高校生が守り続ける“海の学び場”の魅力
愛媛県大洲市にある長高水族館は、全国でも珍しい「高校生が運営する水族館」として注目されています。魚の飼育や水槽づくりだけでなく、生きものの研究や宇和海での採集活動まで行う姿は、多くの人を驚かせています。
『ひむバス!(42)愛媛・大洲市海の生きもの捕獲大作戦!高校水族館部をお手伝い(2026年5月14日)』でも取り上げられ注目されています 。
なぜ高校生たちの活動がここまで話題になるのか。そこには、地域の歴史を受け継ぐ思いと、海の生きものに本気で向き合う熱意がありました。
この記事でわかること
・長高水族館が全国的に注目される理由
・水族館部が行う飼育・研究・採集活動の実態
・宇和海や沖縄の生きもの展示の魅力
・カクレクマノミ研究や水槽総選挙が話題になった背景
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高校生が運営する全国でも珍しい「長高水族館」
愛媛県大洲市長浜にある長高水族館は、愛媛県立長浜高等学校の生徒たちが中心となって運営している、全国的にもとても珍しい高校内水族館です。
ふつう水族館と聞くと、専門の飼育員さんがいて、大きな建物があって、観光施設として運営されている姿を思い浮かべます。ところが長高水族館では、魚の世話、水槽の掃除、展示づくり、来館者への説明、イベントの企画まで、高校生たちが大きな役割を担っています。
一般公開は基本的に毎月第3土曜日で、現在は完全予約制で公開されています。場所は長浜高校内にあり、学校生活の中に本格的な水族館があるという点が大きな特徴です。
この水族館が注目される理由は、「高校生が魚を飼っているから珍しい」というだけではありません。
本当にすごいのは、部活動でありながら、地域の人や観光客が訪れる“開かれた水族館”として続いていることです。来館者に楽しんでもらうために展示を工夫し、解説を練習し、生きものの状態を見ながら水槽を整える。こうした積み重ねが、長高水族館をただの学校施設ではなく、地域に愛される水族館にしています。
展示されている生きものは、愛媛近海や沖縄などの海の生きものを中心に、約150種・2000点規模と紹介されています。学校内の水族館としてはかなり大きな内容で、初めて知った人が驚くのも自然です。
そして、ここには「高校生が本気で取り組むからこそ伝わる楽しさ」があります。
大人が完成させた施設を見るだけではなく、生徒たちが悩みながら、工夫しながら、少しずつ水族館を育てている。その成長の途中を見られることが、長高水族館ならではの魅力です。
プロ顔負けと話題の水族館部の活動内容
長浜高校の水族館部の活動は、大きく分けると「担当水槽のメンテナンス」と「班活動」です。水槽のメンテナンスでは、生きものの健康状態を見たり、水をきれいに保ったり、えさやりをしたりします。水槽はただ魚を入れておけばよいものではなく、水温、水質、えさの量、隠れ場所、照明など、いろいろな条件を見ながら管理する必要があります。
水族館部には、繁殖班、イベント班、研究班などの活動があります。
繁殖班は、クマノミなどの繁殖に取り組みます。魚を増やすには、卵を産ませる環境づくりや、稚魚を育てる細かい管理が必要です。小さな命を育てる活動なので、毎日の観察が欠かせません。
イベント班は、一般公開日に来館者が楽しめる企画を考えます。たとえば、生きもののショー、クイズ、展示の説明などです。水族館は「見る場所」であると同時に、「知る場所」でもあります。高校生が自分の言葉で説明することで、魚や海の生きものがぐっと身近に感じられます。
研究班は、クマノミやクラゲなどをテーマに研究を進め、コンテストなどでも成果を上げています。部活動でありながら、観察、実験、発表まで行っている点が、長高水族館を特別な存在にしています。
ここが“プロ顔負け”と言われる理由です。
ただ魚の名前を覚えて説明するだけではなく、「なぜこの魚はこういう動きをするのか」「どうすれば来館者に伝わりやすいか」「この水槽をもっと魅力的にするには何が必要か」と考えながら活動しているからです。
『ひむバス!(42)愛媛・大洲市海の生きもの捕獲大作戦!高校水族館部をお手伝い』で取り上げられたように、日々の飼育や解説だけでなく、展示をよくするために海へ出て生きものを探す姿にも、部員たちの本気度が表れています。
