与野党に問う 参院選後の日本政治はどう変わる?
2025年7月27日放送のNHK「日曜討論」では、先日行われた参議院選挙の結果を受けて、これからの日本政治がどのように変わっていくのかをテーマに、各政党の代表者が議論を交わしました。出演したのは自民・立憲・維新・国民・公明・共産・れいわ・参政・日本保守の各党からの選挙対策の責任者たち。国民の関心が高まる中、与野党がそれぞれの立場から選挙結果をどう受け止めたのか、そしてその先にある日本の政治の姿について、それぞれの考えが明かされました。今回の討論では、政権与党としての責任、野党の対抗軸としての立ち位置、さらに新興政党としてのアプローチなど、多様な視点が交錯しました。
与党・自民党が直面する変化と反省
木原誠二選対委員長は、今回の選挙結果について「大勝ではないが、一定の信任は得た」と評価しました。ですが同時に、都市部や若年層からの支持が弱まっていることに対して危機感を示し、政権運営のあり方を見直す必要性も強く認識しているようです。
経済政策の課題と再構築
自民党の柱である経済対策については、現在の物価高や円安の影響により生活が圧迫されている実態に対し、即効性のある支援と中長期的な成長戦略の両立を目指すとしています。特に「減税だけに頼らない支援策」や、「民間の活力を活かした雇用創出」などを挙げ、単なる財政出動に頼らない構造的な見直しに取り組むと説明しました。
地方と若者層の支持回復に向けて
地方では一定の票を確保できたものの、都市部では支持離れが見られました。木原氏は、「地方創生を再構築するだけでなく、都市住民の声も丁寧に拾う必要がある」として、教育・住宅・雇用といった生活基盤を重視した政策の強化を打ち出しました。また、若年層への発信については、「SNSでの政策説明やインフルエンサーとの対話イベント」なども活用していくとしています。
立憲民主党が描く「生活者中心の政治」
大串博志選対委員長は、立憲民主党の戦いを「物価高や格差への怒りと不安を訴えた選挙だった」と総括しました。特に都市部の中間層や子育て世代の支持が強まったとし、今後もこの流れを拡大したいと語りました。
地方の声を政治の中心へ
地方医療や交通、公共インフラなど「国が手を入れなければ改善が難しい」領域への積極的な政策介入を約束しました。地域の自治体と連携し、現場の実態に即した制度改革を進めることが必要と強調しています。
他党との政策協議の可能性
また、今回の選挙では野党連携が一部進んだ地域もあり、今後は政策ごとの連携も視野に入れて調整を進めるとしています。政権交代の現実味を高めるためには、政策の共通項をもとに議論を深める姿勢が重要になるとしています。
日本維新の会は「改革のエンジン」に
岩谷良平選対本部長は、維新の成果を「大阪・関西圏にとどまらず、全国で存在感を示せた」と評価しました。その背景には、教育無償化や議員の身を切る改革といった分かりやすい政策が有権者に響いたことがあります。
教育・地方分権・公務員制度改革
教育の完全無償化や、自治体に財源と裁量を移す地方分権の強化、公務員制度の見直しなど、維新らしい「スリムで効率的な政治」を全国で展開したいという意欲を見せました。
全国的組織力の整備へ
一方で、候補者不足や地方組織の弱さは課題として認識されており、「地域ごとの文化や事情を理解する地元人材の育成」に力を入れる方針です。
国民民主党は「対話型政治」で中道を貫く
浅野哲委員長代行は、「現実的な中道政党」として、政策ごとに賛否を明確にしつつも、与野党の枠を超えた政策提案を行う姿勢を貫いていくとしました。
エネルギー政策と家計支援
再生可能エネルギーへの移行と原発再稼働の両立を掲げ、現実を見据えたエネルギーミックスを提案しています。さらにガソリン高騰など生活への影響が大きい問題については、「価格抑制のための補助金制度の継続や拡充」を具体的に進めていくとしています。
公明党は安定と調整の要に
三浦信祐選対委員長は、公明党が果たすべき役割を「市民の声を吸い上げ、国政に橋渡しすること」と説明しました。目立つよりも“支える力”として、政権運営の安定化に尽力する姿勢を再確認しました。
子育て支援の制度化へ
