“監視”の進化が止まらない!仕事も睡眠も学習も見守られる時代に
2025年5月10日(土)放送のNHK総合『所さん!事件ですよ』では、日常生活のさまざまな場面に広がる“監視”の最新事情を特集しました。職場での働きぶり、介護施設での睡眠や排泄、そして子どもたちの学習環境まで、驚くほど細やかで進化した“見守り”技術が次々と紹介され、テクノロジーが私たちの生活に深く入り込んでいる現実が浮き彫りになりました。
マウスムーバーで“サボり”を隠す?会社VS社員の攻防戦の実態
テレワークが当たり前となった今、多くの企業では従業員の働きぶりを確認するために、マウスの動きやパソコンの使用状況を監視する専用ソフトを導入しています。画面が操作されていないと「サボっている」と判断されることもあるため、社員たちの間では「マウスムーバー」と呼ばれる装置を使うケースが広がっています。これはマウスを自動で左右に動かす機械で、手を使わなくてもパソコンが操作中のように見せかけることができます。
こうした装置はオンラインショップなどでも購入でき、USBに挿すだけで簡単に作動するものや、マウスの下に回転板を置いて物理的に動かすタイプなど、さまざまなバリエーションがあります。これらの機器を使えば、席を離れていてもパソコンが作動中に見えるため、あたかも働いているように見せることが可能です。
・自動的にカーソルを動かすUSB機器
・パソコンがスリープ状態にならないようにする仮想操作ソフト
・動きの記録を継続的に作るプログラムの利用
一方で、こうした“サボり”の工夫が企業に知られるケースも少なくありません。アメリカでは、実際にマウスムーバーを使用していたことが発覚し、12人以上の社員が解雇されたという事例が紹介されました。これは単にサボっていたというだけでなく、業務時間中に勤務実態を偽っていたという点が重大な問題とされ、企業の信頼に関わる事態へと発展しました。
日本国内でも、東京・池袋にある旅行会社が具体例として紹介されました。この会社では、全社員のパソコンに監視ソフトがインストールされており、作業を始める際には「着席ボタン」をクリックすることが義務づけられています。ボタンを押すと、その後1時間に6枚のスクリーンショットが自動的に保存される仕組みです。この画像には、どのファイルを開き、どの画面を見ているかが明確に記録されるため、仕事の進捗や内容を上司や同僚が正確に把握することができます。
さらにこの会社では、すべての社員が他の社員の作業状況を自由に閲覧できるシステムを導入しています。つまり、「見られている」という意識が自然と働き、だらけることを抑止する仕組みが形成されているのです。
・「着席」後は強制的に作業記録を残すシステム
・デスクトップ画像は共有サーバー上に保存
・閲覧可能な環境で相互に“透明性”を保つ運用
こうした取り組みは、単なる監視にとどまらず、業務の透明性を高めることで社員同士の信頼感やチームワークを育てるという目的も含まれています。自己管理を促進し、働く意識を整えるための“仕掛け”として機能しているという一面も見逃せません。
このように、企業と社員の間で繰り広げられる“監視と工夫”の攻防戦は、今後ますます複雑化していくと考えられます。テクノロジーの進化が進むなかで、「働き方の自由」と「仕事の見える化」のバランスをどう取るかが、今後の課題となりそうです。
パソコンの操作内容を丸ごと録画!“最強の監視ソフト”の登場とその実態
近年、企業における情報管理の重要性がますます高まるなかで、パソコンの画面をすべて録画し、業務の全履歴を残すことができる監視ソフトが登場しています。これまでのようにスクリーンショットを一定時間ごとに撮影するのではなく、操作のすべてを“動画として”記録することが可能になった点が最大の特長です。
この録画型監視ソフトは、どの社員が、いつ、どんなファイルを開き、どんな入力をしたかまで一目で確認できるレベルの精密さを持っています。パソコンを開いた瞬間から閉じるまでのすべての行動が録画され、ログイン履歴やマウスの動き、キーボードの入力内容、閲覧ページやアプリの起動時間まで自動で記録されます。
・録画された動画は日時とユーザー名で自動整理
・複数のモニターにも対応し、画面の切り替えも記録
・録画データは一定期間保管され、検索機能で素早く確認可能
このソフトの目的は、ただ作業を見張ることではありません。重要な機密情報を取り扱う業務において、「誰が、どこで、何をしたのか」という証拠を明確に残すことにより、不正の抑止や情報漏洩の防止に役立てることが大きな狙いです。
たとえば、他の社員がログイン中の端末を覗き見たり、不審なUSB機器を接続したりした場合、AIが自動で検知して管理者に警告を出す機能も搭載されています。こうした仕組みにより、社内のセキュリティレベルは格段に高まるとされています。
