あかあかと燃ゆる炭
炭は古くから日本人の生活に深く関わってきました。料理や茶道、暖房にいたるまで、多くの場面で炭が使われています。NHKの『美の壺』では、そんな炭の魅力に迫りました。今回は、うなぎを美味しく焼くための炭の使い方、日本が誇る紀州備長炭の秘密、茶道で欠かせない菊炭の役割、そして火鉢や囲炉裏のある暮らしについて詳しく紹介されました。昔ながらの炭の文化が今も息づく様子が伝えられ、改めてその奥深さに気づかされる内容でした。
うなぎを最高に美味しく焼き上げる炭の力
うなぎを炭火で焼くことで、表面はカリッと香ばしく、中はふんわりと柔らかく仕上がります。これは炭が放つ遠赤外線のおかげで、食材の内部まで均一に火が入るためです。特に、うなぎを焼く際に使われる炭の種類は重要で、火力が強く、長時間安定して燃えるものが求められます。
・炭火で焼くことで、皮はパリッとしながらも、身の中はしっとりと仕上がる
・炭の強い火力が、短時間でうなぎの旨みを閉じ込める
・じっくり焼くことで余分な脂が落ち、香ばしさが引き立つ
今回の放送では、こだわりの炭を使う老舗のうなぎ専門店が登場し、職人の技と炭の力が生み出す絶品のうなぎが紹介されました。どのような炭を選び、どう火加減を調整するのか、細かい技術が光る場面でした。
紀州備長炭—日本が誇る最高級の白炭
炭には大きく分けて「白炭」と「黒炭」の二種類があります。その中でも特に有名なのが、紀州備長炭です。江戸時代に備中屋長左衛門が完成させたこの炭は、約1000度という高温で焼き上げられることで、硬く締まり、長時間燃焼するのが特徴です。備長炭が優れている理由は以下の通りです。
・火持ちが良く、長時間安定して燃え続ける
・高温でしっかりと焼かれることで、不純物が少なく、煙や臭いが少ない
・強い遠赤外線を放出し、食材の中まで均等に火を入れる
この炭を作る職人たちは、一年中炭窯を管理し、最高の品質を維持するために努力を重ねています。365日炭を作り続けるというのは、並大抵のことではありません。炭焼きの工程は、温度管理が難しく、一瞬の判断ミスが炭の品質に大きく影響するのです。そのため、長年の経験と技術が必要とされる職人技が光る分野です。
茶道に欠かせない菊炭と炭手前
茶道では、炭は湯を沸かすために欠かせないものです。特に使用されるのが「菊炭」と呼ばれる黒炭で、その名の通り切り口が菊の花のような形をしているのが特徴です。この菊炭は、形が揃っていることで空気の流れを作りやすく、燃焼を安定させる役割を果たします。
・炭手前では、炭の配置が湯の温度を左右するため、細かい工夫が求められる
・空気の通り道を作り、適切な火力を保つために炭の組み方が重要
・茶道では、火の移ろいや炭の燃え方も茶の時間の一部として楽しむ
今回の放送では、裏千家の茶道家が実際に炭手前を披露し、どのように炭を組み、火を扱うかが詳しく紹介されました。炭の扱い方ひとつで、お湯の温度や湯気の立ち方まで変わるため、茶道においても炭の選び方が重要なのです。
日本の伝統的な暖房「火鉢」と囲炉裏のある暮らし
昔の日本の家庭では、冬の寒さをしのぐために火鉢や囲炉裏が使われていました。特に、火鉢は持ち運びができる便利な暖房器具として重宝され、美食家の北大路魯山人も愛用していたことで知られています。火鉢の魅力は、単なる暖房器具としてだけでなく、炭火を使った調理もできる点にあります。
・火鉢は手軽に暖が取れ、炭の遠赤外線効果で体の芯から温まる
・囲炉裏は家族団欒の場としても機能し、食事をしながら炭火の温もりを楽しめる
・囲炉裏の上に鍋をかけることで、じっくりと煮込み料理を作ることも可能
今回の放送では、築170年の古民家を訪れ、囲炉裏を囲んで過ごす家族の様子が紹介されました。炭の柔らかな温もりが、家族の団欒をより一層豊かなものにしているのが印象的でした。
まとめ
炭は、日本の文化や暮らしに深く根付いた存在です。うなぎを美味しく焼く技術、茶道での繊細な炭手前、そして火鉢や囲炉裏の温かみのある暮らしまで、炭の持つ魅力は計り知れません。『美の壺』では、そんな炭の世界を丁寧に掘り下げ、その奥深さを伝えていました。
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