もう一度Oasisが“刺さる”理由とは?自由とリアリティを生きた兄弟の物語
90年代を代表するロックバンドOasis(オアシス)が再結成。解散から16年を経て、2025年7月にイギリスで行われた復活ライブには、当時を知らない若い世代のファンまでが殺到しました。チケットが取れず会場の外に人だかりができるほどの熱気。なぜ今、彼らの音楽が再び心に響いているのでしょうか?この記事では、番組『クローズアップ現代』(NHK総合 2025年10月27日放送)で取り上げられた内容をもとに、その理由をじっくり掘り下げます。
反骨と自由を生きた兄弟 その生きざまが若者の心を揺さぶる
Oasisは1990年代、労働者階級の街イギリス・マンチェスターから登場しました。ノエル・ギャラガーとリアム・ギャラガーの兄弟が中心となり、90年代ロックの象徴として世界を席巻。彼らの代名詞は、歯に衣着せぬ発言と、常識に縛られない自由な態度でした。
兄弟喧嘩もステージ上で堂々と繰り広げ、マスコミを賑わせましたが、その「飾らなさ」が逆に多くのファンを惹きつけたのです。
番組に登場した音楽ジャーナリストのパオロ氏はこう分析します。
「Oasisの人気は、兄弟の生きざまそのもの。彼らは成功を追うのではなく、自分たちの信じる“リアル”を貫き通した。だからこそ、どんな時代でも共感される。」
その姿勢は、『リヴ・フォーエヴァー』や『ホワットエヴァー』といった代表曲にも表れています。どれも「今を生きる」「自分の道を貫く」といった強い意志が込められた歌詞。SNSやAIが当たり前になった2025年の今、彼らのように“まっすぐで不器用な人間臭さ”こそ、多くの若者に刺さっているのです。
サカナクション山口一郎が語る “Oasisのリアリティは時代を超える”
スタジオには、Oasisの音楽に深く影響を受けた山口一郎(サカナクション)がゲスト出演しました。山口は、自身の音楽活動にも通じる視点から、Oasisが若い世代に支持される理由を語りました。
「今の時代は、SNSでどんな情報も一瞬で手に入る。けれどその分、“本物のリアリティ”を感じることが難しくなっている。Oasisが活動していたのはインターネット黎明期で、音や言葉の奥に“生きた空気”があった。その背景を持つ彼らの存在は、現代の若者にとって“信頼できるリアル”なんです。」
山口が特に衝撃を受けた曲は『ワンダーウォール』。1995年に発表されたこの曲は、恋愛や友情の枠を超えて「あなたが僕を救う唯一の存在」というメッセージを持つ、Oasisの代表作です。
山口は「この曲には、救いと希望の間を漂うようなリアルな感情がある。飾らない誠実さが、いつの時代にも通じる」と語り、心の中に“軸”をもたらしてくれた存在としてOasisを挙げました。
さらに彼は、「今この瞬間だけ評価される音楽ではなく、10年後・20年後にも語り継がれる音を残したい」と語り、Oasisが示した“永続するリアリティ”への憧れをにじませました。
テロの悲劇を乗り越えた街に響いた『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』
Oasisの音楽が“ただのロック”ではない理由は、彼らの曲が社会や人々の感情と結びついてきたことにもあります。
2017年、マンチェスターで開催されたコンサート会場近くで自爆テロ事件が発生。犠牲者は22人にのぼりました。事件直後、追悼集会に集まった人々が自然と口ずさみ始めたのが『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』でした。
「怒りで過去を振り返るな」という歌詞が、絶望に沈む街に希望の光をもたらしたのです。誰に言われたわけでもなく、何千人もの声がひとつになり、涙を流しながらこの曲を歌い続けました。
Oasisの音楽は、単に“聴くもの”ではなく“支え合う力”となってきた。そこに、彼らが時代を超えて愛され続ける理由があるのです。
写真が語る“離れてもつながる”兄弟の絆
Oasisの歴史を語る上で欠かせないのが、写真家ジル・ファーマノフスキーの存在です。彼女は長年にわたりOasisを撮り続け、ステージ裏やツアー先での素顔を記録してきました。
ジルは、今回の再結成ライブでも撮影を担当。彼女が選んだ“象徴的な一枚”は、顔を反対に向けながらも、どこかで繋がっている兄弟の姿でした。
ノエルとリアム――表面的にはぶつかり合っても、音楽という共通の言語で結ばれている。ジルはその写真について、「二人の間には言葉以上の絆がある。それがこの写真には写っている」と語りました。
彼らの確執は、長年にわたってメディアで騒がれましたが、結局のところ兄弟の間には“音楽がある限り切れない糸”があるのです。今回の再結成は、その“沈黙の絆”が再び結びついた瞬間でもありました。
Oasisの再結成が示す“本物の音楽”の力
Oasisの再結成は、ただの懐古イベントではありません。それは、“本物”がどんな時代にも生き続けるという証明です。
現代の音楽シーンでは、AIが曲を作り、SNSがトレンドを決める時代。しかし、その中でOasisの音楽が再び脚光を浴びるのは、人間らしい感情・怒り・希望・不安――そのすべてを包み込む“生のエネルギー”があるから。
Oasisは言葉や旋律を通じて「立ち上がる勇気」を歌ってきました。
『ワンダーウォール』のように支えてくれる誰かを信じ、『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』のように過去を抱きしめながら前に進む――それは現代の私たちにこそ必要なメッセージではないでしょうか。
まとめ
この記事のポイントは3つです。
・Oasisの人気は、兄弟の生きざまと正直さが音楽に表れていることにある。
・『ワンダーウォール』『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』などの名曲は、時代や世代を超えて“希望の歌”として響き続けている。
・デジタル時代においても、Oasisのリアリティは“本物を求める若者”に刺さり続けている。
ノエルとリアムが再び肩を並べたこの再結成ライブは、単なる音楽イベントではなく、「リアルに生きることの意味」を教えてくれる瞬間でした。
Oasisの音楽は、これからも私たちの心に“生きる力”を与え続けていくでしょう。
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