緊急地震速報の音には“芸術家の意図”があった!
突然スマホから流れる、あの緊急地震速報の音。聞いただけで一瞬にして体が固まる、あの強烈なサウンド。
でも実は、あの音には“恐怖を与えるため”ではなく、「命を守るための芸術的な意図」が込められていることをご存じですか?
「なぜあんな不安を感じるのに、ちゃんと聞き取れるの?」
「どうしてあの音だけ、耳に残るんだろう?」
この記事では、チコちゃんに叱られる!で紹介される『緊急地震速報チャイム』の知られざる音づくりの裏側を、科学・芸術・心理の3つの視点から分かりやすく解説します。放送後には番組内の実験や専門家のコメントを追記します。
音の背景にあった“人間の心理”への徹底した配慮
緊急地震速報の音を設計したのは、北海道大学名誉教授・伊福部達(いふくべ・とおる)氏。
福祉工学と音響工学を専門とし、日常生活の中で「すべての人が聞き取れる音」を追求してきた研究者です。
開発の目的は、ただ“怖い音”を作ることではなく、「恐怖でパニックにさせずに、即座に行動を促す音」を目指すことでした。
そこで掲げられた条件が以下の通りです。
・一瞬で「緊急だ」と分かること
・過度に恐怖や不安を与えないこと
・騒音の中でも聞こえること
・軽度の難聴者にも認識できること
・ほかのチャイムや音楽に似ていないこと
つまり、あの音は「科学的にも芸術的にも、人の命を守るために計算された音」。
この設計思想こそ、伊福部氏が長年取り組んできた“人に寄り添う音づくり”の集大成といえます。
“ゴジラ”の作曲家が生んだ音楽のDNAが息づく
実は、緊急地震速報チャイムにはもう一人の芸術家が関わっています。
それが、映画『ゴジラ』の音楽を手がけた作曲家・伊福部昭(いふくべ・あきら)氏。
達氏の叔父でもあるこの偉大な作曲家の交響曲『シンフォニア・タプカーラ』第3楽章の一節が、チャイムの構成に生かされています。
『シンフォニア・タプカーラ』の冒頭部分には、“テンション・ノート”と呼ばれる不安定な和音が使われています。
これは、人間の脳に「何かが起こる」という緊張感を瞬時に伝える効果がある音構成です。
さらに、
・和音からアルペジオ(分散和音)へ
・アルペジオからトリル(小刻みな反復音)へ
という音の流れは、聴く人に“注意を引きつけながらも落ち着かない感覚”を与えます。
つまり、あのチャイムは「音楽理論」と「心理反応」の絶妙なバランスでできているのです。
聴く人の意識を瞬時に切り替える、まさに“緊急のための作曲”といえます。
科学と福祉の両立を目指した音の実験
伊福部達氏のチームは、芸術的な発想だけでは終わりませんでした。
研究室では、実際に数百人規模の被験者実験を行い、「どの音が最も効果的に人を動かすか」を徹底的に検証しました。
騒音環境や高齢者施設など、さまざまな条件下でテストを繰り返した結果、次の組み合わせが最も効果的と判明しました。
・音程構成:上昇型アルペジオ(上に向かう音の流れ)
・繰り返し:2回
・音色:ピアノ音と電子音をミックス
これにより、「聞き取りやすく」「恐怖よりも冷静な緊張感」を与えるバランスが完成しました。
また、既存の警報音やチャイムに似せないよう、音の間隔・響き方・残響の長さまで細かく調整されています。
“似ていない音”こそが、真に伝わる音である――それが伊福部氏の哲学でした。
「怖い」と感じるのは、人間の自然な反応
あの音を聞くと「怖い」「胸がざわつく」と感じる人は多いはずです。
実際、脳科学的にもその反応は正しいのです。
・不協和音や急上昇する音は、「異常」を知らせる信号として人間の脳が敏感に反応する
・アルペジオが速く上がる構成は、心拍数を上げ、注意を促す効果がある
・地震の記憶と結びついて、「あの音=恐怖」という条件反射が生まれている
つまり、“怖い”と感じるのではなく、体が“危険を察知している”ということ。
それこそがこの音の使命であり、制作陣が狙った心理的トリガーなのです。
芸術と命をつなぐ、“デザインされた音”
緊急地震速報のチャイムは、わずか数秒の中に、音楽・心理・人間工学が緻密に詰め込まれています。
そこには「音で命を守る」という芸術家の願いと、「恐怖ではなく冷静を促す」という科学者の使命が共存しているのです。
伊福部達氏はこう語っています。
「音は、恐怖をあおるものではなく、人を行動に導くものだ」
この言葉こそ、あの音に宿る“芸術家の意図”のすべてを物語っています。
日常で一瞬だけ流れるあの音を、もう一度意識して聴いてみてください。
きっとその奥に、人の心と命を結ぶ音の芸術が聞こえてくるはずです。
まとめ:この記事のポイント
・緊急地震速報チャイムは、伊福部達 名誉教授による“命を守る音のデザイン”
・音楽構成には、作曲家・伊福部昭の『シンフォニア・タプカーラ』が取り入れられている
・不協和音や上昇アルペジオには、「恐怖ではなく冷静な緊張感」を生む設計意図がある
・実験を通じて、「誰でも聞こえる・理解できる音」を科学的に検証
・“怖い音”ではなく、“命を守るための美しい音”として作られている
放送後には、チコちゃんが実際に音の秘密をどのように明かすのか、番組内容を追記します。
音の裏側に潜む“人と芸術の物語”を、どうぞお楽しみに。
参考・出典リンク
・北海道大学 名誉教授・伊福部達:「機能的サウンドデザイン ~緊急地震速報のアラートはこうして作られた~」
https://cedil.cesa.or.jp/cedil_sessions/view/1022
・SPICE(スパイス):「芸術家の意図が込められた“あの音”とは?」
https://spice.eplus.jp/
・日本オーディオ協会:「緊急地震速報チャイム制作報告書」
https://www.jas-audio.or.jp/journal-pdf/2013/03/201303_004-010.pdf
・エキサイトニュース:「『ゴジラ』の音楽から生まれた防災の音」
https://www.excite.co.jp/
・アニメ!アニメ!:「不協和音が生む“聴覚の緊張感”」
https://animeanime.jp/
・ITmedia モバイル:「緊急地震速報の音はなぜ怖い?心理と記憶の関係」
https://www.itmedia.co.jp/mobile/
・地震保険.jp:「“あの音”が怖い理由とその正体」
https://www.jihoken.jp/mado/cat1/1558/
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