冬の一着に詰まった技術のすべてが見える探検
このページでは『探検ファクトリー(2025年12月20日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
冬になると当たり前のように着ているダウンジャケットですが、その軽さと温かさの裏側には、想像以上に細かなモノづくりの工夫があります。今回の探検ファクトリーでは、中川家とすっちーが滋賀県米原市のダウンジャケット工場を訪れ、羽毛製品づくりの現場に入り込みます。この記事を読むことで、ダウンジャケットがなぜ軽くて温かいのか、その理由を自然と理解できるようになります。
滋賀・米原市にあるダウンジャケット工場の歴史
この工場の前身は、1941年に滋賀県米原市で創業した布団製造の会社です。米原市は古くから綿入り布団の産地として知られ、地域には布団づくりに欠かせない縫製や仕立ての技術が受け継がれてきました。工場もそうした土地の技術を土台に、布団製造から事業をスタートしています。
その後、時代の変化とともに寝具だけでなく、寝袋の縫製にも取り組むようになりました。アウトドアブランドからの依頼をきっかけに寝袋製造を行うようになり、羽毛の選別や詰め方、保温性を高める工夫など、ダウン製品ならではのノウハウを蓄積していきます。この寝袋づくりの経験が、現在のダウン製品づくりの重要な基礎となっています。
さらに事業は発展し、1990年代には会社組織を整え、「NANGA」という社名で本格的にダウンジャケットの製造・販売を開始しました。2002年にはダウンジャケットの最初のプロトタイプが作られ、翌2003年には「Aurora Down Jacket」が製品として世に出ています。
このように、布団製造から寝袋、そしてダウンジャケットへと歩みを進める中で、長年にわたって培われた縫製技術と羽毛製品の知識が積み重ねられてきました。米原市という土地に根ざしたモノづくりの歴史が、現在のダウンジャケットづくりにも確かにつながっています。
軽さと温かさを両立させる羽毛量の細かな調整技術
ダウンジャケットが「軽いのにしっかり温かい」と感じられる理由は、羽毛そのものの性質と、詰め方の工夫が組み合わさっているからです。羽毛はとても軽く、細かな繊維の間にたくさんの空気を含むことができます。この空気の層が体温を外に逃がしにくくし、少ない重さでも高い保温力を生み出しています。
工場では、体のどこをどれだけ温める必要があるのかを細かく考えながら、羽毛の量を調整しています。肩や背中、胸まわりなど冷えやすい部分には必要な分だけ羽毛をしっかり入れ、腕まわりや動きの多い部分は量を抑えるといった具合に、部位ごとにグラム単位で量り分けて詰めていきます。こうすることで、全体を無駄に重くせず、着たときのバランスを保っています。
羽毛そのものの質も、軽さと温かさに大きく関わります。目安となるのがフィルパワーと呼ばれる数値で、羽毛がどれだけ大きく膨らむかを示したものです。フィルパワーが高い羽毛ほど、同じ重さでも多くの空気を含むため、少ない量でも十分な保温力が得られます。高品質な羽毛を使うことで、軽さを保ったまま温かさを引き出すことができます。
さらに、羽毛を入れる内部構造も重要です。ジャケットの中にはチャンネル構造やバッフルと呼ばれる仕切りがあり、羽毛が一か所に偏らないよう工夫されています。これによって、冷たい部分ができにくくなり、体全体を均一に包み込むような温かさが生まれます。
このように、羽毛の性質を理解したうえで、量の細かな調整、羽毛の品質選び、内部構造の工夫を重ねることで、軽さと温かさを両立したダウンジャケットが作られています。普段は見えない部分にこそ、長年培われた技術が詰まっています。
布団づくりの経験が生きるダウン製造の現場
滋賀・米原市のダウンジャケット工場では、長年続けてきた布団づくりの経験が、そのまま現在のダウン製造に生かされています。もともと布団、特に羽毛布団の製造では、素材選びから洗浄、羽毛の充填、縫製、仕上げ検査まで、すべての工程を丁寧に積み重ねることが欠かせません。羽毛という繊細な素材をどう扱うかは、完成度を左右する重要なポイントです。
布団づくりで培われた技術の一つが、羽毛を側生地の中に均一に行き渡らせる感覚です。決められた量を入れるだけでなく、偏りが出ないように整え、キルティングや縫製で適切に固定していく工程は、長年の経験がものを言います。この感覚は、ダウンジャケットの中で羽毛を安定させる作業にもそのまま応用されています。
また、布団生地で行ってきたキルト加工や、細かなミシン縫製の技術も重要です。縫い目の強さや間隔、羽毛が漏れにくい仕立て方など、布団製造で積み重ねてきた工夫が、ダウンジャケットの耐久性や着心地の良さにつながっています。羽毛の性質を理解しているからこそ、どこに注意すべきかを現場の職人が自然に判断できるのです。
