ミステリー作家・麻見和史と愛猫るう太の静かな時間
このページでは『ネコメンタリー 猫も、杓子(しゃくし)も。 麻見和史とるう太(2026年2月12日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
番組に登場するのは、警察を舞台にした作品で知られるミステリー作家の麻見和史さんと、8歳になるオス猫・るう太です。部屋の中は静かで、机の前にはパソコン、そのすぐそばには、丸くなったり、窓の外を眺めたりするるう太。番組は、このふたり(ひとりと一匹)が過ごす穏やかな日常を、ゆっくりとした時間の流れの中で切り取っていきます。
番組全体を通して何度も映るのは、黙々とキーボードを打つ作家の背中と、そのすぐ後ろでくつろぐ猫の姿です。言葉を交わすことはなくても、同じ空間を共有することで生まれる安心感やリズムが、画面越しにも伝わってきます。人と猫が一緒に暮らすことで、家の「音」や「空気」がどう変わるのか。そうした雰囲気そのものが、この回の大事な見どころになっています。
警察ミステリーが生まれる書斎と創作のルーティン

(画像元:ネコメンタリー 猫も、杓子(しゃくし)も。 | NHK)
番組では、警察を舞台にした作品を数多く手がけてきた作家としての横顔も丁寧に紹介されます。千葉県生まれの麻見さんは、立教大学文学部を卒業後、『ヴェサリウスの柩』で鮎川哲也賞を受賞しデビューした本格派の推理作家です。代表作には「警視庁殺人分析班シリーズ」や「警視庁文書捜査官シリーズ」などがあり、綿密な取材と緻密なトリックで人気を集めています。
書斎のシーンでは、パソコン画面を食い入るように見つめ、少しずつ文章を積み上げていく姿が描かれます。警察組織のリアルな描写や、捜査会議の空気感を出すために、資料を読み込み、構造を考え、プロットを何度も組み直す――そんな作業が、淡々と、でも集中して行われていきます。
警察ミステリーは、事件の「謎」だけでなく、捜査手順や法制度、現場の感情など、現実に即した知識が欠かせないジャンルです。番組の中でも、麻見さんが医療や工学など専門的な題材を積極的に調べて取り入れてきたことが触れられ、画面の外側にある膨大な準備の量がさりげなく伝わってきます。
そんな張りつめた空気のなかで、るう太はあくまでマイペース。机のそばを通り過ぎたり、椅子の足元で寝そべったり、ときどきキーボードの前を横切ったりしながら、創作の現場を自分なりに「パトロール」しています。人間側は犯人像やトリックで頭をフル回転させているのに、猫はただそこにいてくれるだけ――この落差が、見ているこちらの心もふっとゆるめてくれます。
るう太との暮らしが映し出す「今は独身」の胸の内
番組の紹介文には、「今は独身」と語る作家の胸中、という一文があります。
るう太はもともと、奥さまの希望で飼い始めた猫でした。しかし、今その希望を口にした人はこの世にいません――という言葉から、麻見さんが大切な人を見送った経験があることが静かに示されます。
番組では、過去のことを大きなドラマとして語るのではなく、今の暮らしの中に残っている「気配」として扱っているのが印象的です。食事のとき、執筆の合間、ふとした瞬間に視線を向ける先にいつもいるのが、るう太。テーブルの端でうたた寝をしたり、窓際で外を眺めたりする姿は、言葉にしなくても心を支える存在であることが伝わってきます。
人とペットの関係を研究した心理学では、ペットと暮らすことで孤独感がやわらいだり、日々の生活にリズムが生まれたりすることが指摘されています。特に猫は、ほどよい距離感を保ちながら寄り添ってくれる動物として知られており、「家の中に、もうひとつの時間が流れ始める」と表現されることもあります。麻見さんとるう太の様子は、まさにその具体例のように見えます。
画面の中で多くを語らなくても、パソコンに向かう背中と、すぐそばにいる猫。その組み合わせを見ていると、「今は独身」と言いつつも、生活の中にしっかりと人との記憶とつながりが息づいていることが感じられます。
最新作への挑戦と、猫がくれた新しい視点
今回の『ネコメンタリー 猫も、杓子も。』では、るう太との暮らしの中から何かを発見した麻見さんが、新作でどんな挑戦をしようとしているのかも重要なポイントとして紹介されます。番組情報では、その挑戦の内容が「今、新作で試みようとしている」とだけさりげなく触れられ、くわしい中身は番組の中で語られる形になっています。
ここで描かれるのは、警察組織や事件を扱うハードなミステリーに、日常の感情や小さな気づきをどう溶け込ませていくか、という姿勢です。るう太と過ごす毎日の中で、時間の流れ方や空気の変化、人の心が少し楽になる瞬間などを見つめ直し、それを物語のどこかに反映させようと考えている――そんな方向性が、インタビューの断片や作業の様子から見えてきます。
一般的に、長くシリーズを書き続ける作家にとって、「前と同じような作品」を書き続けるのはある意味で一番安全ですが、読者に届けたい気持ちや、自分の中に生まれた変化を反映させるには、小さくても新しい挑戦が必要になります。
番組では、キーボードを打つ手を止めて窓の外を眺める瞬間や、るう太の様子を見てふっと表情がやわらぐカットを重ねることで、その「これから書こうとしているもの」を直接説明するのではなく、雰囲気で伝えています。物語の中に、喪失と再出発、静かな生活の手触りをどう刻んでいくのか――そんなテーマを、視聴者も一緒に考えさせられる構成になっています。
エッセイ朗読・鈴木浩介の声が支える世界観
この回では、麻見さんが書き下ろしたエッセイを朗読する役割を、俳優の鈴木浩介さんが務めます。
鈴木さんは、ドラマや舞台で幅広い役柄を演じてきた俳優で、緊張感のあるサスペンスから、コミカルな役までこなす表現力の持ち主です。その声は、少し低めで落ち着きがありながら、細かな感情の揺れを丁寧に伝えることができます。
番組の中では、静かな映像にこの朗読が重なることで、ただの日常のひとコマが「物語」に変わっていきます。猫のしぐさや、部屋に差し込む光、キーボードを打つ音――それぞれの場面に、言葉がそっと寄り添い、視聴者は作家の心の中をのぞき込むような感覚になります。
また、朗読という形をとることで、麻見さん自身の声では少し照れくさいような本音や、過去への思いも、客観的な距離感を保ちながら伝えることができます。視覚(映像)と聴覚(朗読)の両方を使って、作家と猫の関係、そして新しい作品への向き合い方を立体的に感じさせてくれるのが、このシリーズならではの魅力です。
番組を通して、警察ミステリーの世界で活躍してきた作家と、そのそばにいつもいる猫という組み合わせが、見る人それぞれの「日常」や「大切な存在」を静かに思い出させてくれます。猫好きの方はもちろん、ミステリーが好きな方や、創作をしている方にとっても、心に残る30分になりそうです。
Eテレ【ネコメンタリー 猫も、杓子も。】村山早紀と千花の“長崎・海辺の猫散歩”と愛猫の絆を描く感想|2026年2月5日
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