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NHK【病院ラジオ(20)心の医療センター編】さいがた医療センターの治療プログラムとは?依存症と心の病に向き合う現場|2025年9月15日放送

病院ラジオ

心の声をラジオにのせて――NHK「病院ラジオ」心の医療センター編

「病気のことをもっと理解してほしい」「気持ちを誰かに聞いてほしい」――そんな思いを抱えながらも、なかなか言葉にできない方は多いのではないでしょうか。今回のNHK「病院ラジオ」は、新潟県のさいがた医療センターを舞台に、心の病と向き合う患者さんやご家族の声を届けました。サンドウィッチマンが笑いと共感を交えながら耳を傾け、普段は隠されがちな心の葛藤や支え合いの物語が明かされました。この記事では放送内容をすべて振り返りながら、「心の医療」に触れることの意味を考えていきます。

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双極性障害と向き合うナナコさん

最初に登場したのは、双極性障害の治療で通っているナナコさんでした。双極性障害は、気分がとても高ぶる躁状態と、深く落ち込んでしまううつ状態を繰り返す病気です。ナナコさんの場合は、中学生の頃からその兆しがあり、気分の波に振り回される日々を送ってきたといいます。

大人になってからは公務員として働いていましたが、病気の症状が強く出ると生活のリズムを整えることが難しくなり、仕事を続けられなくなってしまいました。安定した生活を送るために入院を経験し、治療や支援を受けながら少しずつ自分のペースを取り戻していったそうです。

今では以前に比べて、落ち着いた気持ちで過ごせるようになったと語るナナコさん。ラジオを聴いているお母さんに向けて「生まれ変わっても同じ両親、同じ家族の元に生まれたい」と伝えました。その言葉には、家族への深い感謝と愛情が込められており、スタジオ全体が温かい空気に包まれました。

ナナコさんが選んだリクエスト曲は、傘村トータ「それでも生きてていいですか」。自分の気持ちを重ねるように流れたこの曲は、多くの人の心にも静かに響いていました。

回復を支えた筋トレと家族の言葉

続いて紹介されたのは、患者さんやご家族からのメッセージでした。その一つひとつには、つらい体験と共に前へ進もうとする力強さが込められていました。

ある方は「2020年のコロナ禍で不眠が続き、7日間一睡もできず即入院となった」と語りました。しかし病院のプログラムのひとつである筋トレ“サイザップ”に出会ったことで状況が大きく変わります。体を動かすことで気持ちも前向きになり、今ではジムトレーナーとして働けるまでになったそうです。

また別の方は、子どもの頃から集団行動が苦手で、周囲から「接しにくい人」とレッテルを貼られ苦しんできました。そんな中で支えとなったのは、祖父の言葉でした。「普通というのは世の中の多数派なだけで、少数派がおかしいわけじゃないんだよ」という一言が、心の重荷を軽くしてくれたといいます。

さらに、学校に行けなくなり孤独を感じたという体験も紹介されました。朝起きることすら難しく、友達と話せなくなり、悲しさや情けなさに押しつぶされそうになったと語られました。それでも、同じように悩みを抱える人の声を知ることで「自分は一人ではない」と思えるようになったそうです。

それぞれの思いをつなぐリクエスト曲として流れたのは、椎名林檎「幸福論」。生きづらさを抱えながらも光を見つけようとする姿に重なる選曲で、多くの人の胸に深く響きました。

ギャンブル依存と境界性パーソナリティ障害

3人目に登場したのは、タカナミユキさんでした。彼女は若い頃にうつ病を発症し、その後もギャンブル依存症境界性パーソナリティ障害といった複数の困難と向き合い続けてきました。

特に依存症の時期には、心の苦しさを埋めるようにパチンコへとのめり込み、なんと夫の退職金を1年間で使い果たしてしまったほどだったといいます。当時の自分を振り返り、「止めたくても止められなかった」と語る姿には、病気の重さと葛藤がにじんでいました。

しかし現在は、夫に付き合う程度で少額を使うだけにとどめることができるようになり、以前のようなコントロールを失うことはなくなりました。その変化を支えたのは、何よりも夫の存在でした。彼はタカナミさんが入院していたときも毎日欠かさず面会に訪れ、ただ話を聞き続けてくれたといいます。その変わらぬ支えが「生きる支えになっている」と、彼女は強い感謝を込めて語りました。

そんな彼女がリクエストした曲は、AKB48「365日の紙飛行機」。日々を少しずつ前に進んでいこうという歌詞が、彼女自身の歩みと重なり、希望を感じさせる選曲でした。

覚醒剤依存からの回復

続いて登場したのは、匿名の男性でした。彼はかつて職場でのパワハラや、家族との関係の悪化によって心身ともに追い詰められていきました。強い孤独と絶望の中で逃げ場を失い、ついに覚醒剤へと手を伸ばしてしまったといいます。「犯罪だと分かっていても、その時はこれしかないと思ってしまった」と当時の心境を振り返りました。

やがて逮捕されることになり、そこで弁護士を通じて出会ったのがさいがた医療センターでした。この病院で治療を始めてから、彼の生活は少しずつ変わっていきます。治療プログラムの中で俳句作りに取り組むようになり、言葉に自分の気持ちを込めることで心を整理できるようになったそうです。また、ボランティア活動にも参加するようになり、人と会話を重ねる中で「人として回復している」と実感できるようになったと語りました。

今回ラジオに出演したのは、そんな自分を支えてくれた主治医の先生に感謝を伝えたかったから。今は生活保護を受けながら暮らしていますが、これからは再び働き、社会に戻ることを目標にしていると力強く話しました。

