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NHK【クローズアップ現代】なぜ日本?増え続ける中国人移住の理由と背景とは|2025年5月12日放送

クローズアップ現代

増える中国人の“日本移住” なぜ今、日本が選ばれるのか?

2025年5月12日放送のNHK「クローズアップ現代」では、中国人の“日本移住”の急増に注目し、その背景や現状、そして課題について詳しく取り上げられました。特に、中国国内で経済的に安定した生活をしていた人々が、言葉の壁を越えて日本に移住しているという現実に焦点が当てられました。番組では、実際の移住者の声や、移住を支援するビジネスの現場、さらには制度の課題など、幅広い視点から現状を紹介しています。

日本に移住する中国人が急増中

番組の冒頭では、中国人の在留者数が昨年ついに87万人を超え、過去最多となったことが紹介されました。新型コロナウイルスの影響で一時的に減少していたものの、ここ数年で大きく回復し、かつてない勢いで増加しているとのことです。注目すべきは、その内容が変化している点です。以前は留学生や技能実習生が中心でしたが、現在は中国国内で安定した職に就いていた中間層の家族層が多く、移住の質が変わってきています。

千葉県に暮らす王さん一家の例が紹介されました。王さんは中国の大手銀行で管理職を務めていた経験を持つエリートです。将来を見据えて、子どもたちにより良い教育環境を与えたいという思いから、家族で日本に移住しました。最初は日本語に対する不安もあったそうですが、子どもたちはすでに日本の学校に通い、言葉の壁も乗り越えているとのことです。

王さんが取得したのは、日本政府が発給する「経営・管理」ビザです。このビザは、日本で事業を行うことが前提となっており、以下のような条件をクリアする必要があります。

  • 500万円以上の資本金の用意

  • 日本国内に事務所を構えること

  • 実際に事業を運営すること

このビザでは、配偶者や子どもも一緒に来日することが可能です。王さんはこの制度を活用し、来日後にアクセサリー販売の事業を立ち上げました。その後も新たな事業を展開しており、現在では月に約200万円もの売上を出すまでに成長していると紹介されました。

このように、経済的にも安定している中国の中間層が、自らの意思で日本での暮らしを選び、家族ぐるみで移住してきているという現実が浮き彫りになりました。今後もこのような傾向は続くと見られており、日本社会としても柔軟な対応が求められています。

移住を支えるサポートビジネスの拡大

日本語が話せない状態でも日本への移住を実現できる背景には、専門的な支援を行う中国系の移住サポートビジネスの存在があります。番組では、大阪で実際に活動しているある中国系企業の取り組みが紹介されました。この会社は、会社設立や住宅の手配、さらに子どもの入学手続きまでをワンストップで請け負っており、費用はおよそ100万円とされています。対応は迅速で、この日は来日してわずか3日目という家族をサポートしていました。

このようなサポートは、初めての海外移住で不安の多い家族にとって非常に心強いものです。言語の壁や制度の違いに戸惑うことなく、専門家の手を借りながら生活の土台を整えることができる点が、多くの移住希望者に支持される理由となっています。

大阪の市街地には、すでに中国人経営の不動産会社や飲食店、生活雑貨店などが数多く立ち並んでおり、地域によっては「小さな中国社会」ができあがっているとも言われています。移住者にとっては、母語での対応が受けられたり、馴染みの食材や生活習慣を維持できる環境があることで、心理的なハードルも大きく下がります。

  • 中国語対応の不動産仲介サービス

  • 同郷の人々が運営する生活支援ネットワーク

  • 学校や行政との橋渡しを行うコーディネーターの存在

これらの支援体制が整っていることで、日本語が話せなくても移住が現実的な選択肢として広がっているのです。移住者の「最初の一歩」を丁寧にサポートするこれらのビジネスが、今の中国人移住増加の一因になっていることが、番組でも強調されていました。

「経営・管理」ビザをめぐる思わぬ問題も

番組の中盤では、「経営・管理」ビザの制度が本来の目的とは異なる形で利用されている可能性があるという、やや深刻な問題も取り上げられました。このビザは、本来、日本国内で実際に事業を行う外国人を対象にしており、起業や経営を通じて地域社会に貢献することが期待されています。しかし、近年では事業実態がないまま、ビザだけを取得しようとするケースが目立ち始めているというのです。

番組では、ある行政書士事務所の現場が紹介されました。そこには、「事業計画はないが、とにかく日本に住みたい」といった問い合わせが増えているとのことでした。これは明らかに制度の趣旨から外れており、受け入れ側にとっても大きな負担や不信感を生む可能性があります。

