激しい腹痛の謎に迫る症例推理
このページでは『総合診療医ドクターG NEXT(7)「おなかがすごく痛くなる」(2026年3月17日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
今回のテーマは、50代の男性を長く苦しめてきた 激しい腹痛。半年前から断続的に起きる強い痛みの原因を、総合診療医「ドクターG」と研修医、ゲストが症例検討会で推理していきます。
実際の症例をもとに、症状の手がかりから 病名 にたどり着くまでの思考の過程が丁寧に紹介されるのがこの番組の魅力です。意外な診断へとつながるヒントを追いながら、体に起きた異変の正体に迫ります。
Eテレ【チョイス@病気になったとき】血便 原因は大腸憩室出血?突然起こる大腸憩室 出血 突然と潰瘍性大腸炎 症状の違いを解説|2026年3月15日
原因不明の腹痛に潜む見逃されやすい危険
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一見すると単なる体調不良に思える腹痛でも、実は重大な病気や中毒が隠れていることがあります。特に今回のように、原因不明の腹痛が長期間続くケースでは注意が必要です。
腹痛という症状は非常にありふれているため、「そのうち治るだろう」と軽く考えられがちです。しかし、半年も続くとなると話は別で、体の中で何か異常が起きているサインと考えるべきです。
実際、鉛中毒のような病気では、急激に悪化するのではなく、ゆっくりと体に蓄積していくため、症状がはっきりせず見逃されやすい特徴があります。
このようなケースでは、「よくある病気では説明できない」という違和感を見逃さず、生活環境や中毒といった“見えない原因”まで視野を広げることが非常に重要になります。
見逃されやすい腹痛の特徴
腹痛の中でも特に注意が必要なのは、繰り返す痛みや前触れのない発作的な痛みです。
こうした痛みは「疝痛(せんつう)」と呼ばれ、
・急に強い痛みが出る
・しばらくすると治まる
・また繰り返す
という特徴があります。
このタイプの腹痛は、単なる胃腸炎ではなく、結石や中毒など“体の内部で起こる異常”と関係していることが多いとされています。
実際に鉛中毒でも、腹部の疝痛が代表的な症状として現れることが知られており、痛みが断続的に続く場合は特に注意が必要です。
日常生活に潜むリスク
今回の症例で特に重要なのは、原因が生活環境にあった点です。
鉛は特別な場所だけに存在するものではなく、
・古い食器や陶器の釉薬
・古い水道管
・塗料や金属製品
など、身近なところにも含まれていることがあります。
そして問題なのは、少量でも長期間取り込むことで体内に蓄積されることです。
その結果、
・腹痛
・貧血
・神経症状(力が入らない、イライラする)
といった症状が少しずつ現れてきます。
つまり、毎日使っているものでも「安全だと思い込んでいるだけ」で、実は体に影響を与えている可能性があるということです。
こうした背景を踏まえると、原因不明の症状に出会ったときは、
食事・食器・水・住環境などを見直すことが診断の大きなヒントになるといえます。
痛みの特徴から病気を絞る診断プロセス
診断の大きなポイントは、痛みの種類を見極めることです。医師はまず「どこが痛いか」よりも先に、どんな痛み方なのかに注目します。
なぜなら腹痛は、同じ場所でも原因によってまったく違う痛み方をするためです。
実際、腹痛は「持続的に続くもの」と「波のように出たり消えたりするもの」に分かれ、この違いが診断の方向を大きく左右します。
今回の症例でも、まず痛みのタイプを整理することで、疑うべき病気の範囲が一気に絞られていきました。
持続痛と間欠痛の違い
痛みには大きく分けて、持続痛と間欠痛があります。
持続痛は、ずっと続く鈍い痛みで、炎症や臓器のダメージが原因となることが多いです。
一方で、今回の症例のように特徴的だったのが、突然強く痛んでしばらくするとおさまる間欠痛(疝痛)です。
この疝痛は、
・一定の間隔で繰り返し起こる
・痛みの強弱をくり返す
という特徴があります
さらにこの痛みは、胃や腸、胆のう、尿管などの管状の臓器が、強く収縮したり詰まったりすることで起こるとされています
そのため、医師はこの段階で
・尿路結石
・胆石症
といった「詰まり系の病気」を優先的に疑うことになります。
痛みの質が診断の鍵になる
さらに重要なのが、痛みの“質”です。
腹痛にはさまざまなタイプがあり、
・差し込むような鋭い痛み(疝痛)
・ズーンと重い鈍い痛み
・押すと強くなる痛み
などに分類されます
例えば、
・鋭く刺すような痛み → 結石や痙攣
