火のそなえ、できていますか?“もしも”の時に頼れる消火器の秘密
突然の火事…そんな時、すぐに手が届く場所に「消火器」がありますか?「あの赤い筒、どうやって使うの?」「中身って何が入っているの?」と感じたことがある方も多いはず。実は、消火器には“赤”以外にも“ピンク”や“緑”など、用途によって色や構造が異なる種類があるんです。この記事では、すっちーさんと中川家の礼二さん・剛さんが訪れた大阪・堺市の消火器工場の探検を通して、普段は見えない“命を守る道具”の裏側に迫ります。読むだけで、あなたも今日から「消火器博士」になれるはずです。
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消火器の「赤・緑・ピンク」色には深い理由があった
消火器といえば赤!というイメージが定着していますが、実はこの色には消防法で定められた理由があります。一般用の消火器は「表面積の25%以上が赤」でなければならないと決まっており、これは“遠くからでも一目で分かるように”という安全上の工夫です。一方で、家庭用の小型タイプは“消火器とわかればよい”ため、ピンクや白などのやさしい色合いの製品も登場しています。
また、ガス系の消火器は「表面積の50%以上が緑」と定められています。これは、炭酸ガスを用いたタイプで、電気火災などに向いています。ガスが酸素を遮断することで炎を消す仕組みです。対して水系消火器は初期火災や紙・木材に、粉末系消火器は最も汎用性が高く、油や電気などあらゆる火災に対応します。
番組では「どんな火にどの消火器が向くか」を示す火災マークも紹介されていました。マークを見れば、どのタイプの火事に対応しているかが一目でわかるようになっています。安全に使うための順番は、ガス → 水 → 粉末の順。これは、後になるほど威力が強く、最終手段に適しているためです。
1枚の鉄板から生まれる“命を守る容器”
消火器は一見シンプルですが、内部には高い圧力がかかるため、わずかな亀裂や歪みも許されません。そこで堺市の工場では、1枚の鉄板から消火器の本体を成形するという特殊な製法を採用しています。これは「溶接の回数をできるだけ減らす」ため。継ぎ目が減れば強度が上がり、爆発や破裂のリスクを最小限にできるのです。
溶接を終えた容器は、油汚れや鉄粉をしっかり洗浄してから表面処理を実施。その後、「粉体焼付塗装」という最新技術で赤く色づけされます。粉体塗料を静電気の力で鉄に吸着させ、約200度の熱で焼き付ける方法で、塗膜の厚さはわずか40マイクロメートル。これによって、ムラがなく剥がれにくい仕上がりが実現します。長年使っても色あせしにくく、サビにも強い。この技術はまさに“見えない安心”を支える工程といえます。
ピンクの粉は“安全確認”のために
番組で最も印象的だったのが、消火器の中身がピンク色という話。多くの人が「消火剤は白か透明」と思いがちですが、実はリン酸二水素アンモニウムという粉末薬剤が使用されています。この成分は、燃えている物体を覆って空気を遮断し、酸素供給を絶つことで火を消すのです。
では、なぜピンク? それは「消火後に灰と薬剤を見分けるため」。真っ白な灰の中にピンク色の粉があれば、「しっかり噴射できた」とすぐに判断できるのです。災害現場での確認をスムーズにし、再発火を防ぐという非常に合理的な理由がありました。
さらに、工場では作業員の疲労軽減にも配慮した充填ラインを導入。重い薬剤を持ち上げる動作をできるだけ自動化し、ミスを防ぎながら効率を高めています。「命を守る道具」を作る現場には、人の健康を守る優しさも息づいていました。
安全検査は“ヘリウムで漏れを探す”最先端技術
完成した消火器は、すぐに出荷されるわけではありません。最後の関門となるのがヘリウムガスを使った安全検査です。容器を真空状態にして、極微量のガス漏れがあるかを検出。もし穴があれば、ヘリウムが漏れ出して機械が反応します。この検査を通過したものだけが製品化され、全国の家庭や施設に届けられます。
さらに、使用期限を迎えた消火器は分解・再利用されます。中の消火剤を新しい容器に入れ替え、古い鉄は溶かして再資源化。限りある資源を大切にする“循環型製造”が根づいており、環境にも優しいものづくりが進んでいました。
新時代の消火技術――文化財も守るやさしい薬剤へ
堺市の工場では、環境負荷を減らすための研究も行われています。これまでの消火薬剤には有機フッ素化合物が含まれることがあり、環境中に残留する問題が指摘されていました。そこで、フッ素を使わない新しい薬剤が開発されています。
また、炭酸ガスを用いて酸素を遮断するタイプや、カリウムを主成分とするシート型消火剤も注目されています。このカリウムシートは、文化財のように直接水や粉をかけられない場所に貼ることで、万が一の延焼を防ぐことができます。たとえば歴史的建造物の壁や天井にも採用されており、“文化と命の両方を守る”革新的な技術として期待が高まっています。
まとめ:火を恐れるより、正しく知ることから始めよう
この記事のポイントは以下の通りです。
・消火器の色にはすべて法的な意味がある(赤=一般用、緑=ガス系)
・中身のピンク色は安全確認のための工夫
・堺市の工場では溶接・塗装・検査の全工程で“安全第一”を追求
・環境に配慮した新薬剤や文化財を守る技術も進化中
消火器は、使い方を知らなければ意味がありません。レバーの握り方や狙う位置(“火の根元”)を、今のうちに確認しておきましょう。日常では目立たない存在ですが、いざという時にはあなたや家族を守る最前線のヒーローです。今日、この記事を読んだ今こそ、家や職場の消火器をもう一度見直してみてください。それが、未来の安全につながる“最初の一歩”です。
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