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NHK【未来予測反省会】散髪ロボットが失敗した真の理由!理美容業界の自動化の歴史とAIヘアスタイル提案アプリの進化|2025年11月4日

未来予測反省会

ロボットに髪を切られる未来、来ると思ってた?散髪ロボットの現在地を探る

美容室で髪を切るたび、「これ、ロボットがやってくれたら早いのに」と思ったことはありませんか?
機械が髪をカットする未来――そんな夢を描いたのは、なんと100年以上も前のこと。1896年にアメリカの漫画家ユージン・ジム・ジマーマンが描いた未来予想図には、「ボタンを押すだけで髪を切ってくれる機械」が登場していました。
それから1世紀以上たった2025年。AIが文章を書き、車が自動で走る時代になっても、髪を切るのはやっぱり人間。
今回の『未来予測反省会』では、「散髪ロボットで理美容師がいなくなる」という未来予測がなぜ実現しなかったのかを、長谷川忍(シソンヌ)と影山優佳が専門家とともに掘り下げました。この記事では、その内容をわかりやすくまとめます。

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100年以上前の未来予想「ボタンひとつで髪が切れる」

番組がまず紹介したのは、1896年にアメリカの漫画家ユージン・ジム・ジマーマンが描いた風刺画「新しい理髪店」。
そこには、椅子に座った客がボタンを押すと、機械のアームが髪を整えていく姿が描かれていました。
当時は第二次産業革命の真っただ中。電気や石油の力で自動化技術が急速に発展し、アメリカはイギリスを抜いて世界最大の工業国となった時代です。

自動アイロン、パイ生地製造機、人間洗濯機――ありとあらゆる「自動化」が次々と登場し、人々は“ボタンひとつで何でもできる”未来を夢見ていました。
理髪もその一つと考えられ、「機械が髪を切る」という構想はごく自然な未来予想だったのです。

しかし、2025年の現代を見渡しても、散髪ロボットが一般的に利用されている姿はどこにもない
人の髪を整えるのは、今も昔も“人の手”なのです。

なぜ理美容師の仕事は自動化できなかったのか?

ここで番組が注目したのが、「理美容師の仕事は自動化できないのでは?」という問い。
確かに、AIが文章を書き、ロボットが手術を行う時代になっても、髪を切る仕事は変わらず人間が担っています。

この理由を解くカギとして紹介されたのが、オックスフォード大学のマイケル・オズボーンによる論文『雇用の未来―仕事はコンピュータ化の影響を受けるのか?』。
この研究では、アメリカの47%の職業が自動化される可能性があると推計されていますが、その中で医師・教師・美容師など「人との関係性」が重視される仕事は、AIが代替しにくいとされています。

番組の専門家であり現役美容師でもある吉田牧人はこう話しました。
「お客さんは“髪型”を買いに来ているわけではなく、“自分が変わる時間”を求めて来ている。」
つまり、美容室という場所は“技術の場”であると同時に、“体験の場”なのです。

さらに、美容業界の研究者田中公子によると、ホットペッパービューティーアカデミーの調査では「美容師との会話」が再来店の最大要因のひとつとされており、「髪の悩みを相談する時間」「プロからのアドバイスをもらう時間」そのものが顧客満足度を高めているとのこと。
この“人間的コミュニケーション”こそが、自動化の壁なのです。

日本の美容室は今やコンビニの7倍もある

続いて登場したのが、理美容業界に詳しい鋏田チョキ美
彼女の調査によると、日本には現在理容室が約11万軒、美容室が27万軒、合計38万軒。これはコンビニの約7倍という驚きの数字です。

美容室の約8割は個人経営で、1席・1人から開業できるため、起業のハードルが低いのも理由の一つ。
近年増えているのはキュービーネットホールディングスのような「ヘアカット専門店」で、低価格・短時間というニーズをつかみ急拡大しました。
しかし同時に、ヘッドスパ・髪質改善・眉毛カットなど“カット+α”のメニューが流行し、価格よりも「付加価値」や「癒し」を求める人が増えています。