・AIが異常動作を分析し、リアルタイムで警告
・管理者は特定の時間やユーザーの操作をピンポイントで再生可能
・ログの改ざんができない構造で証拠保全にも有効
この監視ソフトは、すでに1000社以上の上場企業に導入されており、今後もますます導入が進むと見られています。金融・通信・法務関連の企業をはじめ、社外秘のプロジェクトを扱う開発現場でも採用例が増えているとのことです。
こうしたシステムの導入によって、不正アクセスやデータの持ち出しなど、これまで目に見えなかったリスクを可視化できるようになったことは、企業にとって大きなメリットです。一方で、常に録画されているというプレッシャーから、クリエイティブな発想や自由な発言がしにくくなると感じる社員もいるという声もあるようです。
つまり、このような“最強の監視ソフト”は、セキュリティ対策として非常に有効である一方、働く人のストレスや監視されることへの抵抗感とも向き合っていく必要があるのです。企業は、監視の目的や範囲を明確にし、納得のいく運用ルールを定めることが、健全な導入には欠かせない要素となってきます。
睡眠中まで見守る!?介護施設でのセンサー導入事例の詳細
近年、介護の現場では人手不足や夜間業務の負担が大きな課題となっています。そうした中で導入が進んでいるのが、ベッドのマットレス下に設置された高感度センサーによる見守りシステムです。このセンサーは、入居者の体にかかる圧力を感知し、心拍や呼吸の状態をリアルタイムで測定できるようになっています。
この技術によって、入居者が熟睡しているのか、寝返りをうったのか、起き上がろうとしているのかといった身体の変化を、スタッフは手元の端末で瞬時に確認できます。状態に応じてあらかじめ設定されたアラートが作動し、必要なときにだけ巡回を行えるようになることで、無駄な訪室や入居者の眠りを妨げることがなくなります。
・心拍と呼吸の変化をセンサーが自動検出
・異変があるとスタッフの端末にアラート通知
・室内カメラと連動し、映像で状況確認が可能
このシステムの効果は非常に大きく、ある施設では従来105分かかっていた夜間巡回が、導入後はわずか10分で済むようになったという具体的な成果も紹介されました。スタッフの負担が減るだけでなく、入居者の安心感やプライバシーの確保にもつながっている点が重要です。
さらに、トイレにも排泄を感知するセンサーが設置されています。このシステムは、便座に座ったかどうかを感知するだけでなく、排泄の有無やその回数、さらには便の状態までデータとして記録します。こうした記録は認知症の方のように、自身の排泄状況を正確に伝えることが難しい入居者にとって、とても有効な情報となります。
・排泄の有無やタイミングを自動記録
・便の性状(硬さ・色など)も画像解析で管理
・データは医師との共有が可能で診察の精度が向上
実際に、医師が診察の際にこうした排泄データを参考にし、適切な投薬や検査の判断に活かしているという事例も取り上げられました。これまでは不明確だった症状の背景を、デジタル情報で“見える化”することが可能になったのです。
このように、介護施設でのセンサー導入は、スタッフの業務効率化だけでなく、入居者一人ひとりに合った質の高いケアを実現する大きな一歩となっています。見守りという名の“監視”が、人の手では届きにくい夜間の安全や健康管理を支える役割を果たしているのです。今後、このような仕組みは全国の介護施設でさらに広がっていくことが予想されます。
赤ちゃんの寝姿勢も検知!保育の現場にも広がる見守りの最前線
保育の現場でも、“監視”という言葉が“見守り”へと意味を変えながら新たな形で取り入れられています。特に注目されたのは、乳児のうつ伏せ寝を検知する天井設置型カメラシステムです。乳幼児がうつ伏せ状態で長時間眠ってしまうと、呼吸がしづらくなり、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが高まるといわれています。
このシステムは、赤ちゃんの体勢をAIが自動的に判別し、うつ伏せ寝の状態を検知するとすぐに保育士の端末に通知を送信します。すぐに対応できることで、命の危険を回避できる可能性が高まるという点が、非常に大きなメリットです。
・赤ちゃんの寝姿勢を自動認識
・うつ伏せになった場合は即時アラート
・通知は保育士のスマートフォンや端末へ
この技術はすでに一部の保育所で導入が進められており、複数人の赤ちゃんを同時に見守る必要がある保育士にとって、大きな助けになっているとされています。昼寝の時間などは職員の目が届きにくくなるため、こうしたシステムは安全管理の強力なサポートとなっています。
