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Eテレ【おとな時間研究所 懐かしの喫茶研究 第2弾】難波里奈×東京喫茶店研究所が案内する「出かける時から始まる喫茶店文化遺産」の世界|2025年11月7日

おとな時間研究所

喫茶時間の達人・難波里奈さんに学ぶ「出かける時から始まる喫茶店の楽しみ方」

「喫茶店って、なぜあんなに心が落ち着くんだろう?」
そう感じたことがある人も多いのではないでしょうか。
カウンター越しに聞こえるカップの音、ほんのり暗い照明、レトロなフォントの看板――その空間には、誰もが懐かしさと安らぎを感じます。

この記事では、2,000軒以上の純喫茶を巡ってきた難波里奈さんの“喫茶店の楽しみ方”を紹介します。
彼女が語る「出かける時から始まる」という喫茶道の奥深さに触れると、いつもの一杯がまったく違って見えてくるはずです。

【おとな時間研究所】昭和レトロな喫茶店を大特集!純喫茶の魅力と人気メニューとは|2025年4月18日放送

出かける瞬間から喫茶時間は始まっている

難波里奈さんは、「東京喫茶店研究所」の二代目所長であり、“純喫茶愛好家”として知られています。
彼女が提唱する喫茶の楽しみ方は、「喫茶店に入る前からすでに始まっている」という独特なものです。

たとえば、喫茶店へ向かう途中の道。
駅からお店までの数分間、街並みをゆっくり歩く時間こそが大切だといいます。
昭和の雰囲気を残す商店街、古い看板の書体、レンガの壁――。
それらを眺めながら心を落ち着けることで、喫茶店に入る準備が整っていくのだそうです。

難波さんは「喫茶店の外観には、その店の物語が詰まっている」と語ります。
窓の形やカーテンの色、ドアノブの質感にさえ、店主のこだわりと年月の重みが感じられる。
この“観察する時間”こそが、彼女にとって喫茶店の入口なのです。

五感で味わう「店内の記憶」

扉を開けた瞬間、ふっと広がるコーヒーの香り。
この香りの向こうに、何十年も積み重ねられた時間が漂っています。
難波さんは、そんな空気の層を「香りで感じる記憶」と呼びます。

店内では、コーヒーの味よりも空間全体を観察します。
カウンターの高さ、椅子の座り心地、照明の角度、カップの形。
たとえば、少しすり減った椅子の背もたれには、無数の人が腰をかけた時間の跡が残っている。
カップの縁の小さな欠けにも、何年も使われ続けた店の歴史がある。
「古びているのではなく、使い込まれている。その違いを感じるのが純喫茶の醍醐味」と難波さんは言います。

照明の明るさも、店ごとに違います。
少し黄みがかった柔らかな光は、客の表情をやわらかく包み、心を静かに落ち着かせる。
その光がテーブルのコーヒーに映り込む瞬間、時間の流れがゆるやかになる。
まさに“日常の中の非日常”がそこにあるのです。

穏やかな接客が生む「居心地の魔法」

純喫茶の魅力を語るうえで、忘れてはならないのが人の存在です。
難波さんが「また行きたい」と思う店には、必ず“穏やかな接客”があります。

お水を静かに置く仕草、オーダーを取るときの声のトーン、必要以上に話しかけない距離感。
それらはすべて、客に安心を与える“無言のもてなし”。
常連が座る席をさりげなく空けておく、言葉少なに微笑む――そうした行動ひとつひとつに、店主の優しさが滲み出ています。

「喫茶店では、人との会話がなくても、心が通う瞬間がある」と難波さんは話します。
その空気があるからこそ、人はまた同じ場所に戻ってくるのです。

純喫茶は「昭和の文化遺産」でもある

難波さんが巡るのは、全国の古き良き喫茶店。
それらを彼女は“文化遺産”と呼びます。
理由は単純です。「その店がそこにあり続けること」自体が価値だから。

彼女の代表作『純喫茶とあまいもの』シリーズでは、喫茶店とともに“名物スイーツ”も紹介されています。
ホットケーキ、プリンアラモード、ナポリタン、ミルクセーキ――。
それぞれの味には、店主の思い出とお客との物語が詰まっています。
「お菓子や軽食は、その店の記憶を食べるようなもの」と彼女は語ります。

また、純喫茶を“非日常の中の日常”として捉える姿勢も印象的です。
社会が速く変化しても、喫茶店の時間はゆっくり進む。
そこで過ごすひとときは、過去と現在をつなぐ“心の休憩所”なのです。

消えゆく喫茶文化を記録するという使命

純喫茶は全国で次々と姿を消しています。
再開発や後継者不足、ビルの老朽化など、さまざまな事情が重なっています。
それでも難波さんは、「残された店を記録すること」に情熱を注いでいます。

古い喫茶店の写真を撮り、店主の言葉を記録し、空間の空気までも文章に残す。
それは、単なる紹介ではなく「文化の保存作業」です。
店を訪れるたびに「ここにはまだ昭和が生きている」と感じる瞬間があるといいます。
この記録がある限り、たとえ店が閉じても、その記憶は生き続けるのです。

喫茶を愛する人に伝えたい“静けさの価値”

難波さんの活動は、昭和を懐かしむだけのものではありません。
むしろ、今を生きる私たちが「心を休める時間」を取り戻すための提案でもあります。

彼女が言う“喫茶時間”とは、スマホも時間も忘れて自分に戻る時間。
忙しさに追われていると、静かな時間ほど贅沢に感じられます。
しかし、喫茶店の中ではそれが当たり前にある。
ゆっくりとカップを手に取り、窓の外を眺める――それだけで、気持ちが整っていくのです。

「純喫茶は、誰にでも開かれていて、誰も急かさない空間。だから好きなんです」と難波さんは語ります。
その言葉どおり、喫茶店は“心のバランスを取り戻す場所”として、今も多くの人を惹きつけています。

まとめ

この記事のポイントは以下の通りです。
難波里奈さんは、2,000軒以上の純喫茶を訪れた「喫茶文化の語り手」。
・喫茶店の魅力は、入る前から始まる――街並み、看板、空気を味わうことが重要。
・純喫茶は、昭和の文化遺産であり、現代に残る“静けさの美学”を体現している。

純喫茶とは、単なるレトロ空間ではなく、人の想いと時間が溶け合う場所。
コーヒーを飲みながら、ゆっくりと“自分の心の速度”を取り戻す時間を過ごしてみてください。

※この記事は番組および関連資料をもとに構成していますが、内容が放送と異なる場合があります。


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