つまり、散髪ロボットが登場するどころか、「人の手による癒しの時間」にお金を払う人が増えているのです。

美容師という職業が人気であり続ける理由

厚生労働省理容師美容師試験研修センターのデータによると、美容師の国家試験合格者は毎年1.8万人前後を維持し、2024年度には57万9,768人が登録されています。
しかも美容師の4割以上が一度仕事を離れた経験がありながら、復職しているという事実も興味深い点。

Z世代の若者は「人の役に立ちたい」「共感したい」という価値観が強く、美容師という職業はまさにそのニーズに合致しています。
資格が“一生もの”であり、結婚や出産後も復帰できるのも大きな魅力。
このような背景が、AIや自動化の波の中でも美容師という仕事を支えているのです。

理美容業界でも自動化は進んでいた!

とはいえ、理美容の世界にも“自動化の波”は確実に訪れています。
1935年には電気パーマが大流行。髪を熱で巻き上げる機械が登場し、美容業界に革命をもたらしました。
その後、1960年代には熱を使わないコールドパーマが主流となり、1975年には自動洗髪機が発売。現在ではなんと7代目モデルまで進化しています。

自動洗髪機は髪染め専門店などでも活躍しており、シニア美容師の復職支援にもつながっています。
さらに、ヘアカラー薬剤選定サポートアプリでは、髪の状態や希望の色を入力するとAIが自動でレシピを生成。
カラー剤の調合という専門的な作業も、テクノロジーの力でサポートされる時代になりました。

そして最新の自動化として紹介されたのが、「変形型チェア」
この椅子は、カットからシャンプーまでを一台でこなすもので、ボウルが自動的に動いてシャンプー位置へ変形。
一見ロボットのような未来型の美容装置です。

ただし、こうした技術が登場しても、完全な散髪ロボットはまだ存在していません。

散髪ロボットの現実的な壁とは

番組では、ある海外企業が開発した「自動ヘアカットロボット」も紹介されました。
これは20分以内に髪をカットし、髪くずを残さず清潔に仕上げることができるという驚異の機械で、200以上の国際デザイン賞を受賞した企業のプロトタイプ。
しかし、実用化には至っていません。

その理由を、大手理美容機器メーカーの高田知明がこう語ります。
「日本人の髪は直毛で硬く、カットした跡が非常に目立ちやすい。機械で自然に整えるのは非常に難しい。」
つまり、髪質の違いという繊細な要素が、自動化の最大のハードルになっているのです。

AIと人の共存が生み出す新しい美容の未来

一方で、AIを活用したヘアスタイル提案がすでに現実になりつつあります。
田中公子によると、20代男性の中では「AIが提案する似合う髪型」を参考に美容室を選ぶ人が増えているとのこと。
これはロボットが人の仕事を奪うのではなく、“人の仕事を引き立てる”形で技術が進化している証拠です。

高田知明も「将来的には美容師の手の動きをデータとして記録し、遠隔操作で施術できるようになるかもしれない」と語り、医療の遠隔手術のような“人+ロボット”の新しい関係を示唆しました。

つまり未来の理美容業界では、「機械が人を置き換える」のではなく、「人を支えるテクノロジー」として共存していく可能性が高いのです。

まとめ:散髪ロボットの夢が示した“人の価値”

この記事のポイントをまとめます。

・散髪ロボットの発想は100年以上前から存在し、技術の進歩とともに期待され続けてきた
・しかし、美容師の仕事は「髪を切る」以上に「人を癒やし、支える」要素が強く、自動化が難しい
・現在はAIや自動洗髪機など、技術が“人を支える形”で導入されつつある

結局のところ、散髪ロボットが“夢”で終わっているのは、技術の問題だけではありません。
人の手による温もり、会話、そして信頼――それが“髪を切る”という行為の本質だからです。

ロボットが登場しても、美容室という場所が人の笑顔と安心を生む空間である限り、理美容師は決していなくならないでしょう。
未来を見つめることは、同時に“人の価値”を再確認することでもあるのです。

(出典:NHK総合『未来予測反省会 散髪ロボットで理美容師がいなくなる』2025年11月4日放送)

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