彼が選んだリクエスト曲は、フラワーカンパニーズ「深夜高速」。その歌詞に込められた「生きていてよかった」という思いが、彼自身の歩みとも重なり、深い余韻を残しました。

孤独を越えて支えを知る

その後も、患者さんやご家族からの多様なメッセージが寄せられました。

一人目は、発達障害の息子さんについてのお話でした。診断を受けた当初は将来への不安が大きかったそうですが、病院での出会いや支援を通じて少しずつ変化があり、今では冗談を言えるほど明るさを取り戻したといいます。その成長ぶりに、家族も大きな喜びと希望を感じていました。

二人目は、難病で声を失うかもしれない不安と向き合っている方。医師からは、筋力が徐々に弱っていき、最終的には延命のために気管切開と人工呼吸器が必要になると告げられました。「声を出せなくなるのでは」と恐怖を抱えながらも、「同じ入院仲間にここまで来たらなんでもできるんだと伝えたい」と力強い言葉を届けました。苦しみの中にも、人に勇気を与えようとする前向きな姿勢が印象的でした。

三人目は、孤独感と闘ってきた方の声でした。長い間「人を信じてはいけない」と思い込み、一人で踏ん張ろうとしてきたものの、心が限界に近づいたといいます。入院中には「自分は何をしているのだろう」と落ち込むこともありましたが、それでも支えてくれる人の存在に気づき、「一人ではない」と思えるようになったと話しました。その気づきが、これからも孤独感と戦い続ける力になっているそうです。

これらの思いをつないだリクエスト曲は、SUPER BEAVER「ひなた」。支えてくれる人の存在や、人と人とのつながりの温かさを感じさせる歌詞が、放送を通じて深い共感を呼び起こしました。

心理療法士が語る「寄り添う姿勢」

続いて登場したのは、心理療法士のヒカケナオフミさんでした。日々、患者と向き合う中で感じていることを率直に語ってくれました。

ヒカケさんは「心の病気は完治を目指すよりも、上手に付き合っていく方法を学ぶことが大切」と話します。症状がゼロになることを求めすぎるのではなく、自分の生活の中でどう折り合いをつけていくかを考えることが、長く安定した日常につながるというのです。

また、患者への関わり方についても「アドバイスを急いで押し付けないこと」を大切にしているそうです。本人が自分で気づきを得られる瞬間を待ち、そのきっかけを見つけられるまで寄り添う姿勢を重視しています。そうしたプロセスの中で、むしろ自分のほうが学ばされることのほうが多いとも語りました。患者との関係は一方通行ではなく、お互いに成長していく時間なのだと感じさせる言葉でした。

ヒカケさんがリクエストした曲は、BUMP OF CHICKEN「Flare」。柔らかくも力強い歌声が流れ、寄り添う温かさと未来への光を示すような選曲となりました。

摂食障害と父へのメッセージ

最後に登場したのは、ユリさんでした。現在は摂食障害抑うつ症状のため入院しています。きっかけは、両親からかけられた「足が太い」という何気ない一言や、当時の職場で感じていた強いストレスでした。その影響で食べること自体が怖くなり、体重が減ることでしか自分を認められないような気持ちにとらわれてしまったといいます。

危険なほど体重が落ちてしまった時期もありましたが、入院治療を経て命の危険は脱することができました。体調が少し安定した頃には、念願だったカフェの店員のアルバイトを始めました。しかし、思うように体がついていかず、疲れてしまって「どうしたらいいのか分からない」と悩み続けてきたそうです。

そんなユリさんにとって大きな支えとなったのが、初診の頃から関わってくれている臨床心理士の存在でした。「生きて次のカウンセリングに行こう」と思えたのは、その心理士との出会いがあったからだと感謝を語りました。

また、プライベートでも試練が続きました。去年の冬に母を亡くし、さらに父との関係もここ数年あまり良くないといいます。父は「足が太い」と言ったことを謝ってはくれましたが、覚えていない様子で、悪気もなかったと告げられました。ユリさんは「私も変な意地を張ってしまっていると思う。少し大人になれたら」と父に向けて謝罪と希望の言葉をラジオを通して伝えました。

ラジオを聴きながら「自分は一人で戦っていると思っていたけれど、みんなも同じように戦っているんだ」と気づけたと語ったユリさん。その心の変化が、これからの一歩を支える力になっているようでした。

彼女のリクエスト曲は、カーペンターズ「トップ・オブ・ザ・ワールド」。明るく前向きなメロディーが、希望を込めたメッセージと重なり、番組のラストを温かく彩りました。

サンドウィッチマンが見た「支え合い」

エンディングで伊達みきおさんは「理解者や支えてくれる人がいる方が多かった。みんな前向きだった」と感想を語り、富澤たけしさんも「完治しなくてもいいという考え方に気付かされた」と振り返りました。笑いを交えながら真剣に耳を傾ける2人の姿が、視聴者に安心感を与えました。

まとめ

今回の放送から得られるポイントは次の通りです。

  • 心の病は「完治」ではなく「付き合い方」を学ぶことが大切

  • 家族や理解者の存在が大きな支えになる

  • 同じように戦う人がいると知ることが孤独の和らぎにつながる

「病院ラジオ」は、病気や障害を抱える人の声を社会に届ける貴重な場です。この記事を読んだあなたも、周囲に寄り添うきっかけを見つけてみてはいかがでしょうか。

(参考:NHK公式サイト「病院ラジオ」2025年9月15日放送回)


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