就職氷河期世代の“報われなさ”と今後の支援策とは
2025年5月21日放送のNHK「あさイチ」では、1993年から2004年に卒業・就職活動を経験した「就職氷河期世代」を特集しました。この世代は、バブル崩壊後の急激な求人減少に直面し、就職難・非正規雇用・低賃金など、長期にわたって厳しい環境に置かれてきた人たちです。番組では、世代当事者の体験談をはじめ、雇用環境の歴史的背景や、政府による今後の支援策などが丁寧に紹介されました。
バブル崩壊直後の就職難から始まった不遇なキャリア
就職氷河期世代とは、1993年から2004年にかけて卒業した人たちで、ちょうどバブル経済の崩壊により、求人倍率が激減した時期にあたります。バブル期には81.3%あった就職率が、この時期には55.1%まで落ち込みました。番組では、1994年卒の池澤由香里さんが取り上げられました。大学で管理栄養士の資格を取得して卒業したにもかかわらず、すべての就職先に不採用。現在は介護福祉士として働いていますが、最初の就職に失敗し、その後も非正規として働き続けた結果、40歳でようやく正社員となり、現在の基本給は23万円のまま10年以上変わっていないといいます。
また、1995年に就職活動を行った青木さやかさんは、40社以上に応募しても面接まで進めたのはわずか2社だったとのこと。2001年卒業の壇蜜さんも、30社以上面接を受けても採用されず、やむなく料理の専門学校に通う選択をしました。このように、最初のスタートラインから困難が続き、その影響は今でも続いていることがよくわかります。
女性に特に多かった非正規雇用と転職の繰り返し
番組では、非正規雇用で働き続けている49歳のちなつばさん(仮名)にも密着取材。1995年に語学力を生かせる企業を目指して就職活動をしましたが、希望していた航空会社ではその年のCA採用が中止。唯一のチャンスだった別の企業も競争率が非常に高く、結局卒業から1年後、自動車販売会社の営業職として働き始めます。しかし、希望とは違う職種で結果が出せず2年で退職。その後、別会社で正社員になるも、セクハラ被害に遭い再び退職。2004年の製造業への派遣解禁以降は、派遣社員や契約社員として職を転々とする日々が続いています。
特に女性の場合、正社員のチャンスが限られたまま非正規として長く働かざるを得なかった実情が浮き彫りになりました。視聴者からも、「非正規から正社員になれない」「ずっと契約更新の不安が続く」といった体験談が数多く寄せられたそうです。
“自己責任”という言葉が染み込んだ世代
この世代がなぜここまで“報われない”と感じるのか。その背景には、社会全体に根付いていた“自己責任”という考え方があると番組は指摘しました。常見陽平さんは、「自己責任が刷り込まれた世代」と述べ、グローバル化と終身雇用制度の崩壊が重なり、若者同士が限られた就職先を奪い合う構図が生まれたと説明しました。
2000年代には「勝ち組・負け組」という言葉も流行し、「負けたのは努力が足りなかったからだ」という空気が強まりました。さらに2000年の労働白書では、離職理由の8割が「自発的」とされていたこともあり、企業側の責任は問われにくい時代だったと言えます。
壇蜜さんも、当時「自己責任」と言われたときに、反論する力が持てなかったと振り返り、より惨めに感じたと述べていました。多くの氷河期世代が、「他人のせいにしない美徳」を守ってきたからこそ、今も苦しみを抱えたまま働いているのです。
ハラスメントが常態化していた職場の現実
番組では、就職氷河期世代が職場で受けてきたハラスメントについても取り上げました。取材を受けた人の多くが、「就職難の時代に入った自分たちは、何をされても辞められない立場だった」と語っており、上司からの理不尽な扱いや暴言が日常だったといいます。
雨宮処凛さんは、当時の職場には「根性でついてこい」という精神論がまかり通っており、非正規の立場の弱さにつけこまれるケースが多かったと説明。問題が社会的に認知されるまで20~30年かかってしまったと述べていました。1999年の労働者派遣法改正によって非正規雇用が一気に増加し、2004年時点で31.4%だった非正規の割合は、2025年現在でも36.9%と減少していません。
バブル世代とゆとり世代の狭間で苦しむ中間層
「かのかさん」という女性は、医療系の企業に正社員として23年勤務してきた経験を持っています。彼女は、バブル世代の上司から「昔からのやり方に従え」と言われ続け、一方で若い世代からはワークライフバランスを重視されるなど、上下からのプレッシャーの板挟みになっていると話しました。
番組には、「上は24時間働けますか世代、下は定時退社を大切にする若者。中間管理職は残業と責任ばかりが増える」といった声が寄せられ、就職氷河期世代が最も損をしていると感じている人が多い現実が明らかになりました。
政府の支援策は今さら?冷めた声も
政府はこの世代に向け、家計支援や資産形成、住宅確保などを含めた新たな支援策の取りまとめを6月に予定しています。しかし、番組に登場した人々の反応は冷ややかでした。雨宮処凛さんも「10年早ければ現役世代として支援できたし、20年早ければ少子化に歯止めがかかったかもしれない」と語り、支援の遅れによる損失の大きさを指摘しました。
厚生労働省の試算では、就職氷河期世代の約40%が年金受給額10万円未満になる見込みであり、老後の生活に大きな不安が残る状況です。これから支援が本格化するとしても、時間がかかりすぎているというのが世代の実感です。
唐津・鳩川トンネルで作られる絶品サラミ
「いまオシ!LIVE」では、佐賀県唐津市の鳩川トンネルからの中継が行われました。このトンネルは、サラミや生ハムの熟成に最適な温度と湿度を保つ特別な場所で、ここで作られた白カビ熟成のサラミは、国内外のコンテストで高く評価されています。白カビがタンパク質や脂肪を分解し、旨味に変えてくれる独特の製法で、まろやかな味わいが特徴です。
新じゃがを使った煮込みハンバーグのレシピ
「みんな!ゴハンだよ」では、新じゃがいもを使った煮込みハンバーグが紹介されました。
壇蜜さんは「じゃがいものふんわりとろり感がしっかりと調和している」と試食時に感想を述べていました。
まとめ
番組全体を通じて、就職氷河期世代が抱える苦悩と、社会としての責任の重さが改めて浮き彫りになりました。今後、支援の手が本当に届くのか、引き続き注目が必要です。
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