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NHK【クローズアップ現代】外国人労働者“争奪戦”の実態|人手不足に挑む自治体の本気策とは|2025年6月17日放送

クローズアップ現代

「わが町に来てほしい!」過熱する外国人労働者“争奪戦”

少子高齢化と人口減少が進む日本では、深刻な人手不足が続いています。特に地方ではその傾向が強まり、建設業や介護、農業、飲食などの分野で外国人労働者の受け入れが欠かせない状況となっています。今回の「クローズアップ現代」では、そうした背景の中で各地の自治体が繰り広げる“外国人労働者争奪戦”に焦点が当てられます。番組では、受け入れに積極的な自治体の取り組みだけでなく、住民の間に起きている意見の分断、そして共生の形をどう築いていくかについても考えていきます。

地方自治体間で激しさを増す「人材獲得競争」

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日本の各地域では、人手不足を補うために外国人労働者の確保が急務となっています。とくに若い労働力が不足している地方自治体では、独自の施策を打ち出し、海外とのつながりを深める動きが広がっています。

2024年の時点で、少なくとも87件のMOU(協定)が海外の自治体や大学と結ばれており、これは前年よりも増加傾向にあります。たとえば、

  • 横浜市では19件

  • 茨城県では10件

と、首都圏や農業・工業の盛んな地域を中心に協定締結が進んでいます。

これらのMOUには、日本語教育を提供する内容や、技能実習・特定技能での受け入れ枠の確保、現地でのセミナー開催などが含まれています。また、自治体の担当者が現地に出向いて説明会を開き、直接人材と顔を合わせる取り組みも行われています。

  • ハノイ工科大学との連携

  • インドネシアやフィリピンの自治体との協定

  • 大学・日本語学校と共同でのジョブフェア開催

など、地域の特性に合わせて対象国や分野が選ばれています。

こうした取り組みは、他のアジア諸国、特に韓国との競争にもつながっています。韓国では国家主導で同様の制度を拡充しており、日本の地方自治体と人材獲得を巡って“国境を越えた競争”となっています。

自治体によっては、協定のほかに現地でのインターン制度の導入や、卒業後に地域で働ける制度を整えているところもあります。こうした流れの中で、自治体同士がより条件のよい制度や支援を用意する動きが広がっており、人材をめぐる競争が激化していることが分かります。

公営日本語学校や文化指導など、独自の受け入れ支援

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各地の自治体では、外国人が安心して暮らし、働けるようにするための独自の支援策が次々と導入されています。とくに注目されているのが、公営の日本語教育や生活文化の学習、交流拠点の整備などです。

宮城県大崎市では、公設の日本語学校が2025年4月に開校しました。ここでは、日本語を学ぶだけでなく、履歴書の書き方や職場での会話、地域のルールやマナーも教えられており、就労と生活の両面から外国人を支える拠点となっています。教室の運営は市が行い、学習内容も実生活に即したものが中心で、多国籍の学習者が集まっています。

岐阜県可児市では「ばら教室KANI」と呼ばれる授業が開かれています。ここでは標準語だけでなく、地域で使われている方言や生活習慣についても教える時間が設けられています。たとえば、

  • ゴミ出しの曜日と分別ルール

  • 地域特有のあいさつや表現

  • 地元行事への参加方法

など、言葉の壁だけでなく文化の壁を越える支援が重視されています。子どもやその親も一緒に学ぶことで、家族ぐるみで地域に溶け込める工夫がされています。

茨城県では、スマートフォンでも学べるeラーニングの仕組みを導入しています。英語・ベトナム語・中国語など4言語に対応し、24時間いつでもアクセスできるため、仕事で忙しい人でも自分のペースで学習できます。また、企業が進捗を確認できる管理機能もついており、教育と雇用の連携が取りやすくなっています。

新潟県長岡市では、国際交流センター「地球広場」が市の中心部に設置され、日本語講座だけでなく、地域のボランティアと外国人が気軽に交流できるイベントも開催されています。ここでは、

  • 日本文化体験(折り紙・料理など)

  • 生活相談会(税金、保険、子育てなど)

  • 外国語での防災訓練

などが行われ、外国人が「孤立しない仕組み」づくりが進められています。

これらの取り組みはすべて、外国人が一方的に支援を受けるのではなく、地域とつながり、共に暮らしていく関係を築くことを目指したものです。自治体ごとの知恵や工夫が活かされており、他の地域へのモデルにもなりつつあります。

