記事内には、広告が含まれています。

NHK【クローズアップ現代】死因を書き換え!? 徹底追跡 みちのく記念病院――“みとり医”と“幽霊医師”が揺るがす医療の信頼|2025年10月8日★

未分類

死因を書き換え!?“みちのく記念病院事件”が問う、医療と倫理の境界線

「最期を穏やかに迎えた」と聞かされていた家族の死因が、実は“書き換えられていた”としたら——。
今年2月、青森県八戸市のみちのく記念病院で起きた事件は、そんな衝撃的な現実を日本中に突きつけました。
病院内で発生した患者間の暴行事件。それを隠すため、死亡診断書に「肺炎」と虚偽の死因を記入したとして、元院長の石山隆被告と、弟の医師・石山哲被告が逮捕されました。

この事件の発覚は、単なる一医療機関の不祥事ではありません。
そこには、医療の倫理崩壊地方医療の疲弊、そして命の記録が軽視される構造的問題が潜んでいるのです。
この記事では、報道と医療社会の視点から、みちのく記念病院事件が突きつけた「医療と社会の歪み」を読み解いていきます。

【NHKスペシャル】医療限界社会とは?病院の現場から届いた“命の警告”|2025年6月1日放送

みちのく記念病院とは――地域医療の“最後の砦”だった場所

みちのく記念病院は、青森県八戸市の住宅街に位置する精神科病院です。
開院以来、認知症患者や重度の精神障がいを持つ高齢者など、他の病院で受け入れが難しい人々を積極的に受け入れてきました。
「どんな患者も見放さない」という方針は、地域の医療現場で高く評価されてきた一方で、慢性的な人手不足高齢化する医師陣が現場を追い詰めていました。

事件のあった病棟は、周囲の住宅街に囲まれながらも外部からの視線が届きにくく、「ブラックボックス化した病棟」と呼ばれていたといいます。
患者は長期入院が多く、看護師や介護士の負担は極限状態。医師が十分に患者を診ることができず、診断書の作成や記録業務が形式化していたという指摘もあります。

事件の発端――“病死”の裏に隠された暴力

2025年2月、病院内で患者同士のトラブルが発生。
一人の男性患者が、同室の患者から歯ブラシの柄で顔面を突かれるなどの暴行を受け、数日後に死亡しました。
ところが病院側は、当初その事実を警察に報告せず、死亡診断書に「肺炎」と記載。
つまり、外因による死亡を「自然死」として処理しようとしたのです。

後に捜査によって暴行の痕跡が発覚し、死因の書き換え疑惑が浮上。
この診断書に署名していた医師は、すでに重度の認知症を患い、まともに会話もできない状態だったことが明らかになりました。
実際には、弟の医師が代筆していたとみられています。

「幽霊医師」と「みとり医」――現場が抱える倫理の空洞

この事件の核心には、「実在しない医師による診断書作成」という深刻な問題があります。
八戸市の行政調査では、勤務実態のない“幽霊医師”の名義で死亡診断書が出されていたことが複数確認されました。
現場の職員たちは「長年の慣例だった」「名義を借りるしかなかった」と話しています。

特に終末期患者を多く抱える施設では、“みとり医”と呼ばれる名義医師が存在するケースもあります。
この医師は実際に病棟を回診することはほとんどなく、形式上の署名を担当するだけ。
みちのく記念病院では、その“慣例”が制度の穴をすり抜ける不正の温床
となっていたのです。

こうした構造の背景には、「医師不足」「業務過多」「報告よりも日常優先」といった現場の実情があります。
つまり、今回の事件は個人の不正ではなく、制度疲労の結果でもあるのです。

元院長の供述――「病院を守りたかった」

公判での供述によると、元院長・石山隆被告は「警察沙汰にしたくなかった」「病院を守りたかった」と語りました。
しかしその判断が、結果的に患者の尊厳を踏みにじる行為となりました。
命の最期を記録する死亡診断書は、単なる医療文書ではありません。
それは、患者と家族の人生の証明であり、社会が“命の終わり”をどのように受け止めるかを映す鏡なのです。

「死因を書き換える」という行為は、医学の信頼を根底から崩します。
そしてそれは、現場の疲弊だけでなく、医療倫理教育の欠如ガバナンスの欠落といった“組織の病”の表れでもあります。

行政と司法の対応――再発防止へ向けた長い道のり

事件を受け、青森県は2026年2月までに再発防止策を提出するよう病院に命令しました。
今後の調査では、
・死亡診断書の作成体制
・勤務医師の実態報告
・院内倫理委員会の再整備
といった点が焦点となります。

さらに、全国的にも死亡診断書の信頼性を見直す動きが広がりつつあります。
厚生労働省は、診断書作成時の電子署名義務化複数チェック体制の導入を検討中です。
しかし、制度を整えるだけでは再発は防げません。
「書類を守る」ためではなく、「命を正しく伝える」ために何をすべきか——
そこにこそ、本当の課題があります。

地方医療の“見えないリスク”とどう向き合うか

今回の事件は、地方医療の限界を露呈しました。
都市部では複数の専門医が分担できる診療体制が整っていますが、地方では医師1人が過労状態で何十人もの患者を抱えることも珍しくありません。
その中で起こる「手続きの省略」や「名義の流用」は、もはや“悪意ある不正”ではなく、“制度疲労による妥協”になっているのが現実です。

けれども、それを放置すれば、今回のように命の記録そのものが歪められる
「医療倫理」とは、立派な理念ではなく、現場の一つ一つの判断を守るための最低限のラインなのです。

今後の放送で注目されるポイント

10月8日放送の『クローズアップ現代』では、

  • 事件当時の院内の状況を知る元職員の証言

  • “みとり医”の名義が使われた経緯

  • 遺族が語る「真実を知りたい」という思い

  • 専門家による制度的課題の分析
    などが詳しく放送される予定です。

放送後には、新たな証言や行政対応を踏まえた追記を行い、医療倫理の再構築に向けた提言をまとめます。

まとめ:命をどう見届け、どう記録するのか

この記事のポイントは次の通りです。

  1. みちのく記念病院では、殺人事件を「肺炎」と偽装した疑いが浮上している。

  2. 名義利用や診断書の虚偽記載など、医療倫理と法の境界を越えた行為が明らかになった。

  3. 背景には、地方医療の人手不足・制度疲労・監督不在といった構造的要因がある。

死を正しく記録することは、生を尊重することでもあります。
一枚の診断書が社会に突きつけたのは、“命の重さをどう扱うか”という問いです。
この事件は、医療現場だけでなく、私たち一人ひとりの「命に向き合う姿勢」を映す鏡でもあります。


出典・参考:
・NHK総合『クローズアップ現代 死因を書き換え!?みちのく記念病院』(2025年10月8日放送予定)
・TBS NEWS DIG(青森テレビ)「みちのく記念病院 殺人事件を“病死”に偽装か」
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/atv/1732201)
・TBS NEWS DIG「死亡診断書を書いたのは認知症の医師だった」
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/atv/2188284)
・TBS NEWS DIG「元院長『病院を守りたかった』と供述」
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/atv/2190798)


気になるNHKをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました