更年期の不調をやわらげるコツ 運動と食事で体を整える方法
最近「肩がこる」「眠りが浅い」「少し動いただけで疲れる」と感じていませんか?
それは年齢のせいではなく、ホルモンの変化による体のサインかもしれません。
40代後半から50代にかけて、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少します。これにより、自律神経のバランスが乱れ、筋肉や関節の代謝が落ちることで、肩や首のこわばり、気分の揺れなどさまざまな不調が現れます。
この記事では、『きょうの健康』(2025年11月12日放送)で紹介された内容をもとに、肩こりや尿もれを改善する運動法と、体の中から整える食事法についてわかりやすく解説します。
Eテレ【きょうの健康】更年期障害治療&対策ガイド〜ホルモン補充療法・漢方・最新NK3受容体研究で探るあなたに合う薬|2025年11月11日
肩こり・肩関節のこわばりは「動かさないこと」が原因
更年期に多い「肩の重さ」「動かすと痛い」「腕が上がらない」という悩み。
その背景には、女性ホルモンの減少による筋肉・腱・関節の代謝低下が関係しています。
ホルモンが減ると筋肉の再生が遅れ、血行も悪くなり、老廃物がたまりやすくなります。
この状態で長時間同じ姿勢を続けると、肩周りの筋肉(僧帽筋や肩甲挙筋など)が緊張し、いわゆる「こり」が起こります。
また、筋力の低下は姿勢の歪みにもつながります。猫背になると、肩関節は内側に巻き込み、可動域が狭くなりがちです。
この悪循環を断ち切るには、「動かす」「温める」「伸ばす」の3つがポイントです。
肩をゆるめて姿勢を整える3つの簡単ストレッチ
① ドアウェイストレッチ(胸を開く)
ドアの枠に両腕をかけ、背筋を伸ばしたまま少し前に体を押し出します。
胸の筋肉が伸びて肩甲骨が自然に寄り、姿勢がスッと整います。デスクワークで前かがみになりやすい人におすすめ。
② クロスアームストレッチ(肩の外側をほぐす)
片腕を胸の前に横切らせ、反対の手で軽く引き寄せます。
肩の後ろ側の筋肉を伸ばし、凝りを和らげます。息を止めずにゆっくり呼吸をしながら10〜15秒キープ。
③ ペンデュラムスイング(関節の動きを改善)
片手を椅子や机に置いて支え、もう片方の腕をだらんと下げて前後・左右に小さく振ります。
重力を利用して関節をほぐすことで、動かす恐怖を減らす効果があります。
これらの運動は1日5分でOK。
痛みが強い場合は無理をせず、体を温めてから行いましょう。
温めるだけでも筋肉の緊張が緩み、血流が改善します。お風呂上がりがベストタイミングです。
骨盤底筋を鍛えて「尿もれ」対策
「くしゃみで漏れる」「階段でドキッとする」――そんな経験はありませんか?
更年期になると、エストロゲンの低下で骨盤底筋という“おしっこを支える筋肉”が衰えやすくなります。
骨盤底筋は、子宮・膀胱・腸を下から支えるハンモックのような筋肉。
ここがゆるむと、尿道の締める力が弱まり、「腹圧性尿失禁(お腹に力が入ったときに漏れる)」を引き起こします。
自宅でできる骨盤底筋トレーニング
・椅子に浅く座り、背筋をまっすぐにする。
・息を吐きながら「肛門と膣を同時にキュッと締め上げる」イメージで5秒キープ。
・その後、ゆっくり緩めて5秒休む。10回繰り返す。
慣れてきたら、立っているときや電車の中でもできます。
1日3セット続けることで、筋肉が目覚め、尿もれだけでなく、姿勢改善や下腹部の引き締めにもつながります。
また、ウォーキングやスクワットなど下半身を使う運動も、骨盤底筋の補強に役立ちます。
体の内側から整える「大豆と発酵のチカラ」
更年期の食事で注目されるのが、大豆イソフラボンから腸内細菌が作る「エクオール」という成分です。
エクオールは女性ホルモンに似た働きを持ち、ほてり・発汗・肩こり・気分の不安定さなどの症状をやわらげる効果が報告されています。
しかし、エクオールを作れるのは日本人女性の約50%。
「作れない体質」の人でも、発酵食品で腸内環境を整えることで改善の可能性があります。
エクオールを増やす食生活のコツ
・納豆、豆腐、豆乳、みそなど大豆製品を毎日1〜2回摂る。
・ヨーグルト、ぬか漬け、キムチなどの発酵食品を合わせてとる。
・食物繊維(野菜・海藻・きのこ類)を摂って腸を元気にする。
・作れない人は、医師の指導のもとでエクオールサプリ(例:大塚製薬『エクエル』)を活用。
研究では、1日10mgのS-エクオールを12週間摂取した女性で、肩・首のこり、冷え、ほてりが軽減したというデータもあります。
(出典:日本女性健康学会・PubMed)
更年期に摂りたい栄養素一覧
| 栄養素 | 役割 | 主な食品 |
|---|---|---|
| カルシウム | 骨を丈夫に保つ | 牛乳、小魚、チーズ |
| ビタミンD | カルシウム吸収を助ける | 鮭、卵、干ししいたけ |
| 鉄 | 貧血を防ぐ・疲労軽減 | 赤身肉、レバー、ほうれん草 |
| タンパク質 | 筋肉維持・代謝UP | 鶏むね肉、魚、豆類 |
| ビタミンE | 血流促進・抗酸化 | アーモンド、かぼちゃ、オリーブ油 |
特にカルシウムとビタミンDは、骨粗しょう症予防の基本ペア。
ホルモンの減少によって骨密度が低下しやすくなる時期だからこそ、毎日の食卓で意識して摂りたい栄養素です。
「運動+食事」で整う、心と体のバランス
肩を動かすことで筋肉がほぐれ、血流が良くなる。
大豆や発酵食品をとることで、ホルモンバランスが安定する。
この両輪を組み合わせることで、自律神経の乱れが整い、気持ちも前向きになります。
また、軽い運動を続けることで睡眠の質も改善されます。
夜の眠りが深くなると、体の修復が進み、翌朝の倦怠感が減少します。
更年期は「終わり」ではなく、「次のステージへの準備期間」。
無理をせず、自分のペースで体を整えていきましょう。
少しずつ生活が軽やかになり、「また頑張れる」という自信が戻ってきます。
まとめ
この記事のポイントは次の3つです。
・肩こりや尿もれは、毎日の簡単な運動で改善できる
・大豆や発酵食品を活用し、エクオールでホルモンのゆらぎをケア
・運動と食事の両方で、自律神経と筋肉のバランスを整える
体をいたわる時間が、未来の健康につながります。
“頑張らない健康法”を、今日から少しずつ取り入れてみましょう。
参考・出典リンク
・NHK『きょうの健康』公式サイト(https://www.nhk.jp/p/kenko/)
・横浜市立大学 医学部 産婦人科学教室(https://www.yokohama-cu.ac.jp/med/)
・日本産科婦人科学会「更年期障害と生活改善」
・PubMed「Equol and Menopausal Symptoms」
・東京ミッドタウンクリニック(https://www.tokyomidtown-mc.jp/)
・Harvard Health Publishing(https://www.health.harvard.edu/)
番組の内容と異なる場合があります。
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