”ではなく、これは今の日本社会そのものを映し出す出来事でもあります。2025年11月2日に放送された日曜討論「クマ被害多発 影響は 対策は」では、専門家たちがクマの増加や人間社会との関係について熱く議論しました。この記事では、番組内容をもとに被害の現状、原因、そして未来に向けた道筋を詳しく紹介します。

【未来予測反省会】軽井沢ベアドッグ×AIクマ識別システム×キムンカムイの思想がつなぐ“人とクマの未来”

クマが急増?“駆除しても減らない”背景にある構造

番組の冒頭、専門家たちが示したのは衝撃的な数字でした。国や都道府県の許可を得て捕獲されたクマは、今年度すでに4282頭。2年前には9000頭以上が捕獲されていたのに、出没件数は減るどころか増えているのです。
横山氏はこの現状を「出てきたクマを駆除しても、山の中の個体が増え続けている」と分析。彼は「来年以降は、人の生活圏に近い山であらかじめ個体数を調整することが必要」と語りました。その上で、「科学的データを基にした毎年の調査が欠かせない」とも強調。つまり、“闇雲な駆除”ではなく、“科学的管理”への転換が求められているのです。

一方、大西氏は「中山間地域の過疎化・高齢化」がクマ出没の増加を招いていると指摘しました。人が山の手入れをしなくなり、耕作放棄地が増えた結果、クマの生息範囲が里へと広がっています。限界集落や消滅集落も増え、かつて人が作っていた“人と自然の境界線”が崩壊しているのです。これが、クマが市街地にまで入り込む最大の要因となっています。

“すみ分け”は可能か?人とクマの新しい関係

番組では「人とクマのすみ分け」が大きなテーマとして取り上げられました。環境省が示す基本的なゾーニングは次の3段階です。

  1. クマの生息地である奥山エリア

  2. 人間とクマの生活圏が接する中山間地域(緩衝地帯)

  3. 人間が暮らす市街地エリア

しかし、現実にはこの境界が曖昧になっています。岸元氏は「予防原則が大事」と語り、一度人の食べ物を覚えたクマは行動を変えられないため、そもそも“餌付かせない環境づくり”が重要だと説明しました。具体的には、
・生ゴミは屋内で保管する
・不要な果樹を伐採・剪定する
・果樹園や畑は電気柵で囲う
・公園や河川敷の放置果樹を撤去する
といった基本的な対策が挙げられました。

横山氏はこのゾーニングについて、「人間社会の変化に合わせて管理のあり方を見直す必要がある」と指摘。クマが警戒心を持っている段階で手を打つことが理想ですが、現状では人間がその変化に追いついていません。結果、クマが人里を“安全な場所”と認識してしまう悪循環が起きています。

出てきたクマ、どうする?厳しい選択と現実

クマが人里に出る理由は複雑です。岸元氏は3つの要因を挙げました。

  1. 若い個体が新たな生活圏を求めて迷い込む

  2. 人間の食べ物に慣れ、人里に餌を求めてくる

  3. 山の中でどんぐりなどの餌が不足している

特に問題なのは“人に慣れたクマ”。大西氏は「人間の食べ物を覚えた個体は殺処分せざるを得ない」と語りました。これは感情的な決断ではなく、他の人や動物を守るための“現実的判断”です。「押し戻す」という言葉も使われましたが、それは“山に戻す”という意味ではなく、「その地域の個体を一度ゼロにして安全な空間を確保する」という、非常にシビアな対応を指しています。

長期的な対策へ 人材と仕組みづくりがカギ

番組では、対策を持続させるためには「人の力」も欠かせないと語られました。横山氏は「今の体制では中山間地域を守りきれない」と述べ、個体数管理専門官などの新しい職種の必要性を訴えました。若者が地域に入り、調査・駆除・再整備を担う仕組みづくりが求められているのです。
堀上氏は「緊急銃猟制度」を例に、緊急時の対応力を高める必要があるとし、「ガバメントハンター」制度の拡充を提案しました。市街地への出没は一刻を争うため、専門知識と装備を持った人材を育てることが急務です。

また、兵庫県長野県では地域税(県民緑税)を活用し、バッファーゾーン整備事業誘引物除去などを進めており、実際に被害が大幅に減少している例も紹介されました。こうした取り組みが、全国のモデルケースになる可能性があります。

社会全体の問題として考える

番組の終盤では、「この問題をどう次につなげるか」が語られました。
大西氏は「地方では人手もお金も不足している。だからこそ、国がリーダーシップをとってほしい」と訴えました。クマ問題は“地方の課題”ではなく、“日本社会の課題”です。人口減少や高齢化といった構造的問題が根底にあるため、環境省や農林水産省だけでなく、地方創生の枠組みで取り組むべきだというのが共通の見解でした。

岸元氏は「長野県ではクマを寄せ付けない対策を地道に続けている。今後も基本を見直し、効果を検証しながら進めることが大切」と話し、堀上氏は「安心して暮らせる社会を取り戻すために全力で取り組む」と決意を示しました。現場の声からは、“自然との共生”という言葉の重みが伝わってきます。

まとめ

この記事のポイントは次の3つです。
・クマの出没増加は、個体数の問題だけでなく人の減少と環境変化が背景にある
・「予防原則」に基づく“餌付けさせない”対策が被害防止の第一歩
・地域の人材育成と国の連携支援が、今後の持続的な共生の鍵となる

クマ問題は単なる“野生動物のニュース”ではありません。人間の暮らし方や地域のあり方を見直すきっかけでもあります。自然を敵視するのではなく、“どう共に生きるか”を考える時代に入っているのです。里山を再び人の手で整え、クマが山で暮らせる環境を取り戻すことこそ、未来への最善の一歩なのかもしれません。


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