子ども1人あたりの出産一時金や保育費無償化の制度的拡充についても言及。「一時的な政策で終わらせないよう法制度化を進めることが重要」と話し、長期的視野に立った支援の必要性を強調しました。
新興勢力の多様な視点
参政党の政治参加の提案
梅村みずほ議員は、「知識と情報がないと政治に興味を持てない」として、教育から政治意識を育てることの大切さを強く訴えました。情報の透明性や学校教育の見直しなども提案しました。
れいわ新選組の社会的弱者支援
高井崇志幹事長は、れいわの基本姿勢を「困っている人のために動く政治」と表現し、障害者支援・生活保護・住宅政策の見直しなど、制度の隙間に取り残された人たちに寄り添う政策を重視していることを説明しました。
共産党は構造的格差の是正を主張
小池晃書記局長は、物価高と非正規労働問題を「政治が作った格差」と位置付け、税と社会保障の仕組みそのものを変える必要があると発言しました。また、防衛費増額には反対し、国民生活の充実を優先するべきだとしました。
日本保守党は文化と防衛の強化を重視
有本香事務総長は、「家庭・地域・国家という3つの単位を守ることが保守の役割」と述べ、歴史教育の充実、安全保障、食料自給率の改善など、国家基盤の再構築を提案しました。
多党化時代の政治のかたち
今回の番組では、与党と野党、さらに新しい政党も含めて、多様な立場が共存する今の政治のあり方が浮き彫りになりました。一つの党が全てをリードする時代ではなく、対話や協議を重ねて政策を作っていく必要性がますます高まっています。
政策の“中身”で選ばれる時代へ
有権者も「誰が言っているか」ではなく「何を言っているか」をより意識して投票するようになってきており、今後は議論の質と合意形成力が政党の評価軸になることが期待されます。
若年層への政治教育と“知る力”を育てる動き

ここからは、私からの提案です。番組内では、若年層の政治参加についても注目されました。特に新興政党の発言からは、単に「選挙に行こう」と呼びかけるだけではなく、政治そのものを理解するための“教育”や“情報の受け取り方”の重要性が指摘されました。これまで「政治は難しい」と感じていた若者に対し、どうしたら自分ごととして関心を持ってもらえるかが問われています。
学校現場での教材整備やカリキュラムの強化
参政党の梅村議員は、教育現場での政治教育が形式的に終わってしまうことに課題を感じており、「主権者教育」の中身をもっと具体的に、そして日常生活とつなげて教える工夫が必要だと語りました。教科書に書かれている制度や仕組みの説明だけでなく、実際の選挙や議員活動に触れる機会を増やすことで、政治が自分たちの生活にどう関係しているのかが見えやすくなるとしています。
情報リテラシーとSNS活用の差
また、情報を受け取る力の差についても議論がありました。多くの若者はSNSを通じて情報を得ており、そこでは偏った意見や極端な主張が目立つこともあります。政治の正しい情報や対立する意見を自分で見分け、考える力=「情報リテラシー」もまた、若年層には欠かせないスキルです。そのため、メディアリテラシー教育の必要性が、政策とともに各党の共通課題として浮かび上がりました。
入門書・教材の広がりと選択肢
さらに、政治への入口となる書籍や教材の普及も進んでいます。最近では、「10代から読める政治の教科書」や、選挙制度・議会の仕組みをやさしく解説した入門本、さらにはイラストや漫画で構成された親しみやすい教材が増えてきました。家庭や学校でこうした書籍を活用することで、子どもたちが自然に政治に触れられる環境が整ってきています。
書籍名 | 特徴 | 対象年齢 |
---|---|---|
若い有権者のための政治入門 | 国際比較も交えた本格的な構成 | 高校生〜 |
政治の絵本 新版 | ユーモアと図解で読みやすい | 高校生〜 |
政治のしくみがわかる本 | 制度や仕組みを丁寧に解説 | 中学生〜 |
このように、「わからない」から「わかる」「参加したい」へと変化していくための環境作りが、教育の現場と社会の両方で求められていることが、番組を通じて浮き彫りになりました。今後、若者が自然に政治と関わりを持てるような仕組みづくりが、一人ひとりの主権者意識を高めていくことにつながります。
コメント