支援策に対する住民の声と葛藤

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外国人労働者の受け入れをめぐる自治体の取り組みが進む中で、地域住民のあいだには複雑な感情や不安の声も広がっています。とくに多く聞かれるのは、「自分たちの税金がどう使われているのか」という疑問や懸念です。

「なぜ税金が外国人のために使われるのか」という意見は、公設の日本語学校の開設や多言語対応の生活支援、文化講座の開催など、公費が投入されている事業全般に対して向けられています。住民の中には、こうした事業よりもまず高齢者福祉や子育て支援を優先すべきだと感じている人も少なくありません。

  • 「地元の保育所はいっぱいなのに、なぜ外国人のための教室を先に作るのか」

  • 「介護や医療の支援が不足している中で、外国人にお金をかけるのはおかしい」

といった声が、市民アンケートや自治体への意見提出で数多く寄せられています。

さらに、納税や保険料の支払い状況に関する指摘もあります。永住資格を持っている外国人のなかには、経済的事情から税金や保険料の支払いが滞っているケースもありますが、そうした人にも等しく支援が届くことに対し、

  • 「納税の義務を果たしていない人まで支援するのは不公平」

  • 「制度の対象は見直して、厳しく線引きすべき」

といった意見が出されています。こうした声は特に、現役世代や納税者層から強く上がっている傾向があります。

また、支援策の進め方について「説明が足りない」「住民との対話がないまま進んでいる」といった批判もあります。そのため、自治体のなかには、支援内容や財源の説明会を開いたり、広報紙で具体的な使い道を紹介したりするなど、住民の理解を得るための工夫を始めたところもあります。

外国人支援策が地域に根付くためには、住民の不安や疑問に丁寧に向き合い、透明性を持って情報を発信することが不可欠です。共に暮らす社会を目指すなら、外国人と日本人の間だけでなく、行政と地域住民の間でも、信頼と理解を積み重ねていくことが求められています。

「共に生きる」社会をどう作るか

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少子高齢化と人口減少が進む中で、外国人労働者の存在は日本社会にとってますます欠かせないものになっています。国も「育成型技能実習制度」や「特定技能制度」の見直しを進め、より長期的かつ安定した在留を前提とした仕組みに移行しつつあります。しかし、それだけでは本当の意味での共生社会にはつながりません

制度の枠組みに加えて、外国人が「地域の一員」として生活していくための実際の受け皿づくりが不可欠です。そのために必要なのが、地域ぐるみでの取り組みです。

たとえば、

  • 地域の自治会や子ども会への参加の促進

  • 防災訓練での外国人向け案内の実施

  • やさしい日本語や母語による生活ガイドの整備

  • 文化交流イベントや地域清掃などでの共同行動の機会づくり

こうした日常のなかの参加を通じて、外国人と日本人が顔を合わせ、話をし、助け合う関係が生まれていきます。

また、地方自治体だけでなく、企業やNPOの役割も非常に重要です。企業では、社内での言語支援や、地域との橋渡しを担う担当者の配置が進められています。NPOは、行政が対応しきれない分野で、生活相談や教育支援を提供し、外国人の孤立を防ぐ働きをしています。

地域社会に必要なのは、支援を一方向に「与える」という発想ではなく、互いに理解し、共に育つという姿勢です。言葉や文化が違っても、同じ地域で暮らす仲間として認め合うことが、共生社会の土台になります。

そして何より、こうした取り組みは「特別なこと」ではなく、地域の日常の中で自然に行われるようにしていくことが大切です。小さな交流の場や支え合いが積み重なることで、誰にとっても暮らしやすい社会がつくられていきます。これからの日本には、制度と心の両面での受け入れの仕組みづくりが求められています

課題とこれからの展望

現在、多くの自治体が「受け入れ」から「定着」へと政策の軸を移しつつあります。教育体制の持続性、生活インフラの整合性、偏見や差別への対策など、解決すべき課題は多くあります。とはいえ、外国人と地域住民が互いを知り、支え合いながら暮らすことができる社会を実現するには、こうした一歩一歩の取り組みが欠かせません。

番組では、こうした現場の最前線を取材し、国、自治体、そして私たち一人ひとりがどう向き合っていくべきかを深く掘り下げる予定です。

放送後、詳しい内容が分かり次第、最新の情報を更新します。

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