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NHK【午後LIVE ニュースーン】悪石島ボゼ祭り2025―地震の夏に若者がつないだ伝統と祈り|ユネスコ無形文化遺産|2025年10月27日

鹿児島・悪石島に伝わる不思議な夏の神様『ボゼ祭り』とは?

夏の終わり、鹿児島県の離島・悪石島では、一年の中でも特別な日がやってきます。地震が相次いだ2025年の夏も、島の人々は静かに、しかし力強くその日を迎えました。それが『ボゼ祭り』。泥を塗り、面をかぶった神が現れるこの祭りには、「怖いのに、どこか温かい」――そんな独特の空気が流れます。
「どうして泥を塗るの?」「なぜ神様が仮面をかぶるの?」そう思った人も多いでしょう。この記事では、悪石島で長く受け継がれてきたボゼ祭りの意味や魅力、そして島の若者たちが守ろうとする思いを詳しく紹介します。

ボゼ祭りとは?島の神様が現れる特別な夜

鹿児島郡十島村・悪石島に伝わるボゼ祭りは、旧暦7月16日――お盆の締めくくりに行われる行事です。ボゼとは「来訪神」、つまり外の世界から島へ訪れる神のこと。ビロウの葉で体を覆い、真っ赤な顔に長い鼻の面をつけ、赤土を塗った棒「ボゼマラ」を手に現れます。
祭りが始まると、ボゼたちは「ボゼッ!」と叫びながら人々を追いかけ、顔や体に赤土をつけていきます。この土をつけられると、無病息災・子宝・縁結びなどのご利益があると信じられており、逃げながらも笑顔になる島民の姿が印象的です。

この行事は2015年に国の重要無形民俗文化財に指定、さらに2018年にはユネスコ無形文化遺産「来訪神:仮面・仮装の神々」のひとつとして登録されました。鹿児島からフェリーで約10時間――簡単には行けない島だからこそ、今も昔ながらの形で続いているのです。

地震の夏、それでも祭りを続けた島の人々

2025年の夏、悪石島は地震が相次ぎ、不安の声が上がりました。島民の多くが「今年は無理かもしれない」と一度は思ったといいます。しかし、若者たちは口をそろえてこう語りました。「こんな時だからこそ、ボゼを呼ばなきゃいけない」。
ボゼは島の穢れを払い、再生をもたらす神。地震の不安や疲れを抱える人々にとって、ボゼの登場は“恐れ”よりも“希望”の象徴でした。島の青年団が中心となって準備を進め、赤土を練り、仮面を整え、儀式の一つ一つを丁寧に行いました。

島の若者たちが受け継ぐ誇り

島の小中学校を卒業すると、多くの若者は進学や就職で島を離れます。それでも毎年夏になると、多くの人が帰ってきます。「ボゼに会うため」「自分の番を果たすため」。ボゼ役は厳粛なもの。体力と覚悟が必要で、選ばれた男たちは村の誇りを背負います。
若者の一人は番組の中でこう話していました。「小さいころはボゼが怖くて逃げてた。でも、今は自分がそのボゼになる。怖がられてもいい、島を守るために」。その言葉に、島全体が静かにうなずいていました。

儀式の流れと見どころ

祭りはお盆の最後の日、夕方から始まります。まず男たちが集まり、太鼓とともに踊りながら集落を練り歩きます。やがて夜になると、竹の松明が灯り、ボゼが姿を現します。真っ赤な顔、鼻の長い仮面、全身を覆うビロウの葉――その姿はまるで異世界の存在。
ボゼが「ボゼッ!」と叫ぶと、子どもたちは悲鳴を上げながらも笑顔で逃げ、女性たちは手を合わせます。祭りの終盤、ボゼたちは再び山の方へと去り、島には静けさが戻ります。その瞬間、夏の終わりとともに、悪石島の人々は新しい一年の始まりを感じるのです。

なぜ「ボゼ」は今も愛されるのか

ボゼ祭りは、単なる観光イベントではありません。悪石島では「ボゼが来ない年は不安になる」と言われるほど、島の生活と心に深く根づいています。地震や人口減少という現実の中でも、ボゼを迎えるという行為そのものが「自分たちはここに生きている」という証なのです。
また、外部から訪れる観光客にとっても、この祭りは「人と自然と神の距離」が近い特別な体験。仮面神に追われるスリルと、どこか懐かしい安心感――それがボゼ祭りの魅力です。

この記事のまとめ

・ボゼ祭りは鹿児島・悪石島に伝わる来訪神の祭りで、旧暦7月16日に開催される
・赤土をつける「ボゼ」には、無病息災・子宝・縁結びのご利益がある
・2015年に国の重要無形民俗文化財、2018年にユネスコ無形文化遺産に登録
・2025年は地震の影響の中でも、島の若者たちが伝統を守り抜いた
・ボゼは島民にとって“恐れ”と“希望”の象徴であり、命の再生を意味する存在

悪石島の『ボゼ祭り』は、単なる風習ではなく、島の人々の祈りそのものです。赤土に込められた願い、面の奥にある誇り――そのすべてが、この小さな島の大きな力となって続いています。

次回放送では、若者たちがどのようにボゼを受け継ぎ、未来へつなごうとしているのかが描かれる予定です。伝統と信仰、そして人の絆を感じたい方は、ぜひ『午後LIVE ニュースーン』(NHK総合・10月27日放送)をチェックしてみてください。


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