カーニー首相の“ミドルパワー連携”は日本への宿題
このページでは『みみより!解説 カーニー首相演説の反響 日本の外交戦略は?(2026年2月12日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
カナダの新しいリーダーであるカーニー首相が、ダボス会議で行った演説が世界で大きな話題になっています。合言葉は「ミドルパワー・中堅国が手を組もう」というメッセージです。
番組では、岩渕梢キャスターと、政治・外交が専門の山下毅解説委員が、この演説がどんな内容だったのか、そして日本の外交戦略にどんなヒントをくれるのかを、ニュースの背景までふくめてかみ砕いて解説します。
アメリカや中国のような「超大国」ではない国々が、どうすれば自分たちの声を世界に届けられるのか。
カーニー首相ダボス演説のポイント整理
番組の出発点は、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム、いわゆるダボス会議です。ここでカーニー首相は各国のリーダーを前に、今の世界は「昔のようなルールに守られた国際秩序ではなく、強い国同士の対立がむき出しになった時代だ」とはっきり指摘しました。
演説の中で首相は、次のようなメッセージを打ち出しています。
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ルールにもとづく国際秩序は、もはや「その通りには機能していない」
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大国は、市場の大きさや軍事力、経済力を武器にして、自分たちの有利なルールを押しつけようとしている
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そんな中で、カナダや日本のようなミドルパワーがばらばらに動くと、どうしても立場が弱くなってしまう
特に印象的なのが、カーニー首相が語った、「テーブルに着かなければ、メニューにされてしまう」という一節です。これは、「交渉の場に参加できない国は、他の国にルールを決められる側になってしまう」という強い警告です。
番組では、この言葉の意味をかみ砕きながら、「日本は今、ちゃんと“テーブル側”に座れているのか?」という問いを視聴者に投げかけていきます。
ミドルパワー・中堅国とは?カナダと日本の共通点
次に番組が取り上げるのは、ミドルパワー・中堅国という言葉の中身です。
ミドルパワーとは、アメリカや中国のような超大国ではないけれど、経済力や技術力、外交力で世界に影響を与えられる国のことです。代表的なのは、カナダ、日本、オーストラリア、韓国、ヨーロッパのいくつかの国などです。
番組では、
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1人あたりの豊かさ
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技術力や教育水準
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国際協調を大事にする外交スタイル
といった点で、カナダと日本が「よく似たミドルパワー」であることが紹介されます。
一方で、地理的な位置や安全保障の環境は大きく違います。カナダはアメリカと国境を接し、北極や大西洋・太平洋をにらむ立場。日本は、東アジアという緊張の高まりやすい地域で、アメリカとの同盟を軸にしながら、中国や韓国、ASEANとも向き合っています。
山下毅解説委員は、「だからこそ、日本も自分をミドルパワーとしてどう位置づけるかが大切になる」と指摘します。超大国ではないけれど、ただの小国でもない。その“ちょうど真ん中”の立場をどう生かすかが、これからの日本の外交戦略のカギだと説明していきます。
演説が突きつけた「大国依存」のリスク
カーニー首相の演説で、もうひとつ大きなテーマになったのが「大国への依存の危うさ」です。
演説では、
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貿易
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エネルギー・レアメタルなどの資源
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ハイテク技術やAI
といった分野で、特定の大国に頼りすぎると、その国がルールを変えた瞬間に、自分たちの側がふりまわされてしまうと語りました。
例えば、ある超大国が関税を一方的に引き上げたり、重要な部品や資源の輸出を止めたりすると、中堅国の経済はすぐに影響を受けます。これは最近、日本をふくむ多くの国が経験してきたことです。
ここで番組は、日本の外交戦略にも話を広げます。
日本は、
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安全保障ではアメリカとの同盟に大きく依存
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貿易や投資では中国やアジア各国との結びつきが深い
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エネルギーや食料では、中東や各地域からの輸入に頼っている
という現実を、地図や図解をつかいながら整理していきます。
この構造自体は悪いことではありませんが、ひとつの大国に偏りすぎると、政治的な対立が起きたときに「経済で揺さぶられる」リスクが高まります。番組では、過去の輸出規制問題や、特定の国への依存が議論になったケースなどにも軽く触れながら、視聴者にイメージしやすい形で説明していました。
日本の外交戦略への示唆:どの国とどう組む?
では、カーニー首相のメッセージを受けて、日本の外交戦略はどう変わっていくべきなのでしょうか。
演説の中で首相は、ミドルパワー同士がテーマごとに連携する具体例として、
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環太平洋パートナーシップ(CPTPP)とヨーロッパをつなぐ新しい貿易ネットワーク
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重要鉱物の「購入グループ」を作り、特定の産地への依存を減らす構想
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AIやデジタル技術のルールづくりで、価値観の近い国同士が協力する取り組み
などを挙げました。
番組では、これを受けて日本の選択肢を次のように整理していきます。
1つ目は、「アメリカとの同盟を軸にしながらも、その他のミドルパワーとの横のつながりを太くしていく」方向性です。カナダ、オーストラリア、ヨーロッパの中堅国、そしてアジアの民主主義国などと、貿易・安全保障・技術協力をテーマごとに積み上げていく姿が描かれます。
2つ目は、「経済安全保障」と呼ばれる分野で、サプライチェーン(供給網)を多様化させることです。レアメタルや半導体部品、エネルギーなど、特定の国に集中している分野について、複数の調達先を持つことが日本の外交戦略の安全装置になると説明します。
3つ目は、「価値観やルールづくりへの参加」です。人権、データ保護、AIの使い方など、新しいルールが必要な分野で、日本がミドルパワーとしてどこまで“声を上げられるか”が問われます。ここでも、カナダが掲げる「中堅国連携」の考え方は、日本にとって大きなヒントになります。
これからの日本外交に必要な視点
最後に番組は、カーニー首相の演説をきっかけに、「これからの日本の外交戦略に必要な視点」をいくつかにまとめていました。
ひとつは、「現実をきちんと言葉にする勇気」です。首相は演説の中で、「古い国際秩序はもう戻ってこない」と率直に語りました。日本もまた、「アメリカと中国の対立が続く世界」を前提にして、どんな選択をするのかをはっきりさせる必要があります。
もうひとつは、「国内を強くすることも外交の一部」という発想です。
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経済を安定させる
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科学技術や教育に投資を続ける
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エネルギーや食料の安定供給を図る
こうした取り組みが進めば進むほど、日本は外からの圧力に振り回されにくくなり、国際社会で自分の意見を言いやすくなります。これは、カナダをはじめとするミドルパワーに共通する課題だと、番組では整理していました。
そして何より大事なのは、「一国で生き残ろうとしないこと」です。
超大国の力が強まる時代だからこそ、中堅国同士が手を取り合い、重なる部分では協力し、違いがあるところは話し合いながら、新しい形の国際協調を作っていく——。
カーニー首相の演説は、日本にとっても、「これからどんな仲間と、どんな世界をめざすのか」をあらためて考えるきっかけになった、と締めくくられていました。
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