・重く続く痛み → 炎症や臓器障害
といったように、痛みの性質だけである程度の方向性が見えてきます。
また、疝痛の特徴として
・痛む場所がはっきりしない
・吐き気や冷や汗を伴う
といった自律神経症状が出ることもあります
今回のケースでも、
「針で刺されるような痛み」「短時間で収まる」という情報が、
内臓のけいれんや異常収縮を強く示唆する重要なヒントになっていました。
このように、痛みの種類と質を丁寧に整理することで、
医師は検査に入る前の段階で、かなり精度の高い仮説を立てているのです。
除外された病気と消去法の重要性
診断では「当てる」だけでなく、「外す」ことも非常に重要です。特に腹痛は原因となる臓器が非常に多く、一つの病気を決め打ちするのではなく、複数の可能性を同時に考えることが基本になります。
実際、腹痛は消化管・胆道・尿路・血管など、さまざまな臓器が原因となるため、最初から正解にたどり着くことはむしろ少ないとされています。
そのため医師は、「当てる診断」ではなく、鑑別診断(考えられる病気のリスト)を作り、そこから一つずつ外していくプロセスを重視します。
典型的な病気の除外
今回まず疑われたのは、尿路結石・胆石症・大腸がんといった代表的な腹痛の原因でした。
これらは腹痛の診療では「まず考えるべき病気」であり、特に
・突然の強い痛み → 結石
・食後の痛み → 胆石
・慢性的な変化 → がん
といったように、症状からある程度の見当がつきます。
しかし今回のケースでは、
・CT検査で結石が確認できなかった
・痛みが間欠的(疝痛)である
という点から、典型的な結石やがんの特徴と一致しませんでした。
このように、検査結果と症状が一致しない場合は、その病気を積極的に除外していくことが重要になります。
消去法で真実に近づく
こうして一つずつ可能性を外していくことで、逆に「残った可能性」が浮かび上がってきます。
このプロセスは、
・よくある病気をまず疑う
・証拠がなければ除外する
・残った中から説明できるものを探す
という流れで進みます。
特に総合診療では、「ありそうな病気」ではなく「すべての症状を説明できる病気」だけを残すという考え方が重要です。
今回も、
・腹痛(疝痛)
・ビリルビン上昇
・神経症状
といった複数の要素をすべて説明できる病気として、最終的に鉛中毒が浮かび上がりました。
つまり、診断とは「当てるゲーム」ではなく、
矛盾を一つずつ消していき、最後に残る“唯一の答え”を見つける作業なのです。
ビリルビン上昇から見えた異常のヒント
決定的なヒントになったのが血液検査でした。
腹痛の原因がはっきりしない場合でも、血液のデータには体の中で起きている異常がしっかり現れます。今回の症例では、肝臓の数値には異常がないにもかかわらず、ビリルビンだけが高いという特徴的な結果が出ていました。
この「一部だけ異常」というパターンは、診断において非常に重要なサインであり、医師はここから原因を深く掘り下げていきます。
ビリルビンとは何か
ビリルビンは、赤血球の中にあるヘモグロビンが分解されることで生まれる物質です。
赤血球は通常、約120日で寿命を迎え、脾臓などで壊されます。そのときに出たヘモグロビンが分解され、最初にできるのが間接ビリルビンです。
その後、肝臓で処理されて水に溶けやすい形に変えられ、体外へ排出されます。
つまり、ビリルビンは
「赤血球が壊れた量」と「肝臓の処理能力」のバランスで決まる物質です。
このバランスが崩れると、血液中にビリルビンが増えてしまい、体の異常を示すサインとなります。
溶血性貧血の可能性
今回のように、肝臓に異常がないのにビリルビンだけが高い場合、まず疑われるのが溶血性貧血です。
溶血性貧血は、赤血球が通常よりも早く壊れてしまう病気で、壊れた赤血球から大量のヘモグロビンが放出され、それが分解されてビリルビンが急増するのが特徴です。
このとき、肝臓は正常でも処理が追いつかず、結果として血液中のビリルビンが高くなります。
さらに進むと、
・皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)
・尿の色が濃くなる
といった変化も現れることがあります。
なぜ「ヒント」になるのか
この検査結果が重要なのは、「原因が肝臓ではない」と分かる点です。
もし肝臓の病気であれば、他の肝機能の数値も異常になります。しかし今回はビリルビンだけが上昇していたため、
「赤血球の破壊が増えているのではないか」
という方向に診断が進みました。
さらにこの時点で、
・結石
・腸の病気
といった消化器系の原因から、
血液や中毒といった別の領域へ視点が切り替わることになります。
