A判とB判、なぜ2種類あるの?
普段、私たちが手にするプリントやノート、雑誌。そこには「A4」「B5」といった文字が必ず印字されています。でも、なぜAとBという2つのサイズ体系があるのでしょう?
「A4はよく聞くけど、B判って何?」「なぜ日本では両方使っているの?」と疑問に思ったことはありませんか?
この記事では、チコちゃんに叱られる!(2025年11月8日放送)で紹介予定のテーマ「A判とB判、なぜ2種類あるの?」を、放送前の段階でわかりやすく解説します。
放送後には、番組で登場する専門家のコメントや、チコちゃんの名ツッコミ部分を追記予定です。
【有吉のお金発見 突撃!カネオくん】静音ボールペンから金属鉛筆まで!最新文房具のヒミツを大解剖|1月18日放送
A判の誕生 科学から生まれた「無駄のないサイズ」
A判は、19世紀末のドイツで考え出された規格がもとになっています。発案したのはドイツの物理学者 ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク。
彼が提唱したのは、「縦と横の比を√2(ルート2)対1にすると、半分に切っても同じ形になる」という理論でした。
この考えは1922年に DIN 476(ドイツ工業規格) として採用され、その後、国際標準 ISO 216 に発展しました。
A判の基本は A0サイズ=面積1平方メートル(841×1189mm)。
ここからA1、A2…と数字が増えるごとに面積が半分になります。
A4を半分に折るとA5、A3を2枚重ねるとA2になる——この「つながりやすさ」がA判の最大の特徴です。
だからこそ、コピー用紙や契約書、学校のプリントなど、統一性が求められるビジネス・教育現場で広く使われているのです。
さらにこの比率は印刷でも便利です。たとえばA3サイズのチラシをA4に縮小コピーしても、余白が出ずにきれいに収まります。こうした“合理的な寸法設計”こそ、A判が世界中で採用された理由なのです。
B判の誕生 日本の紙文化が生んだもうひとつの基準
一方、B判のルーツはドイツとは別の場所、日本の紙文化にあります。
B判も国際規格(ISO Bシリーズ)として存在しますが、日本で使われているのは JIS(日本工業規格)のB判 で、これは少し異なる独自のもの。
江戸時代、日本では「美濃紙」「奉書紙」など、手すき和紙が地域ごとに発展していました。
明治以降、西洋の印刷技術が導入される中で、日本の出版業界は「和紙の伝統的な寸法」と「印刷に便利な洋紙の比率」とを組み合わせた新しいサイズを模索します。
その結果生まれたのがB判でした。
B判の基準は、A判よりひとまわり大きい B0=1030×1456mm。
A判との違いはおよそ1.2倍の面積差で、この“ちょっと大きい”感じが日本の本づくりや印刷にちょうどよかったのです。
たとえば、B5サイズのノートや教科書が多いのは、文字の大きさや行間のバランスが読みやすく、日本人の手にも馴染む大きさだからです。
出版の世界では、文庫本がA6、専門書や雑誌がB5・B4といった具合に、読みやすさや印刷コストを考えてB判が長年重宝されてきました。
特に、雑誌やパンフレットでは「A判では小さいけれどA3では大きすぎる」というときに、B判が絶妙なサイズ感を提供してくれるのです。
日本でA判とB判が共存している理由
現在の日本では、ビジネスや行政文書はA4中心、学校教材や出版物はB判中心というように、用途によって使い分けられています。
これは単なる慣習ではなく、印刷・加工・読みやすさなどの“実用的な理由”があるのです。
たとえばA判は国際的な標準なので、コピー機・スキャナ・封筒などのサイズも世界共通。
一方、B判は印刷時のトリミング(断ちしろ)や製本を考慮すると、紙の端まで美しく印刷しやすいというメリットがあります。
また、出版業界ではB判の“ページあたりの文字数”や“余白の美しさ”が重視され、結果的に日本独自の美意識とも結びつきました。
そのため、A判とB判のどちらかを廃止するという動きはなく、「共存こそ最適」というのが今の日本のスタイルです。
サイズの違いを見てみよう
代表的なA判とB判のサイズを比べると、次のようになります。
| 種類 | 用紙名 | サイズ(mm) | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| A0 | 841×1189 | ポスター・設計図 | |
| A4 | 210×297 | 書類・コピー用紙 | |
| B0 | 1030×1456 | 大型ポスター・展示物 | |
| B5 | 182×257 | ノート・教科書・雑誌 |
数字が大きくなるほど、サイズは半分ずつになります。
つまり、A3の半分がA4、A4の半分がA5というように、どのサイズもきれいに折り重ねることができるのです。
まとめ
A判とB判は、見た目こそ似ていますが、その背景はまったく異なります。
A判は 「世界共通で無駄のない構造」、B判は 「日本の出版文化から育った実用的な設計」。
この2つの思想が共存していることこそ、日本の紙文化の豊かさを象徴しています。
この記事のポイントをまとめると――
・A判はドイツ発の科学的理論に基づいた国際規格
・B判は日本の和紙文化と印刷業界の工夫から生まれた独自規格
・日本では用途に応じて2つの規格を使い分けている
紙のサイズという一見シンプルなテーマにも、世界と日本の文化が交差する歴史が隠れています。
次にA4の書類やB5のノートを手に取ったとき、その背景にある物語を少し思い出してみてください。
それだけで、紙という身近な存在が、ぐっと奥深く感じられるはずです。
参考・出典リンク
・ ウィキペディア(Wikipedia):「ISO 216 – 国際紙サイズ規格」
https://ja.wikipedia.org/wiki/ISO_216
・ a1-size.com:「A判・B判の歴史と由来」
https://www.a1-size.com/history
・ タノメール(TANOMAIL):「A判・B判の違いとは?日本だけの紙サイズ“B判”誕生の背景」
https://www.tanomail.com/dyn/sp/bf/tanokun-room/trivia/index23.html
・ 株式会社新潟フレキソ:「B判とは?日本だけで使われる謎の紙サイズ、その理由を徹底解説」
https://n-flexo.co.jp/blog/b判とは?日本だけで使われる謎の紙サイズ
・ 株式会社正文舎:「紙のサイズ一覧(A判・B判・四六判)」
https://www.syoubunsya.co.jp/business/print/paper
・ Phomemo公式サイト:「紙のサイズの違いと選び方」
https://phomemo.com/no-au/blogs/knowledge/paper-size-explained
・ Adobe Creative Cloud:「紙サイズのガイドと用途」
https://www.adobe.com/uk/creativecloud/design/discover/guide-paper-sizes.html
・ Engineering Toolbox:「Drawing Paper Sizes – ISO A and B Series」
https://www.engineeringtoolbox.com/drawings-paper-sheets-sizes-d_349.html
・ Metasage Alliance:「A判B判のサイズ・寸法・由来まとめ」
https://metasagealliance.com
・ yubun.co.jp(有文社):「印刷に使われる紙サイズとA判・B判の違い」
https://www.yubun.co.jp/
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