水族館部の活動は、学校の勉強とも深くつながっています。
生物の知識、環境への理解、来館者と話すコミュニケーション力、イベントを動かす企画力、研究を発表する力。こうした力が、部活動を通して自然に育っていきます。
つまり長高水族館は、魚を見る場所であると同時に、高校生たちが学びを社会に届ける場所でもあるのです。
宇和海や沖縄の生きものが集まる展示の魅力
長高水族館の展示の大きな魅力は、愛媛の海と外の海の両方を感じられることです。
愛媛県の西側に広がる宇和海は、魚の種類が豊かで、養殖や漁業も盛んな海です。黒潮の影響も受けやすく、さまざまな海の生きものが見られる場所として知られています。長高水族館では、こうした地元の海に関わる生きものを展示することで、来館者に「自分たちの近くの海にも、こんなに豊かな世界があるんだ」と気づかせてくれます。
一方で、沖縄などの海の生きものも展示されています。カクレクマノミのように色あざやかで人気のある魚は、子どもにも大人にもわかりやすく、水族館らしい楽しさを感じさせてくれます。
展示の幅が広いことで、来館者は次のような楽しみ方ができます。
・地元の海の生きものを知る
・南の海のカラフルな魚を見る
・クラゲやサンゴのような不思議な生きものに注目する
・タッチプールやイベントで体験する
・高校生の説明を聞いて、魚の見方を深める
水族館の展示は、ただ「珍しい魚を並べる」だけではありません。
大切なのは、どの生きものを、どんな水槽で、どんな説明と一緒に見せるかです。同じ魚でも、泳ぎ方に注目するのか、体の形に注目するのか、すみかに注目するのかで、見え方は変わります。
長高水族館では、高校生たちが来館者の反応を見ながら展示を工夫している点が魅力です。専門施設のように完成された展示とは少し違い、手作り感や成長していく感じがあります。
そこに、人を引きつける温かさがあります。
特にカクレクマノミ、ハリセンボン、クラゲ、サンゴのような生きものは、見た目のわかりやすさと不思議さが両方あります。かわいい、きれい、おもしろい、なぜこんな形なのか知りたい。そうした入口から、海の生態系や環境への関心につながっていきます。
長高水族館の展示は、観光として楽しめるだけでなく、「身近な海をもっと知ろう」と思わせてくれる内容になっているのです。
長浜の“水族館の町”を受け継ぐ高校生たち
長高水族館を理解するうえで欠かせないのが、長浜という町の歴史です。
大洲市長浜には、かつて地域のシンボルとなる水族館文化がありました。長高水族館は、そうした町の記憶や願いを受け継ぐ形で、1999年に高校内で始まったと紹介されています。2024年には25周年を迎えたという記録もあり、長く続いてきた活動であることがわかります。
ここで大事なのは、長高水族館が「高校の珍しい部活動」で終わっていないことです。
地域の人にとっては、かつての水族館文化を思い出させる場所であり、町に人を呼び込むきっかけでもあります。高校生にとっては、地域の期待を受けながら、自分たちの手で水族館を続ける経験になります。
つまり、長高水族館は地域の記憶を未来へつなぐ場所です。
地方の高校では、生徒数の減少や地域のにぎわいづくりが課題になることがあります。その中で、長浜高校は「水族館部」という強い特色を持つことで、学校の魅力を外へ発信してきました。これは、単なる観光資源ではなく、学校と地域が一緒に育ててきた取り組みだといえます。
高校生が水族館を運営することには、地域にとっても大きな意味があります。
まず、町に話題が生まれます。「長浜には高校生が運営する水族館がある」と聞くと、多くの人が興味を持ちます。次に、訪れる人が増えることで、地域の魅力を知ってもらうきっかけになります。さらに、地元の子どもたちにとっては、身近な先輩たちが活躍する姿を見ることが刺激になります。
このように、長高水族館は水槽の中だけで完結していません。
学校、海、町、観光、教育がつながっているからこそ、長く愛されているのです。
カクレクマノミ研究で全国レベルの注目を集めた理由
長浜高校水族館部が全国的に知られるようになった大きな理由のひとつが、カクレクマノミとイソギンチャクの研究です。
