看護師不足が広げる医療現場の危機
いま日本では、看護師不足が深刻になり、病院のベッドが使えなかったり、患者と向き合う時間が減っている現実があります。人が足りないだけでなく、働き方や社会の変化も重なり、問題はますます大きくなっています。
『首都圏情報ネタドリ! 看護師が足りない 医療現場の危機(2026年4月24日)』でも取り上げられ注目されています 。この問題は、医療を受ける私たち全員に関わる重要なテーマです。
・看護師不足が起きている本当の理由
・病院や患者にどんな影響が出ているのか
・「患者と向き合う時間」が減っている背景
・これからの医療現場に必要な解決策
看護師あるあるから見える看護師やりがいと看護界隈とは何かを本音トークと仕事内容
看護師不足が深刻化する日本の医療現場
いまの日本では、看護師不足は「一部の病院だけの困りごと」ではなく、地域の医療そのものを支える力が弱くなる大きな問題になっています。看護師の人数そのものは長い目で見ると増えてきましたが、必要な場所に必要な人数がそろっているわけではありません。2024年末時点で、看護師は全国で約136万人、そのうち病院で働く看護師は約89万6千人ですが、地域差や職場差が大きく、特に首都圏など都市部では人口あたりの看護職員数が全国平均より少ない傾向があります。
さらに国は、2025年の看護職員需要が2020年時点の就業数より多く、2040年度に向けても需要が増えていく見通しを示しています。つまり、この問題は一時的な人手不足ではなく、高齢化と働く世代の減少が重なる中で、これからも続く可能性が高い課題です。2026年4月には、厚生労働省が2040年に向けた看護職員の養成・確保を話し合う検討会を始めていて、国レベルでも「このままでは足りなくなる」という認識がはっきりしています。
だからこそ、このテーマが強く注目されます。看護師が足りないと聞くと、まず思い浮かぶのは「現場が大変そう」ということかもしれません。でも本当に大きいのは、その先です。入院できる病床が減る、退院後の在宅ケアが細くなる、夜勤が回らない、患者の変化に気づく余裕が減る。つまり、看護師不足は患者側の安心や安全に直結する問題なのです。『首都圏情報ネタドリ! 看護師が足りない 医療現場の危機』という題名が目を引くのも、それが単なる職場の人手不足ではなく、私たちみんなの医療の受けやすさに関わるからです。
看護学校の募集停止と病院の病床休止の実態
この問題が深刻に見える理由のひとつが、入口と出口の両方で苦しさが出ていることです。入口とは、これから看護師になる人を育てる学校です。2025年の調査では、准看護師課程で募集停止が15校、看護師2年課程で5校にのぼり、3年課程でも募集停止を決めた養成所が出ています。定員充足率も低下しており、「育てる場所があるのに人が集まらない」という事態が起きています。
なぜ学校の募集停止が起きるのかというと、単に人気がないからではありません。18歳人口の減少、4年制大学志向の高まり、学費や生活費への不安、仕事の重さへのイメージなど、いくつもの理由が重なっています。看護は必要とされる仕事なのに、学ぶ人が減る。このねじれが、数年後の現場にそのまま影響します。学校が減れば実習先や地域の人材の流れも細くなり、地方ではとくに「地域で育てて地域で支える」仕組みが弱くなってしまいます。
出口とは、病院の現場です。病院には建物や病床があっても、看護師が足りなければフルで動かせません。病床があるのに休止する、受け入れを絞る、夜間の体制を組みにくいといったことが起きます。これは「ベッドが空いているのに入院できない」ような矛盾につながります。病床の問題は人口減少や病院経営の悪化とも重なりますが、看護師不足で稼働できないことも現場の大きな要因として指摘されています。
ここで大事なのは、学校の募集停止と病床休止は別々の話ではないということです。育成が細ると現場に入る人が減り、現場が厳しいと志望者も減る。この悪い循環が続くと、地域医療はじわじわ弱っていきます。だから「学校を守ること」と「働き続けられる病院をつくること」は、本当は同じ問題の両側です。
