令和の怪談ブームの中で生まれる、新しい怪談のかたち
このページでは『ドキュメント20min.吾輩は、怪談師である(2025年12月14日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
白塗りの顔と学生帽という強烈な姿で語られる怪談。その裏側では、ひとつの話が生まれるまでに長い時間と迷いが積み重なっています。この番組は、怪談師が言葉を探し、土地と向き合い、自分自身と対話する20分間を追った記録です。
白塗りの怪談師・恐怖新聞健太郎という人物
番組に登場する怪談師は、恐怖新聞健太郎さんです。白塗りの顔に学生帽、抑えた語り口が印象的で、怪談ブームの中でも独特の立ち位置を築いています。
活動の拠点は香川県高松市。普段は印刷工場に勤める会社員で、怪談師としての活動は休日が中心です。ライブハウスやバーなど、人との距離が近い場所で語りを続けています。
学生時代、目立つ存在ではなかった健太郎さんは、「話す場さえあれば」という思いを長く抱えてきました。怪談という表現に出会い、言葉だけで人の心に入り込める世界に、自分の居場所を見つけたといいます。番組では、そうした背景が過剰な演出なしに、淡々と描かれていきます。
四国に息づく妖怪『牛鬼』と創作の原点
今回の新作怪談の題材は『牛鬼(うしおに)』です。
牛の頭に蜘蛛のような体を持つ妖怪として語られることが多く、西日本、とくに四国には数多くの伝承が残っています。海辺、山あい、集落の近くなど、現れる場所もさまざまです。
健太郎さんにとって『牛鬼』は、幼い頃から知っている存在でした。怖い話として聞いた記憶と、土地に根づいた妖怪という感覚が重なっています。番組では、怪談が想像だけで作られるものではなく、記憶や土地の気配と深く結びついていることが伝わってきます。
徳島・牟岐町に残る恐怖としての牛鬼伝承
健太郎さんが最初に訪れたのは、徳島県牟岐町です。
ここに伝わる『牛鬼』は、はっきりと恐怖の対象です。夜な夜な里に現れ、人や家畜が連れ去られたという話が残っています。最終的には村人たちによって退治され、その骨は腰掛けとして使われるようになったと伝えられています。
健太郎さんは町の人たちから話を聞き、語りの中に残る不安や警戒心を感じ取ります。伝承として整理された話でありながら、どこか現実に触れているような怖さがあり、怪談としての芯になる感触がにじみ出ていました。
高知・梼原町で語られる聖なる牛鬼の姿
続いて訪れたのは、高知県梼原町です。
ここでは『牛鬼』の位置づけが大きく異なります。100年以上続く秋祭りでは、牛鬼が登場しますが、恐ろしい妖怪ではなく、地域を守る存在として受け入れられています。
同じ牛鬼でも、地域によって意味が変わる。その違いに健太郎さんは強く引き寄せられます。
恐怖の象徴でありながら、信仰の対象でもある。この二面性をどう表現するかが、新作怪談の大きなテーマになっていきます。
学術的視点が照らす牛鬼の正体
健太郎さんは、潮の研究の第一人者であり妖怪伝承にも詳しい愛媛大学の大本敬久准教授を訪ねます。
牛は古くから人の生活を支えてきた存在で、その力強さは恵みでもありました。一方で、自然の脅威を思い起こさせる象徴にもなってきたといいます。
この話から見えてくるのは、人が頼りにしてきた存在が、状況によっては脅威に変わるという感覚です。健太郎さんは、この視点を怪談の核に据えようと考えます。
体験と知識が重なり生まれる新たな怪談
牟岐町で感じた恐怖、梼原町で知った信仰、学術的な視点としての牛の存在。
それぞれが少しずつ重なり合い、新しい怪談の輪郭が見えてきます。番組では、完成した怪談を大きく見せるのではなく、言葉を探し続ける過程そのものが描かれます。
怪談は怖がらせるためだけのものではなく、人が何を恐れ、何を信じてきたのかを映す鏡でもある。健太郎さんの姿から、そんな気づきが自然と伝わってきます。
まとめ
『ドキュメント20min.吾輩は、怪談師である』は、怪談という文化の奥にある人間の感情や土地の記憶を静かに描いた番組です。
白塗りの怪談師・恐怖新聞健太郎さんが四国を歩き、『牛鬼』と向き合う姿は、怪談が生まれる瞬間を間近で見せてくれました。
怖さの向こう側にある、人の暮らしと想い。その積み重ねが、ひとつの怪談になっていく過程を感じられる20分でした。
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