午後LIVEニュースーン「金の高騰で広がるガーナの違法採掘」
2025年9月10日、NHK総合「午後LIVEニュースーン」午後4時台は、日常の身近な話題から国際問題まで、多彩なニュースが詰め込まれた1時間となりました。動物園の熱中症対策やアートを通じた社会参画、原発周辺自治体の財政支援拡大に加え、番組の中心となったのは「金の高騰とガーナの違法採掘」の問題です。私たちの食卓や暮らしに直結するテーマも多く、視聴者に深い気づきを与える内容でした。ここでは、それぞれのコーナーをさらに詳しく振り返ります。
厳しい暑さと戦う動物たち
中継で紹介されたのは、東京都江戸川区にある江戸川区自然動物園。猛暑が続く中、動物たちの健康を守るためにどんな工夫がされているのかが取り上げられました。園内には扇風機やミストシャワーが設置され、空気を冷やしながら水分を与える仕組みを整備。特にオタリアと呼ばれるアシカの仲間には、プールの水温を24℃から26℃に維持するなどの徹底管理が行われています。さらに、氷でできた「おもちゃ」を与えることで、遊びながら体温を下げられる工夫も。こうした取り組みは、人間社会における熱中症対策と重なり、動物たちの命を守る真剣な努力が伝わってきました。
障害のある人の表現を社会へ「アトリエにっと」
東京都江東区に新しくオープンした就労支援施設「アトリエにっと」は、障害のある人のアートを社会と結びつける新たな挑戦をしています。利用者が描いた作品をデジタル化し、複製画をオフィスや飲食店に貸し出す「アートのサブスク」を展開。3か月ごとに作品が入れ替わり、そのたびに作者に収入が還元される仕組みです。
番組では、25歳の男性アーティストが取り上げられました。幼少期の食中毒で高次脳機能障害と重いてんかんを抱えていますが、18歳の頃から絵を描き始め、発作の前に見える視覚のゆがみや感情を作品に込めています。主治医によれば、脳の障害によって独特の視覚が生まれ、それがアートの表現力につながっているとのこと。こうした活動が、障害を持つ人々の「生きがい」と「収入源」を両立させるだけでなく、社会に多様な価値観を届ける手段にもなっています。
原発周辺自治体への支援拡大
続いて紹介されたのは、原子力発電所周辺の自治体への支援制度の見直しです。これまで避難路や避難所の整備費用は原発から半径10km以内の自治体のみが対象でしたが、今回30km圏内まで拡大されることになりました。その結果、対象自治体は14道府県76市町村から22道府県150市町村へと大幅に増加。東日本大震災以降、避難計画は30km圏内が義務化されていたものの、費用負担は自治体任せとなっていたため、長年の要望にようやく国が応えた形です。
特に避難路整備の国負担率は従来の50%から86.5%へと引き上げられ、インフラ整備が加速することが期待されます。ただし、国民の税金を財源とする以上、どの整備を優先すべきかの精査も不可欠です。再稼働している原発が14基ある現在、安全を確保するためにどれだけ迅速に設備を整備できるかが課題とされています。
金の高騰で深刻化するガーナの違法採掘
番組の中心となったテーマが、世界的に注目される金価格の高騰と、それに伴うガーナでの違法採掘問題です。過去10年で金の価格は約3倍に跳ね上がり、0.6グラムでおよそ1万円弱にもなる価値を持つようになっています。その結果、ガーナではカカオ農園が違法な採掘場に変わり、すでに4万ヘクタールもの土地が失われました。小規模採掘の約4割が違法とされており、国の産業構造そのものが揺らいでいます。
さらに、この影響は日本の食卓にも及んでいます。日本のカカオ輸入の75%をガーナに依存しており、カカオ生産が4年で半減。結果として国内のチョコレート価格はこの1年で51%も上昇しました。ガーナのカカオ農家は、自ら作ったカカオで作られたチョコレートを食べたことがないという現実も紹介され、視聴者に強い衝撃を与えました。
環境への影響も深刻です。採掘の過程で水銀が使われるため、川の水質は大きく悪化。ガーナ水資源委員会は淡水資源の60%が汚染されており、2030年には水の輸入国になりかねないと警告しています。現地取材では、村人が「かつては透き通る川だったが、違法採掘で汚れてしまった」と語る様子が放送され、問題の切実さが伝わりました。
千葉県館山市の秋祭り「ごんじゅう」
地域中継では、千葉県館山市の鶴谷八幡宮秋祭りから「ごんじゅう」と呼ばれる郷土料理を紹介。これは豚肉と油揚げを具材にしたおにぎりで、地元の人たちにとっては祭りの定番。伊藤アナも知らなかった地域ならではの食文化に触れることで、番組は全国各地の暮らしの豊かさを伝えました。
森と海をつなぐ活動を続けた畠山重篤さん
蔵出しセレクションでは、今年81歳で亡くなったカキ養殖家の畠山重篤さんの生涯を特集。「森は海の恋人」というキャッチフレーズを掲げ、森の植樹とカキ養殖を結びつけた先駆的な活動が紹介されました。フランスで見た「森と海の共生」に衝撃を受け、自ら室根山で植樹を開始。わずか数年で水質が改善し、赤潮が消えたことは科学的にも証明されています。震災後も仲間とともに植樹を続け、累計5万本の木を植えました。その歩みは、自然と人間の関わりを改めて考えさせるものでした。
まとめ
この日の「午後LIVEニュースーン」は、暮らしの中に潜む小さな工夫から、国際的に広がる社会問題までを一度に知ることができる濃い内容でした。特にガーナの違法採掘問題は、環境破壊や食文化、そして日本の消費者の生活にまで影響しており、遠い国の出来事では済まされません。また、動物園やアトリエにっとの取り組みは、命や多様性を守る社会づくりのヒントとなりました。次回は「きんさんぎんさん」が取り上げられるとのことで、また新しい発見がありそうです。
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