このように、布団づくりで身につけた羽毛製品の基本的なノウハウがあることで、ダウンジャケットの製造でも高い品質を維持することができます。目には見えにくい部分ですが、長い歴史の中で磨かれてきた技術と感覚が、現在のダウンづくりをしっかりと支えています。
プロが教えるダウンジャケットの正しい洗濯方法
ダウンジャケットは中に入っている羽毛がとても繊細なため、正しい方法で洗うことが長持ちさせる大切なポイントになります。汚れを落としつつ、羽毛のふんわり感や保温力を保つために、基本的な流れと注意点を押さえておくことが重要です。
まず洗う前に行いたいのが、洗濯表示タグの確認です。家庭での洗濯が可能かどうかを必ずチェックします。そのうえで、襟や袖口、ポケットまわりなど、皮脂汚れがつきやすい部分は、スポンジなどで軽く前処理しておくと、全体を洗ったときに汚れが落ちやすくなります。
洗い方は手洗いが基本です。30度以下のぬるま湯に、おしゃれ着用の中性洗剤を少量溶かし、ダウンジャケットを静かに沈めます。洗うときは、押して離すような動作を繰り返すのがコツで、こすったり揉んだりするのは避けます。強い力を加えると羽毛の繊維が傷み、保温力が落ちる原因になります。
洗剤が残らないよう、すすぎは水を替えながら数回行います。すすぎが不十分だと、乾いたあとに羽毛が固まりやすくなるため注意が必要です。脱水は短時間で行い、1分以内の軽い脱水を数回に分けると、羽毛の片寄りを防ぎやすくなります。
乾燥はとても重要な工程です。脱水後はすぐに形を整え、直射日光を避けた風通しの良い場所で干します。完全に乾く前に無理に羽毛をほぐすのではなく、ある程度乾いてから、手で軽くたたくようにして空気を含ませると、ふんわりとした仕上がりになります。
洗濯機を使う場合は、ドライコースや手洗いコースなど、弱い水流の設定を選びます。ファスナーやボタンはすべて閉め、洗濯ネットに入れて洗うことで、生地や羽毛へのダメージを抑えることができます。洗剤も必ず中性洗剤を使用します。
このようなポイントを意識してお手入れすることで、ダウンジャケットの軽さと温かさを長く保つことができます。頻繁に洗う必要はなく、汚れが気になったときにやさしく洗うことが、ダウンを大切に使うコツです。
まとめ
『探検ファクトリー』の25分間は、ダウンジャケットという身近な存在の裏側を映し出しました。滋賀・米原市の工場で受け継がれてきた技術は、軽さと温かさを両立させるための積み重ねそのものです。
これからダウンジャケットを着るたびに、その中に詰まった工夫と時間を思い出したくなる、そんな回でした。
【あさイチ】ダウンジャケットの正しい片づけ方を専門家が解説!「もむ・干す・収納」でふんわり復活|2025年4月3日放送
着た瞬間の心地よさは「重さ」よりも重心で決まります

ダウンジャケットを選ぶとき、多くの人はカタログ表記の重さや、持ったときの軽さに注目します。ただ、実際に着てみると「数字より軽く感じる」「意外と肩がこる」といった差が出ることがあります。その違いを生むのが、着用時の重心です。これは工場での羽毛の詰め方や構造と深く関わっています。
同じ重さでも感じ方が変わる理由
ダウンジャケットは、同じ総重量でも重さの分布によって着心地が大きく変わります。肩や背中の上部に重さが集中すると、着た瞬間にずっしり感じやすく、長時間着ると疲れにつながります。一方で、胸から胴まわりにかけてバランスよく重さが分散されていると、実際の重さ以上に軽く感じやすく、体への負担も少なくなります。これは数字では見えにくいですが、着たときの感覚にははっきり表れます。
羽毛の配置が重心を左右する
工場では、羽毛をただ均等に入れているわけではありません。冷えやすい部位と動かしやすさを保ちたい部位を考え、羽毛の量を細かく調整しています。特に肩まわりや首元は、温かさが必要な反面、重くなりすぎると着心地が悪くなります。そのため、重心が下がりすぎず、上がりすぎない位置にくるよう羽毛の配置が工夫されています。こうした調整が、自然な着心地につながっています。
試着で意識したいチェックポイント
ダウンジャケットを試着するときは、軽さだけで判断せず、鏡の前で腕を動かしたり、少し歩いたりしてみることが大切です。そのとき、肩に重さを感じないか、前に引っ張られる感じがないかを確かめます。着た瞬間に体にすっとなじむ感覚がある一着は、重心のバランスが良い証拠です。こうした視点を持つことで、冬を快適に過ごせるダウンジャケットを選びやすくなります。
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