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Eテレ【サイエンスZERO】密着!絶海に浮かぶ奇跡の島 南大東島 “水中鍾乳洞”と“D-ARKプロジェクト”が解き明かすウフアガリアカサンゴスナギンチャクの謎|2025年11月16日

サイエンスZERO

南大東島の“奇跡の世界”をのぞいてみよう

南大東島って聞くと、どんな場所を思い浮かべますか?
「絶海の孤島」「謎に包まれた島」「人があまり入れない自然」……そんなイメージを持つ人も多いかもしれません。

じつは今、この島が科学の世界でとても注目されています。
昨年、地下で巨大な水中洞窟が見つかり、その中を調べたところ“驚きの発見”が続々と出てきたからです。

「まだ見ぬ生き物って本当にいるの?」
「どうして南大東島には特別な自然が残っているの?」
「水中洞窟が気候変動の手がかりになるってどういうこと?」

そんな疑問を持つ方に向けて、この記事では南大東島で明らかになってきた不思議と魅力を、小学生でも分かるようにやさしくまとめました。

この記事を読むと、
・南大東島がどんな島なのか
・どんな水中洞窟が見つかっているのか
・どんな生き物や地球のヒントが隠れているのか
が、ひと目で分かります。

科学の視点で見ると、この島が“奇跡の島”と呼ばれる理由がしっかり見えてきます。

【NHKスペシャル】南大東島・巨大水中洞窟の発見!“日本最後の秘境”を8K映像で世界初公開(2025年8月24日)

南大東島ってどんな島なのか?

南大東島は、沖縄本島から東へおよそ400km、周りを太平洋に囲まれた小さな島です。
ふつうの「離島」と違うところは、周りのほとんどが切り立った絶壁になっていること。まるで大きな岩がポンと海に浮かんでいるような姿をしています。

島全体は、長い年月をかけて隆起したサンゴ礁(石灰岩)でつくられており、地面の下には水がしみこみやすく、たくさんの穴やトンネルができます。

これが、南大東島に“洞窟が非常に多い”理由です。

調査では、
100~200におよぶ鍾乳洞がある
地底湖や地下水域が各所にのびている
と考えられています。

島の成り立ち自体がとても特殊なので、地質学的にも生物学的にも、研究者が「ここは宝庫だ」と感じるほどの環境が残されているのです。

巨大な水中鍾乳洞の発見が、研究を大きく動かした

昨年、この南大東島の地下で、これまで知られていなかった巨大な水中鍾乳洞が発見されました。

もともとは陸上にあった鍾乳洞が、
・海面の上昇
・島全体の沈降や隆起
・海水の侵入
など、さまざまな自然の変化によって“水中に沈んだ”と考えられています。

この洞窟を調査してみると──
・地底湖が20か所ほど
・水中から入れる洞窟が15か所ほど
・空気にふれていない、非常に美しい鍾乳石がそのまま残っている
など、驚くような光景がつぎつぎと確認されました。

なかには、結晶のようにひかる鍾乳石や、雪の結晶に似た造形をした石灰のかたまりもあり、これらは“空気にふれていないため、劣化がほとんどない”という、とてもめずらしい状態です。

このような水中鍾乳洞を本格的に調査できる場所は、日本でもほとんどありません。

調査や撮影は、洞窟内の水が少しの動きで濁ってしまうため、経験豊富なダイバーと研究チームが慎重に進めています。

南大東島だけで生きる生物たち──新種も続々

南大東島が“奇跡の島”と呼ばれる理由は、水中洞窟だけではありません。
ここには、世界のどこにもいない、南大東島だけの生物が住んでいるのです。

とくに注目されているのは──
ダイトウコオイエビ(洞窟地下水だけに住む甲殻類)
ウフアガリアカサンゴスナギンチャク(刺激で緑色に発光するとても珍しい生き物)
ホラアナヒスイヤセムツ(深海洞窟から見つかった新種の魚)

これらは、
・光がほとんど届かない
・海水と淡水がまじる特殊な環境
・他の島や海域とほとんど交流がない
という条件の中で進化してきたと考えられています。

つまり、南大東島は、太古の生き物が生き残っている“隠れ家(レフュジア)”のような場所だということです。

研究者たちがここに強い興味を持つのも、この「独自の進化」と「新種発見の可能性」が次々に現れているからです。

地球の気候変動を知るヒントが洞窟に残されている

南大東島の洞窟が注目されるのは、生物だけではありません。
じつは、地球の気候変動を調べるうえでも、とても重要な手がかりが眠っています。

たとえば、鍾乳石の中には、つくられた時代の水分が“しずくの形のまま閉じ込められている”ことがあります。
これらを調べると、
・昔の気温
・昔の雨量
・海水面の変化
・海水と淡水の混ざり方
などがわかることがあります。

さらに、最近では
・洞窟内の水の「化学的な組成」
・環境DNA(そこにいた生物の痕跡)
を分析し、太平洋の気候がどのように変わってきたのかを読み解く研究も進められています。

こうしたデータは、
「未来の気候がどう変わるのか」
「海水面の上昇がどのくらい起こるのか」
といった問題に迫るための、きわめて重要な材料となります。

南大東島の洞窟は、まさに“地球の歴史を記録した図書館”のような存在です。

調査プロジェクト「D-ARK」について

この南大東島を中心に進められている大規模な調査が、D-ARK(Deep-sea Archaic Refugia in Karst)です。

このプロジェクトには、
JAMSTEC(海洋研究開発機構)
琉球大学
をはじめ、さまざまな研究機関や企業の専門家が参加しています。

調査には、
・深海調査船
・無人探査機(ROV)
など最先端の技術が使われ、2024年から本格的な調査がスタートしました。

D-ARKのねらいは、
「太古の生き物が残っている、特殊な深海洞窟を見つけること」
「地球環境の変化を読み取るための“自然の記録”を手に入れること」
です。

南大東島と北大東島は、この研究にとって非常に重要なフィールドとなっています。

調査がむずかしい理由

南大東島はとても魅力的な研究の場所ですが、調査が簡単というわけではありません。

・洞窟が水深により深く、ダイビングが難しい
・洞窟内は一度濁ると透明度が戻るまで時間がかかる
・地形が複雑で、安全確保が大変
・生き物に影響をあたえないよう注意が必要

こうした理由から、調査には高度な技術と経験が必要です。
それでも研究が進められるのは、「ここにしかない自然」が残っているからです。

まとめ

この記事のポイントは次の通りです。

  1. 南大東島はサンゴ礁が隆起してできた特殊な島で、100以上の洞窟や地底湖がある。

  2. 巨大な水中鍾乳洞からは、美しい鍾乳石や珍しい造形が多数見つかっている。

  3. ダイトウコオイエビをはじめ、世界でもここにしかいない生き物が棲んでいる。

  4. 洞窟内の鍾乳石や水質には、地球の気候の変化を知るヒントが残っている。

  5. JAMSTECを中心にした「D-ARK」プロジェクトが、大規模な調査を進めている。

南大東島は、まだまだ“未知の世界”が残る特別な島です。
研究が進むたびに、これまで知られていなかった自然の姿が明らかになっていく……そんなワクワクする未来を感じさせてくれる場所でもあります。

※番組の内容と異なる場合があります。


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