親の愛がすれ違う瞬間――「教育虐待」を見つめる夜
「子どものために」と思ってしたことが、気づけば子どもを追い詰めていた――そんな経験をしたことはありませんか?
10月23日(木)放送の【おとなりさんはなやんでる。】では、『教育虐待 なぜ親はやりすぎる?』をテーマに、親がどのようにして“教育への熱意”を越えてしまうのか、その背景を丁寧に探ります。今回は2回シリーズの前編で、親の心理、社会の構造、そしてそこから抜け出すヒントを紹介します。
子どもの将来を思うほど、厳しくなってしまう
今回の番組では、カナリアさんが「勉強をしない息子につい厳しくしてしまう」と悩みを打ち明けます。
子どもの将来を心配し、つい「やらなきゃダメ」「今頑張らないと」と口にしてしまう。その気持ちは多くの親に共通するものです。けれど、子どものペースや気持ちを無視してしまうと、それが“教育虐待”につながってしまうこともあります。
教育虐待とは、親が教育を理由に、子どもの心や人格を傷つけてしまう行為のこと。叩いたり怒鳴ったりするだけでなく、日々の言葉や態度の中にも潜んでいます。たとえば「あなたのために言ってるのよ」という言葉も、子どもにとっては“責められている”と感じることがあります。
親の心に潜む「やりすぎ」の理由
親が教育に熱くなりすぎてしまう背景には、さまざまな要因があります。
ひとつは、自分自身の“叶えられなかった夢”を子どもに託してしまうことです。
「自分はこうなりたかった」「あのとき頑張っていれば」といった後悔の気持ちが、無意識のうちに“子どもに同じ思いをさせたくない”という形で現れます。
もうひとつは、社会全体に漂う「学歴と将来を結びつける空気」です。
中学受験や高校受験が“人生を左右する”という感覚が根強く、他の家庭と比べて焦りを感じる親も多い。
さらにSNSでは、誰かの子どもの成功体験が日常的に流れてきます。そうした情報が「うちの子も頑張らなきゃ」という無言のプレッシャーを生み、親を焦らせてしまうのです。
そして、現代社会の不安定さも大きく影響しています。AIやグローバル化の波の中で、「将来に備えるためには早くから教育を」と思い詰める親が増えています。こうした不安が、知らず知らずのうちに“コントロールしたい”“失敗させたくない”という強い気持ちへと変わっていきます。
データが示す「教育の名の下の暴力」
調査によると、中学受験経験者の約28%が「勉強を理由に親から暴力を受けたことがある」と答えています。
「つい叩いてしまった」「言いすぎてしまった」といったエピソードは、決して少なくありません。
これは、親が子どもを嫌いだからではなく、「この子の将来を守りたい」という強い思いが裏目に出てしまう結果です。
子どもの成績が思うように上がらないと、親は焦り、怒り、そして「なぜできないの」と追い詰めてしまいます。
その“もっと頑張らせたい”という気持ちが、子どもの心を傷つけてしまうのです。
「山登り」にたとえる親子の歩み
番組では、教育を“山登り”にたとえて説明しています。
親は子どもを山頂へ導こうと、一生懸命に装備を整えます。塾、教材、習い事――どれも「登るために必要」と思って背負わせます。
けれど、子どもには自分のペースがあり、息を整える時間も必要です。
それなのに「休んじゃダメ」「もっと速く」と言い続ければ、子どもは息切れして動けなくなってしまいます。
子どもが立ち止まったとき、親ができるのは「急がなくてもいいよ」と声をかけること。
山頂に着くことよりも、「どんな景色を見ながら登るか」が大切なのです。
教育とは、親が先に頂上に立って引っ張ることではなく、隣で歩調を合わせて登るもの。そう考えることで、親の気持ちにも少し余裕が生まれます。
「教育虐待」から抜け出すために
教育虐待を防ぐために大切なのは、親が「子どもの人生は子どものもの」と気づくことです。
子どもの将来を思うのは自然なことですが、最終的に選ぶのは本人。親がすべてを決めてしまうと、子どもは自分で考える力を失ってしまいます。
また、親自身が心の余裕を持つことも重要です。
仕事や家事、将来への不安の中で、完璧な親でいようとするのは難しいもの。
だからこそ、時には周囲の人に頼ったり、悩みを共有したりすることが必要です。
「子どものために」と思う前に、「自分を少し休ませる」ことも、立派な愛情の形です。
まとめ
この記事のポイントを整理します。
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教育虐待は“子どものため”という善意の裏側で起こる。
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親の不安や社会の競争意識が、無意識の“やりすぎ”を生む。
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教育は“山登り”のように、子どものペースに合わせて進むことが大切。
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親が自分を追い込みすぎないことが、子どもを守る第一歩になる。
次回の放送では、「教育虐待からの卒業」をテーマに、親がどのように考えを変え、行動を見直していったのかが紹介されます。
【放送情報】
番組名:おとなりさんはなやんでる。『教育虐待 なぜ親はやりすぎる?』
放送日時:2025年10月23日(木)20:00〜20:30
放送局:NHK Eテレ(教育)
出演:タカアンドトシ/千秋/ZAZY/武田信子/おとなりさん
【ソース】
NHK公式番組表:https://www.nhk.jp/p/otonari/
ABEMA TIMES:https://times.abema.tv/articles/-/10143363
TBS NEWS DIG:https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1918928
こそだてまっぷ:https://kosodatemap.gakken.jp/life/family/71505/
ダイヤモンド・オンライン:https://diamond.jp/articles/-/353121
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