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NHK【総合診療医ドクターG NEXT】(5)「父がまるで別人になった」認知症みたいで治る病気とは?高齢者が急にぼーっとする原因と『慢性硬膜下血腫』初期症状まとめ|2025年11月14日

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父がまるで別人に見えた理由を探る物語

父親の様子が急に変わったとき、家族は不安でいっぱいになります。いつも楽しそうにリハビリをしていた人が、急にぼーっとしはじめ、食事を残し、好きだった麻雀にも熱が入らなくなる。この記事では、番組で紹介された76歳の男性がたどった変化の“本当の原因”を、すべてのエピソードを追いながらわかりやすくまとめます。読み進めることで、似た変化に気づいたときに何を疑うべきか、どこに注目すべきかが見えてきます。

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いつも明るかった76歳の父に起きた急変

2年前に脳梗塞を患い、左半身に麻痺が残った五十嵐和男さん。
それでも、医学療法士とのリハビリはいつも笑顔で、介護ヘルパーとも明るく会話し、日常生活を前向きに過ごしていました。

最近では趣味の麻雀にも通うようになり、地域の仲間との交流も楽しんでいたと言います。

しかし3週間前、娘の五十嵐朋子さんが自宅を訪ねたとき、思わぬ異変に直面しました。

室内は煙たく、お鍋は火にかかったまま真っ黒に焦げた状態。
「父のうっかりかな」と最初は軽く考えたものの、その後の変化はあまりに急激でした。

・口数が減ってぼーっとしている
・急に老け込んだように見える
・好物のすき焼きを残した
・知り合いの名前が出てこなくなった
・この3週間は肉や魚を食べていないかもしれない

“会話が減り、ポツンと置かれたように静かになってしまう”
そんな父の姿に、朋子さんは「本当に別人のようだった」と話していました。

小さな違和感を見逃さない──ヘルパー・理学療法士から見た変化

番組では、和男さんと関わる複数の専門職が、共通して“いつもと違う”と感じていたことが描かれました。

3週間前から強まっていた傾眠傾向

担当ヘルパーの元野さんは、最近の和男さんがやたら眠そうにしていることを気にしていました。
テレビを見て笑い、新聞を読み、世間話をしていた頃とは明らかに違っていたのです。

さらに、他にも気になる変化がありました。

・お茶を「ぬるい、いつもと違う」と言う
・クーラーの温度設定が30度になっていた(普段は28度で快適だった)

体の感覚のズレが生じているように見えました。

リハビリへの意欲も低下

理学療法士の斉藤さんも、ここ最近はリハビリへのやる気が落ちていたと話しました。
左半身の麻痺は悪化していないのに、動きに覇気がない姿が続いていたのです。

そしてもう一つ気になる点として、体重が3kg減っていたことが挙げられました。

身体の中で何かが起きている可能性が、ここでも示されていました。

“認知症のような症状”が見える時に考えるべき病気

スタジオで番組のMCを務めた藤井隆さん、赤木野々花さん、陣内孝則さんの前で、研修医たちは病名を予想していきました。

最初に挙がった候補は以下の通り。

『ウェルニッケ脳症』
『慢性硬膜下血腫』
『特発性正常圧水頭症』
『甲状腺機能低下症』
『肝性脳症』
『認知症』

和男さんの症状である
・記憶障害
・傾眠傾向
・食欲・意欲低下
・元気がない
・言葉が少なくなる

これらは一見すると認知症のように見えます。

しかし番組は、こうした症状が『治療できる原因』でも起こりうることを示していました。

往診で浮き彫りになる状態の深刻さ

往診を行った小林正宜医師は、和男さんにいくつかの質問を行いました。

「最近運動している?」
「歳はいくつ?」
「今年は何年?」

しかし、どの問いにも正しく答えることができません。

さらに身体診察では以下の結果に。

・深部腱反射は亢進(強く反応)
・眼球運動は異常なし
・羽ばたき振戦なし
・足のむくみなし
・頭部外傷の痕跡なし

ここで候補の病気は大きく絞れました。

残ったのは
『慢性硬膜下血腫』
『特発性正常圧水頭症』
の2つ。

どちらも“認知症のような症状”を起こすため、慎重な見極めが必要です。

家族からの追加情報で見えてきた“転倒の可能性”

家族からの話で、1週間前に尿失禁があったことがわかりました。
さらにお尻に青あざがありました。

青あざ自体は、1ヶ月前に孫のサッカー観戦の帰りに尻もちをついたときのものだと孫が説明。しかし、そこで頭を打っていたかどうかは分かりません。

“転倒して頭を打つ”
この行為は『慢性硬膜下血腫』のきっかけになり得ます。

ここで診断の流れは、大きく動き始めました。

決定的だった“聴性打診”とCT画像に写った影

2つの病名を分けるカギは『左右差』です。

『慢性硬膜下血腫』
→ 脳内の出血が片側に広がることが多く、左右差が出る
『特発性正常圧水頭症』
→ 左右差は出ない

訪問診療でも判断できるよう、小林医師は“聴性打診”という方法を使いました。
これは、頭を軽く叩いたときの音の左右差を聞き分ける診察です。

その結果、左右で違いがあり、慢性硬膜下血腫の疑いが強まりました。
最後にCT画像を確認すると、脳を押しつぶすように広がった血腫がはっきり写っていました。

最終診断は『慢性硬膜下血腫』。

スタジオでは、陣内さんが最初からこの病名を挙げていたことも話題になりました。

治療できる“認知症のような症状”を見逃さないために

番組の最後で、小林正宜医師は研修医たちに向けて深いメッセージを送りました。

今回の症例のように、認知症のような症状でも“治療できる病気”が隠れていることがある。
しかし一方で、治療が難しい人が90%以上を占めるという厳しい現実もあります。

だからこそ医療者は、その人が積み重ねてきた人生を尊重しながら診療してほしいと語りました。
その言葉を聞き、研修医たちは真剣な表情で学びを語り合っていました。

まとめ

今回の『総合診療医ドクターG NEXT』は、
“認知症のように見える症状の裏に何があるのか”
“生活の小さな変化が重大なサインになることがある”

この2つを伝える回でした。

娘さんが気づいた鍋の焦げ付き、言葉数の少なさ、食欲の低下。
ヘルパーやリハビリ担当者が感じた違和感。
医師の診察や家族からの聞き取り。

それらが一つにつながり、最終的に『慢性硬膜下血腫』という治療すべき病気にたどり着きました。

誰かの“いつもと違う”を大切にすること。
それは家族にとっても、医療にとっても、とても大切な第一歩です。

この記事が、あなたや周囲の大切な人の変化に気づくきっかけになれば幸いです。

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