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NHK【みみより!解説】増える廃校 企業が注目 自治体連携で生まれる“廃校テクノロジー革命”の現場とは?|2025年11月10日★

増える廃校を企業が支える新しい時代へ

少子高齢化が進む中で、地域から次々と姿を消していく小中学校。その数は全国で増え続けています。ですが、今その“廃校”に、新たな光が当たり始めています。企業が技術開発や製造拠点として再活用する動きが加速しているのです。
「古い校舎をどう活かせばいいのか」「地域に残されたこの場所を守りたい」――そんな思いから始まった事例が、全国で少しずつ形になっています。この記事では、なぜ今、廃校が注目されているのか、どのように企業が技術の現場として生まれ変わらせているのかをわかりやすく解説します。放送後には、番組で紹介される最新事例も追記予定です。

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なぜ今、廃校が注目されているのか

文部科学省によると、全国で廃校となった小中学校はすでに1万校を超えています。児童・生徒の減少、学校統合、人口流出――これらが重なり、かつて地域の象徴だった校舎が次々と使われなくなっています。

しかし、廃校をそのまま放置すれば、年間数百万円単位の維持管理費や老朽化リスクが自治体の負担となります。特に地方では、除雪費や防犯対策費などもかかり、「使わないのにコストがかかる施設」として問題視されてきました。

そんな中、「遊休資産を地域の財産として活かせないか」という発想から、企業・行政・地域住民の連携による再生の流れが生まれたのです。

企業側にとっても利点は多くあります。

  • 広い敷地と頑丈な建物がすでに整っている

  • 都市部に比べて土地・電力・冷却コストが安い

  • 地域との連携で補助金や税優遇が受けられる

こうした条件を背景に、「コストを抑えながら新たな技術拠点を確保できる」として、多くの企業が注目し始めています。結果として、地方経済の活性化と、企業の研究開発ニーズが一致する動きが全国で広がっています。

廃校再生がもたらす多様な可能性

これまで廃校の活用といえば、宿泊施設やカフェ、地域交流スペースといった「観光・地域型」の再利用が主流でした。
しかし最近では、社会や産業の変化に合わせて、より“技術的価値”を持つ再生が目立ちます。

代表的な分野をいくつか挙げると、

  • IT企業によるデータセンターやAI開発拠点

  • ドローン、ロボット、モビリティ関連の実験施設

  • 食品・発酵技術など地域資源を活かした製造工場

  • サテライトオフィスやスタートアップ支援施設

  • アート・デザイン系のクリエイティブ拠点

学校建築には、これらの用途に向く要素が多く備わっています。たとえば、体育館の高天井は大型ドローンやロボットの実験に最適。校庭は広い屋外スペースとして物流や自動運転のテストにも使える。理科室や家庭科室は、実験や試作にそのまま転用できるのです。

また、地方では地価が安く、電力供給や通信環境を整えやすい場所も多くあります。結果として、都市部では難しい大規模設備投資を、低コストで実現できる点も魅力です。

実際の企業活用事例

全国にはすでに、廃校を技術開発の現場として再生させた企業がいくつもあります。

山梨県身延町の旧中富中学校では、ドローン開発を手がけるサイトテック株式会社が研究拠点を設立。
校庭では実際に飛行テストを行い、体育館では天候を問わず安全な操縦練習が可能です。教室はオフィスや部品加工のスペースとして使われ、校舎全体が「空の技術の実験場」となりました。
改修費用は最小限に抑え、既存の設備を最大限活かすことで、廃校再生の好例とされています。

次に、東京都新宿区のハイレゾ株式会社。この企業は、石川県志賀町や香川県高松市など複数の廃校を活用し、分散型データセンターを設立しました。
校舎のコンクリート構造は断熱性・耐震性に優れ、地方ならではの安価な電力供給を活かすことができます。災害時にリスクを分散できるため、今後のITインフラ戦略としても注目されています。

