クマ被害が止まらない今、どう守る?人と自然の“境界線”を考える
「最近、クマのニュースを見ない日がない」と感じている方も多いのではないでしょうか。山の中だけでなく、住宅街や学校、さらには駅の近くにまで現れるクマ。全国各地で被害が相次ぎ、住民が不安を抱えています。そんななか放送される今回の『日曜討論』では、クマ被害の急増をテーマに、秋田県知事 鈴木健太、環境省 自然環境局長 堀上勝、森林総合研究所 動物生態遺伝チーム長 大西尚樹、NPO信州ツキノワグマ研究会代表 岸元良輔、兵庫県立大学 教授 横山真弓といった現場を知る専門家たちが集まりました。被害の原因から共存のあり方まで、現実的な解決策を探る緊急討論です。この記事では、番組のテーマや注目ポイントを放送前にわかりやすく整理し、放送後に議論の内容を追記する予定です。
【未来予測反省会】軽井沢ベアドッグ×AIクマ識別システム×キムンカムイの思想がつなぐ“人とクマの未来”
クマが人里に出る理由 ― 食糧難と温暖化が引き起こす“異変”
今、クマがこれほど人里に姿を見せるのはなぜなのでしょうか。最も大きな要因は「山の食糧不足」です。ブナやミズナラの実が例年に比べて不作となり、クマたちは生き延びるために山を下りざるを得なくなっています。
特に2025年は全国的に「凶作年」といわれ、東北地方ではドングリの実りが平年の3割以下という地域もあるそうです。餌を求めて住宅地に出たクマは、果樹園や畑の作物を荒らし、時には人間と遭遇してしまう危険な事態に発展しています。
森林総合研究所の大西尚樹氏は「近年の気温上昇が山の植物の開花時期を早め、結果として実の付き方にも影響している」と指摘しています。つまり、気候変動がクマの行動を大きく変えてしまっているのです。
秋田県が直面する“全国最多”の被害 ― 知事が語る現実
中でも深刻なのが秋田県です。2024年には県内でクマによる人身被害が過去最多を記録。農作物被害も拡大し、住民の生活に直結する問題になっています。
この現状を踏まえ、秋田県知事 鈴木健太氏は番組内で「クマの出没はもはや災害」と発言するのではないかと注目されています。県では、AIによるクマ出没予測システムを導入し、SNSや防災無線での情報共有を強化しています。
また、自治体ごとに設けられた「クマ出没対策本部」では、電気柵の設置補助や見回り隊の拡充、農家支援のためのドローン活用など、新しい取り組みが広がっています。
一方で「捕獲一辺倒では解決しない」という声もあり、クマの生態を理解しながら、人と動物が安全に共存できる仕組みづくりが求められています。
“共存”をキーワードに、地域の知恵と科学を結ぶ
番組に登場するNPO信州ツキノワグマ研究会代表 岸元良輔氏は、長年にわたりツキノワグマの生態調査と地域共存活動を続けてきた専門家です。
岸元氏によると、「クマが悪者ではない」という認識を地域に広げることが、長期的な対策には欠かせないとのこと。子どもたちへの環境教育や、登山者・農家向けの「クマ回避講習会」などを行い、人間側の行動を変える取り組みを進めています。
また、兵庫県立大学の横山真弓教授は、人と野生動物との心理的距離を研究しており、「“怖い存在”から“共に生きる隣人”へ」という発想の転換が必要だと強調します。横山氏の研究では、地域住民がクマについて学び、冷静に行動できるようになることで、被害件数が減少した地域もあるそうです。
環境省が描く“新しい野生動物管理”の方向性
国の立場からは、環境省 自然環境局長 堀上勝氏が出演します。これまでの「出たら捕まえる」方式から、「事前予測と地域主導の対応」へと転換するのが現在の国の方針です。
堀上氏が中心となって進めているのは、各自治体への専門職「鳥獣対策コーディネーター」の配置や、AIカメラ・センサーによる自動監視システムの普及。さらに、住民が自ら行動できるよう、環境教育の支援にも力を入れています。
討論では、地方自治体の財源不足や人手不足をどう支えるか、国の役割のあり方が問われるでしょう。
これからの“地域防災”に必要な視点
今回のテーマは単なる動物問題にとどまりません。クマ被害は、少子高齢化や過疎化が進む地域の「社会構造」の問題とも深くつながっています。
里山の管理を担っていた人々が減り、放置された森林が増えることで、クマが人の生活圏に近づきやすくなりました。つまり、地域の活力が失われることが、クマとの境界を曖昧にしているのです。
太田真嗣解説委員と上原光紀アナウンサーの進行のもと、番組では「共存のための地域づくり」という視点から、行政・研究者・住民の協働の形を探っていくはずです。
まとめ
この記事のポイントは次の通りです。
・クマ出没の背景には「餌不足」と「気候変動」がある
・秋田県ではAI予測やドローン活用など最新技術が導入されている
・専門家たちは「排除ではなく共存」の方向へ舵を切っている
・国は地域主導の体制づくりと、情報共有の仕組みを強化中
人間が自然に近づきすぎたのか、それとも自然が人間に助けを求めているのか。今回の討論は、そんな根源的な問いにもつながります。放送後には、出演者たちの具体的な意見やデータ、そして今後の政策の方向性を詳しく追記予定です。
【番組情報】
日曜討論「クマ被害多発 影響は 対策は」
放送日:2025年11月2日(日)9:00〜10:00
放送局:NHK総合
出演:秋田県知事 鈴木健太/環境省自然環境局長 堀上勝/森林総合研究所 大西尚樹/NPO信州ツキノワグマ研究会 岸元良輔/兵庫県立大学 横山真弓
司会:太田真嗣・上原光紀(NHK)
気になるNHKをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。


コメント