つまりビリルビンの上昇は、単なる数値の異常ではなく、
診断の方向を一気に変える“決定的な分岐点”だったのです。
神経症状と生活環境から浮かぶ中毒の可能性
さらに重要なのが、腹痛以外の症状です。
腹痛だけであれば消化器の病気を疑いますが、そこに別の症状が加わることで、診断の方向は大きく変わります。今回のケースでも、腹痛に加えて現れていた症状が、原因を特定する大きなヒントになりました。
見逃してはいけない神経症状
患者には
・物を落とす
・力が入らない
・怒りっぽくなる
といった変化が見られました。
これらはすべて神経症状にあたります。
特に「力が入らない」「物を落とす」という症状は、手や腕の神経がうまく働いていない状態で、末梢神経障害と呼ばれます。実際に鉛中毒では、末梢神経障害が起こり、筋力低下や麻痺が現れることがあるとされています。
また、「怒りっぽくなる」といった変化も重要で、これは脳や神経に影響が出ているサインです。鉛中毒では、気分の変化や人格の変化が起こることもあると報告されています。
つまりこれらの症状は、単なる体調不良ではなく、神経そのものに影響が出ている証拠なのです。
中毒を疑う視点
ここで重要なのが、「複数の症状をまとめて考える視点」です。
今回のように
・腹痛(疝痛)
・貧血を示す検査異常
・神経症状
これらが同時に起きている場合、ひとつの臓器の病気では説明がつきません。
そこで浮かび上がるのが、全身に影響を及ぼす病気=中毒です。
特に鉛中毒では、
・腹部の強い痛み(鉛疝痛)
・貧血
・末梢神経障害
といった症状がセットで現れることが知られています。
さらに、鉛は体内に少しずつ蓄積し、長い時間をかけて症状を引き起こすため、最初はバラバラの症状に見えてしまうのが特徴です。
なぜ見抜くのが難しいのか
中毒が見逃されやすい理由は、「症状がつながって見えない」ことにあります。
・腹痛 → 消化器の問題
・力が入らない → 加齢や疲労
・怒りっぽい → ストレス
と、それぞれ別の原因に見えてしまうためです。
しかし総合診療では、こうしたバラバラの症状をひとつにつなげて考えます。
その結果、
「すべての症状を説明できる原因は何か?」
という視点から、最終的に中毒という答えにたどり着きました。
意外な原因「土鍋」と鉛中毒の真実
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最終的に判明した原因は、非常に身近なものでした。
今回の症例が示しているのは、「特別な職業や環境でなくても中毒は起こりうる」という事実です。むしろ日常生活の中にあるものほど、長期間にわたって体に影響を与え続けるため、気づきにくいという特徴があります。
鉛中毒とは何か
鉛中毒は、体内に鉛が少しずつ蓄積することで起こる病気です。
鉛は体の中に入ると排出されにくく、血液や骨、神経などに蓄積していきます。その結果、
・腹痛(鉛疝痛)
・貧血
・神経症状(筋力低下・イライラ・性格変化)
といった症状が現れます。
特に特徴的なのは、症状が急に出るのではなく、ゆっくりと進行することです。気づかないうちに体に溜まり、ある時点で一気に症状として表面化します。
また、重症になると
・人格の変化
・脱力
・協調運動の障害
など、神経への影響も強く出ることが知られています。
土鍋の釉薬が原因だった理由
今回の原因となったのは、土鍋の釉薬(ゆうやく)でした。
陶器の表面に使われる釉薬には、光沢や強度を出すために鉛が含まれていることがあるとされています。
通常はしっかり焼成されていれば問題ありませんが、
・古い製品
・低温焼成のもの
・品質が不十分な製品
では、加熱や酸性の食品によって鉛が溶け出す可能性があります。
さらに、実際に
「調理中に鉛が溶け出すケース」
も報告されており、知らないうちに摂取してしまうことがあります。
つまり今回のケースでは、
毎日の食事で少しずつ鉛を取り込み続けた結果、体内に蓄積して発症したと考えられます。
治療と回復のポイント
治療の基本は非常にシンプルで、原因を完全に断つことです。
鉛中毒では、まず
・鉛を含む環境から離れる
・原因となる物を使わない
ことが最優先となります。
そのうえで必要に応じて
・入院管理
・薬による排出(キレート療法)
が行われることもあります。
今回のように比較的早く原因が特定された場合は、
摂取を止めるだけでも症状が改善していくケースが多いとされています。
実際に、食器を新しいものに変えただけで、
・腹痛の軽減
・貧血の改善
といった回復が見られました。
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