さらに、兵庫県養父市の旧小学校では、食品メーカーが校舎を改装し、酢や清涼飲料を製造する工場を開設。地元産の米や果実を原料に、地域ブランド商品を開発しています。
この取り組みは、地元の雇用を守ると同時に、観光客向けの見学ツアーも開催され、教育と産業の新しい融合モデルとなりました。

成功のカギとなる“協働と持続性”

廃校活用を成功に導くためには、自治体とのパートナーシップが欠かせません。
多くの自治体では、廃校リストを公表して民間企業からの提案を受け付けています。また、再生事業には国や地方自治体の補助金・貸与制度が利用できるケースも増えています。

もう一つ重要なのは、地域社会との関係構築です。
単に建物を借りるだけではなく、地元住民の理解と参加を得ながら、長期的に持続できる事業として根づかせることが求められます。

たとえば、京都府宇治市では旧校舎を木工工場として再利用し、地域の観光客がものづくり体験を楽しめる拠点にしました。工場の経済活動と観光交流を両立させたことで、周辺商店の売上も伸び、地域全体に良い循環を生んでいます。

また、改修時には耐震や防災対策、バリアフリー化などの現代的ニーズに合わせた工事も重要です。これにより、かつての学校が再び“地域の安心の場所”として機能するようになります。

廃校再生がもたらす未来

廃校を新たな産業拠点として活用する動きは、単なるリノベーションではありません。それは、「地域の記憶を残しながら、新しい価値を生む」という挑戦です。

空き校舎はもはや“負の遺産”ではなく、次世代の技術と地域の未来をつなぐハブになりつつあります。
そこから生まれる製品や技術、雇用が、地域を再び活気づけていく。子どもたちがいなくなっても、学び舎は“学びと創造の場所”として姿を変えて生き続けるのです。

まとめ

この記事のポイントを整理すると、以下の3点に集約されます。

  1. 少子化による廃校の増加は全国的な課題だが、企業が技術拠点や製造施設として再利用する流れが強まっている。

  2. ドローン・データセンター・食品製造など、校舎の特性を活かした高度な産業利用が進んでいる。

  3. 自治体と地域の協働、そして持続性を重視することが成功の鍵となる。

放送予定の『みみより!解説 増える廃校 企業が注目』では、こうした最新動向をさらに深掘りする見込みです。放送後には、新たに紹介された企業や地域の取り組みを追記し、現場の声も含めて改訂予定です。

いま、かつての“学びの場”が、未来をつくる“開発の場”へと進化しようとしています。廃校は終わりではなく、新しいスタートの象徴になりつつあるのです。

 

参考・出典リンク

・文部科学省「廃校施設等活用状況実態調査」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/1296809_00003.htm

・財務省福岡財務支局「廃校の有効活用事例集」
https://lfb.mof.go.jp/fukuoka/chiiki/mext01.pdf

・大和ハウス工業 総合地所研究所「廃校を活用した地域再生の可能性」
https://www.daiwahouse.co.jp/tochikatsu/souken/business/column/clm53-17.html

・大和ハウス工業「ドローン実験場としての廃校活用事例」
https://www.daiwahouse.co.jp/tochikatsu/souken/business/column/clm53-18.html

・Media Foure「全国の廃校活用事例と企業の取り組み」
https://media-foure.jp/column/13342/

・日本教育再興連盟(shugakko.or.jp)「学校跡地の再生と地域の未来」
https://www.shugakko.or.jp/

・エネガエル「分散型データセンターに変わる廃校施設」
https://www.enegaeru.com/distributeddatacenter-abandonedschoolbuildings

・建設ニュース「ハイレゾ、廃校をデータセンターとして再生」
https://www.kensetsunews.com/web-kan/1138095

・京都府宇治市公式サイト「旧校舎を活用した地域産業の創出」
https://www.city.uji.kyoto.jp/uploaded/attachment/33611.pdf

・日本福祉大学「廃校を地域資源として生かす考え方」
https://www.jhsu.ac.jp/befriend/trivia/200/


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