このような問い合わせが急増した背景として指摘されたのが、中国国内のSNSで拡散されている一部の動画の存在です。動画の中では、「500万円の資金さえ準備できれば、日本に簡単に移住できる」といった内容が堂々と紹介され、民泊事業の名目でビザを取得する方法が“裏技”のように広められているといいます。

  • 民泊施設を借りて事業申請だけを行う

  • 実態のない法人設立を装う

  • ビジネスの実績や運営計画が曖昧なまま申請する

こうした事例が続けば、本気で日本で事業を始めたいと考えている人たちにとっても、制度が不信の目で見られることになりかねません。阪南大学の専門家も、「制度の信頼性が崩れれば、日本全体の移民政策や国際的な評価にも影響を及ぼす」として、警鐘を鳴らしていました。

制度を守るためには、取り締まりや審査の厳格化だけでなく、正しい情報の発信と、誠実な支援体制の整備が不可欠です。今後、日本が外国人との共生社会を目指す上で、こうした問題をいかに防ぎ、正しい形で制度を運用していくかが重要な課題となるでしょう。

制度の運用とこれからの課題

番組の締めくくりでは、「経営・管理」ビザをはじめとする在留制度の今後について、制度の運用を担う専門家の視点が紹介されました。登場したのは、筑波大学教授で出入国管理に関する国の委員も務める明石純一氏です。明石氏は、「制度の乱用と思われても仕方のないケースが存在しているのは事実」としながらも、「だからといって厳罰化するだけでは問題の本質は解決しない」と指摘しました。

つまり、制度の裏をかくようなケースがあることは認識されている一方で、それに対して単純に罰則を強めるというアプローチでは限界があるということです。むしろ、なぜ制度が乱用されるのか、その背景を丁寧に見つめ直し、制度そのものをどう運用し直すかが求められているという考え方です。

現在の日本社会は、少子高齢化や人口減少、そして慢性的な労働力不足という大きな課題を抱えています。こうした中で、外国人の存在は単なる「補助的な労働力」ではなく、地域経済や社会全体の活力を支える重要な一員になりつつあります。だからこそ、移住者に対しては、ただ受け入れるだけでなく、生活・教育・労働環境を通じて“共に育つ”関係を築いていくことが必要だと番組は訴えていました。

  • 地域での多文化共生の支援体制

  • 言語・生活サポートの継続的な整備

  • 子育て・教育への適切な支援の充実

  • 事業者側の法的理解と責任の明確化

これらが今後の鍵を握るポイントとして挙げられます。つまり、制度を単なる「入口」として捉えるのではなく、移住者が長期的に安心して暮らし、地域に根ざすことができる仕組みをどう整えるかが、日本の移民政策の質を左右するのです。

これからの日本は、受け入れの量だけでなく、受け入れ方の質が問われる段階にきている。制度の柔軟な運用と、社会全体での理解と連携が強く求められています。

まとめ

今回の放送は、ただの移住トレンドではなく、日本と中国の社会背景、そして制度や支援の在り方まで考えさせられる内容でした。

今後、移住者の増加に対応するために必要なのは、制度の整備だけでなく、地域社会との信頼関係と理解の積み重ねではないでしょうか。

コメント

  1. 山根智子 より:

    今日の中国人の日本への移住についての番組を見て。
    私たちは足立区西新井でボランティアで外国人に日本語を教えています。
    そして今 ほとんどの方が中国人です。40名近く在籍で そしてどんどん増えている現状です。
    先生は現在17名位で、無料でボランティアで教えていますが、生徒は益々増えています。
    部屋は区の施設(ギャラクシティ―)の中の部屋を使っていますが、ぎゅうぎゅうの状態です。
    勿論ほとんどの方は 足立区に住んで、日本語学校に行っている、又はすでに働いている人です。もっともっと増えていくようにかんじます。

    • しげゆき より:

      コメントをありがとうございます。

      足立区西新井で、外国人の方々に無料で日本語を教える活動をボランティアで続けていらっしゃることに、深く敬意を表します。特に今、番組でも取り上げられたように、中国から日本へ移住される方が急増している現状において、地域でのこうした支援活動の重要性はますます高まっていると感じます。

      40名近くの在籍者に対して17名の先生が対応されているとのこと、しかも施設の限られた空間でぎゅうぎゅうとのお話からも、地域のニーズが本当に大きくなっていることが伝わってきました。

      日本語を学ぶことは、日常生活の基盤を築くうえで非常に重要であり、こうした活動があることで、多くの移住者が安心して地域に溶け込み、新しい一歩を踏み出せているのではないかと思います。

      これからも、増え続けるニーズに地域がどう応えていけるのか、行政や周囲の理解と支援の輪が広がっていくことを心から願っております。今後とも、素晴らしいご活動を応援しております。

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