カクレクマノミは、イソギンチャクの中で暮らす魚として有名です。イソギンチャクには毒針のようなしくみがあり、近づいた小さな生きものを刺すことがあります。それなのに、なぜカクレクマノミは刺されずに一緒に暮らせるのか。この素朴な疑問が研究の出発点になりました。
この研究は、国際的な科学コンテストで評価されたこともあり、長浜高校水族館部の名前を広く知らしめるきっかけになりました。さらに、その考え方を応用したクラゲよけの研究や商品化にもつながったとされています。
この話がすごいのは、「魚が好きな高校生の自由研究」で終わらなかったところです。
身近な疑問を深く調べ、実験し、結果をまとめ、社会に役立つ形へ広がっていった。これは研究の理想的な流れです。
水族館部の研究から見えてくる大事なポイントは、次の3つです。
・小さな疑問が大きな研究につながる
・水槽での観察が科学的な発見の入口になる
・高校生の研究でも社会に役立つ可能性がある
特にクラゲよけへの応用は、海で遊ぶ人にとっても身近なテーマです。クラゲに刺される不安を減らすことは、海水浴やマリンスポーツを楽しむ人にとって役立ちます。
また、「クラゲを悪者にして駆除する」のではなく、「人間が工夫して共存する」という考え方も大切です。海の生きものは、人間の都合だけで存在しているわけではありません。クラゲにも海の中での役割があります。
だからこそ、長浜高校水族館部の研究は、単に便利なものを作る話ではなく、海の生きものとどう向き合うかを考えるきっかけにもなります。
この研究活動があることで、長高水族館は「かわいい魚が見られる場所」から一歩進んで、「海の不思議を考える場所」になっています。
水槽総選挙と宇和海での捕獲大作戦に密着
長高水族館の魅力をさらにわかりやすく伝えているのが、水槽総選挙のような企画です。
水槽総選挙は、来館者に人気の水槽を選んでもらうイベントです。これが面白いのは、単なる人気投票ではなく、部員たちにとって展示を見直す大きなヒントになるところです。
人気が高い水槽には理由があります。魚が見やすい、動きが楽しい、色がきれい、説明がわかりやすい、写真を撮りたくなる。反対に、人気が伸びない水槽にも理由があります。生きものが隠れて見えにくい、動きが少ない、魅力が伝わりにくい、説明が足りないなどです。
番組内容では、クラゲとサンゴの水槽が低迷していることが紹介されています。
クラゲやサンゴは、本来とても魅力的な生きものです。クラゲはふわふわと漂う姿が美しく、サンゴは海の中で多くの生きものを支える大切な存在です。ただし、魚のようにわかりやすく泳ぎ回るわけではありません。そのため、展示の見せ方がとても重要になります。
たとえばクラゲなら、光の当て方、水流、背景の色、説明文の内容で印象が大きく変わります。サンゴなら、サンゴそのものの美しさだけでなく、サンゴ礁が小さな生きもののすみかになっていることを伝えると、見方が深まります。
そこで部員たちは、水槽をもっと魅力的にするために、宇和海で生きものの捕獲大作戦に挑みます。
ここに長高水族館らしさがあります。
展示が不人気だったから終わりではありません。「なぜ人気が伸びないのか」「どうすれば見てもらえるのか」「どんな生きものを加えれば水槽が生き生きするのか」と考え、実際に海へ出て行動する。この流れは、まさに高校生たちの学びそのものです。
水族館づくりは、見た目をきれいにするだけではありません。
生きものにとって無理のない環境を整えること、来館者が楽しめること、地域の海の魅力を伝えること。この3つを同時に考える必要があります。
だからこそ、水槽総選挙は単なるイベントではなく、部員たちが来館者の目線を知るための大切な機会です。
長高水族館が多くの人に愛される理由は、完成された水族館だからではありません。高校生たちが悩み、工夫し、地域の海と向き合いながら、少しずつ良い水族館にしていく姿が見えるからです。
その姿には、プロの水族館とは違う魅力があります。
生きものを大切にする気持ち、来館者に楽しんでほしいという思い、地域の海を知ってほしいという願い。長高水族館は、そのすべてが水槽のひとつひとつに表れている、全国でも特別な高校生の水族館です。
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