また、番組内では家庭での“見守り”の進化についても触れられました。たとえば、ペット用のスマート首輪を活用した見守りサービスが紹介され、特に猫を飼っている家庭で人気が高まっているようです。この首輪にはセンサーが内蔵されており、猫がいつ食事をしたか、いつ寝ていたか、どのくらい水を飲んだかといった日常の行動を記録することができます。
・首輪に内蔵されたセンサーで自動記録
・データはスマホのアプリで確認可能
・行動パターンの変化で体調不良も早期に察知
こうした家庭用の見守りツールは、大切な家族の一員であるペットの体調管理にも活かされており、“監視”の概念が“思いやりのある見守り”へと変わってきていることが伝えられました。
このように、テクノロジーの進化によって、見えなかった部分を可視化し、事故を未然に防ぐための手段が社会のさまざまな場面に広がっていることが明らかになりました。保育・家庭・ペットという身近な存在の安全を支える“見守りシステム”は、今後もますます重要な役割を果たしていくと考えられます。
勉強する姿を見守り合う!?子ども同士の“相互監視型”学習法の現実
番組の後半では、子どもたちが互いに学習を見守り合う“相互監視型”の学習アプリが紹介され、現代の教育現場における新たな取り組みが注目を集めました。取り上げられたのは、都内に住む小学生・隆之介くんが使っているオンライン自習室のシステムです。
この自習室では、スマートフォンをアームスタンドに設置し、フロントカメラを使って自分の姿を映します。アクセスすると画面は6分割され、本人を含めた6人の子どもたちがそれぞれ勉強に取り組む様子が同時に表示されます。音声は一切入らず、視覚情報だけで互いの存在を認識できる設計となっています。
・スマホを設置して自分の姿をカメラで映す
・同時に接続している他の5人の学習風景が映る
・音声なしで静かに集中できる学習環境を実現
この仕組みにより、「誰かに見られている」という程よい緊張感が集中力を維持する手助けとなり、子どもたちは自然と姿勢を正し、机に向かい続けることができるようになります。家庭での学習が続かない、すぐに気が散るといった悩みに対する新たな解決策として、注目が集まっているのです。
このシステムを開発・普及させた人物は、現在の中学受験が小学生の限界に近い学力や集中力を求める傾向にあることを指摘し、「監視というより、一緒にがんばっている仲間がいると感じられることが大切」と話していました。個人プレーになりがちな家庭学習を、オンラインでも“つながり”を意識できる環境に変える取り組みとして高い評価を受けています。
・勉強中の孤独感が軽減され、やる気が続く
・画面越しに集中している他の子どもの姿が刺激になる
・家庭学習に取り組む時間が自然と増える
実際に、隆之介くんが勉強する姿を見ていた8歳の弟も、自ら机に向かうようになったというエピソードが紹介されました。兄の姿を見て刺激を受けた弟が、言葉ではなく行動から学ぶという自然な学習意欲の連鎖が生まれたのです。
このように、“相互監視”という仕組みが、監視というよりも「見守り」「励まし」「共有」の要素として受け入れられていることが分かります。自分ひとりでは頑張れなくても、一緒に頑張っている誰かの存在が学びの力になる――それは、家庭学習の質を高める大きな鍵となり得ます。
今後はこのような学習法が、都市部だけでなく全国の家庭に広がっていく可能性もあり、デジタルを活用した教育支援の形がますます多様化していくことが期待されます。学校でも塾でもない、新しい“第三の学習空間”としてのオンライン自習室は、これからの時代に必要な学びのスタイルのひとつとして注目されています。
所さんやゲスト陣の反応から読み取れる“監視”の捉え方
番組では松丸亮吾さんが、「クリエイターはぼんやりしている時間にアイデアが出る」と、監視の合わない職種もあると語りました。また、女優のいとうまい子さんは、見守りシステムの導入によって母親のような高齢者がより安全に生活できることへの期待感を話し、所ジョージさんも「家族にとって大きな支えになる」とコメントしていました。
今回の『所さん!事件ですよ』では、“監視”がもたらす利便性とリスクの両面が描かれ、生活のあらゆる場面に深く関わるようになったテクノロジーとの付き合い方について、改めて考えさせられる内容となっていました。私たちが安心して暮らすための“見守り”なのか、それともプライバシーを脅かす“監視”なのか――その境界線をどう考えるかが、これからますます問われていきそうです。
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