紙がぬれるとゴワゴワするのはなぜ?
飲み物をこぼしたり、雨の日にうっかりノートを濡らしてしまった経験、きっと誰にでもありますよね。乾かしてみたら、ページが波打ってゴワゴワ、ザラザラ…。せっかくの大事なノートが台無しになってしまってガッカリ——。
今回のNHK総合『チコちゃんに叱られる!』(2025年10月17日放送)では、そんな身近な“紙あるある”の理由をテーマにしました。おなじみの岡村隆史さんが「繊維が水を抱えたままだから」と答えるも、すぐさまチコちゃんから「ボーっと生きてんじゃねーよ!」の一喝。スタジオは笑いに包まれました。
そして明かされた正解は、「紙は引っ張って作るけど、水にぬれたあとは引っ張られないまま乾くから」。一見シンプルに聞こえますが、実はこの中に“紙の誕生の秘密”と“繊維の力”が隠されていたのです。
紙の正体は“繊維のネットワーク”
紙の原料は、木材や竹などに含まれる「セルロース繊維」。この繊維は髪の毛よりも細く、肉眼では見えません。紙はこの繊維を水に溶かし、薄く伸ばしてシート状に固めたものです。
番組に登場した製紙メーカー研究員・阿部一行さんによると、紙はただ乾かすだけではなく、製造の過程で繊維を一定方向に引っ張りながら乾かしているそうです。この“引っ張り”の工程が、紙のなめらかさや強度を作るカギ。
ローラーで繊維を平らに押しのばすことで、繊維同士がピッタリ重なり合い、つるつるとした手触りの紙が完成します。つまり、紙は「ピンと張った繊維のシート」であり、そのバランスによって美しい表面が保たれているのです。
水で“ゆるむ”と紙は元の形を失う
では、なぜ濡れるとゴワゴワになるのでしょうか?
その原因は、紙の“張り”が失われることにあります。紙が水を吸うと、繊維の間に入り込んだ水分が繊維を膨らませ、もとの張力が一気にゆるんでしまいます。さらに、繊維同士の結びつきを保っていた「水素結合」も崩れ、紙全体がふにゃっと柔らかくなるのです。
乾くときにこの繊維がバラバラな方向で固まり、デコボコしたまま固定されてしまうため、あのゴワゴワした手触りになるというわけです。
紙の表面に見える「波打ち」は、繊維が不均一に収縮した証拠。水のしみ込んだ部分ほど強く変形するため、乾いたあとも完全には元に戻りません。つまり、紙は一度“ゆるんだら最後”——繊維の緊張が戻らない構造になっているのです。
ドライヤーNG!冷凍庫で“紙のシワ”を復活させる裏ワザ
とはいえ、あきらめるのはまだ早い!番組では、静岡県富士市の製紙技術者による「濡れたノートを元に戻す裏ワザ」が紹介されました。ポイントは、乾燥ではなく“冷凍”です。
その手順は次の通り。
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濡れたノートをフリーザーバッグに入れ、封を閉めずに立てて冷凍庫へ。
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約24時間そのまま冷やす。
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取り出したら軽く振って霜を落とす。
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ペーパータオルで挟み、上に辞書など重い本を乗せて1〜2日間置く。
この工程で、紙の中の水分が“氷の結晶”としてゆっくり抜けていき、繊維を痛めずに乾かすことができます。急激な温風で乾かすと、繊維が再び縮んでしまい、さらにゴワつきが悪化するため、ドライヤーは絶対NG。
冷凍という意外な方法は、製紙のプロが紙の性質を熟知しているからこそ生まれた知恵。チコちゃんも思わず「なるほど〜!」と感心していました。
富士市が生んだ“紙再生の知恵”
この裏ワザを紹介した静岡県富士市は、日本屈指の「製紙のまち」。富士山の湧き水と清らかな気候が、古くから良質な紙づくりを支えてきました。
この地域では、わずかな湿度や温度の変化でも紙の性質が変わるため、職人たちは日々繊細な調整を重ねています。今回の冷凍テクニックも、そんな“現場の経験”から生まれたもの。まさに、科学と職人技が融合した知恵なのです。
さらに、富士市では環境に優しい「再生紙」や「植物由来の紙素材」の開発も進行中。紙の技術は、今も進化し続けています。番組を通して、紙の奥深さと、それを支える日本の技術力を感じた人も多かったのではないでしょうか。
紙のゴワゴワは“自然の記憶”
興味深いのは、紙が水を含んで形を変えることが“欠点”ではなく、自然の素材ゆえの特徴だということ。
木の繊維から生まれた紙は、湿度や温度を敏感に感じ取る生きた素材。だからこそ、季節によって微妙に反応し、手触りや質感が変わります。これをうまく利用したのが、障子紙や和紙工芸などの伝統文化。紙が持つ“変化の味わい”を生かした日本人の感性が、そこに息づいています。
まとめ
この記事のポイントを整理します。
・紙は「繊維を引っ張りながら平らにする」ことでなめらかに作られている。
・水を含むと繊維の張りがゆるみ、デコボコのまま固まるためゴワゴワになる。
・ドライヤーで乾かすとさらに悪化!冷凍庫でゆっくり乾かすのが効果的。
・冷凍テクニックは静岡県富士市の製紙技術者が編み出した。
・紙の変化は“自然の記憶”であり、日本人の生活文化に根づく素材の個性。
私たちの身の回りにある一枚の紙。その裏には、科学、職人技、そして自然とのつながりが詰まっています。もしノートを濡らしてしまったら、慌てずに冷凍庫へ。千年続く“紙の知恵”が、あなたのページをそっと蘇らせてくれるはずです。
出典:NHK総合『チコちゃんに叱られる!』2025年10月17日放送
https://www.nhk.jp/p/chicochan/
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