忙しすぎる現場で失われる「患者と向き合う時間」
看護師不足のいちばん苦しいところは、人数が足りないことそのものより、患者と向き合う時間が削られていくことです。看護の仕事は、点滴や記録、処置の介助だけではありません。患者の表情を見る、不安を聞く、少しの変化に気づく、家族に説明する、退院後の生活を考える。こうした時間があるから、安心にも安全にもつながります。けれど現場が多忙になると、真っ先に削られやすいのがこの「目に見えにくい時間」です。
特に負担が大きいのが、夜勤と交代制勤務です。看護の仕事は24時間止められないため、夜も人を置かなければなりません。2025年の要望では、夜勤者確保は急務であり、二交代制の広がりによる長時間労働や夜勤の負担が心身に大きく影響していると指摘されています。人が足りないと1人あたりの夜勤や責任が重くなり、体力的にも気持ちの面でも続けにくくなります。
しかも看護師は、患者対応だけをしているわけではありません。記録、予約対応、物品管理、連絡調整、書類、電話、搬送の段取りなど、たくさんの周辺業務があります。実際に、事務作業や予約対応を別職種に分担しただけで、1日50分程度の看護師の負担が軽くなり、その時間を患者のケアやアセスメントに回せた事例が報告されています。手術室では、クラーク配置などで週35時間分、看護業務に充てられる時間が増えた事例もあります。これは逆に言えば、今までそれだけ多くの時間が、本来の看護以外に使われていたということです。
ここにこの問題の本質があります。看護師不足は「人数を増やせば終わり」ではありません。看護師が看護に集中できる職場かどうかが同じくらい大切です。人数が少ないうえに雑務も多い職場では、患者に寄り添いたくても時間がない。そうなると、看護師自身も「やりたかった看護ができない」と感じやすくなり、それが離職につながることもあります。
看護の原点を示した大関和の思想とは
こういう時代だからこそ、近代看護の先駆者として知られる大関和の考え方があらためて注目されます。大関和は、日本の近代看護の草創期に、看護を単なるお世話ではなく、知識と技術、そして人への向き合い方を備えた専門職として広げようとした人物です。後の看護教育や看護婦会の広がりにも深く関わり、看護の社会的な意味を伝え続けました。
大関和の魅力は、技術だけでなく、患者への関わり方を大切にした点にあります。近年の解説でも、大関和は「患者の世界に近寄る」「不安や恐れをやわらげる」「寄り添うことで人を癒やし、治していく」という看護の本質を理解していた人物として語られています。ここでいう寄り添うは、ただ優しくすることではありません。患者が安心して回復に向かえるように、その人の気持ちや暮らしまで見て支える姿勢です。
この考え方は、いまの医療でもまったく古くありません。むしろ、医療が高度になり、記録やルールが増え、時間に追われる今だからこそ、原点として大事です。病気は同じでも、患者が感じる不安は一人ひとり違います。高齢の人、子ども、認知症の人、退院後の生活に不安がある人では、必要な声かけも違います。だから看護は「流れ作業」では成り立ちません。大関和の思想は、看護とは人を見る仕事であると、今に向けて教えてくれます。
一方で、原点を大切にしようと言うだけでは現場は変わりません。理想を語れば語るほど、忙しすぎる現場では「わかっているけれどできない」と苦しくなることもあります。だから今必要なのは、精神論ではなく、原点を守れる仕組みづくりです。大関和の考えを現代に生かすとは、看護師にもっと頑張れと言うことではなく、寄り添う時間を確保できる体制をつくることだと言えます。
人手不足の背景にある構造的な問題
では、なぜここまで看護師不足が重くなったのでしょうか。大きな理由は、ひとつではなく構造的な問題が重なっているからです。
まず大きいのは、少子高齢化です。高齢者が増えると、入院、外来、介護、在宅療養、訪問看護など、看護が必要な場面が増えます。一方で、働く世代は減っていきます。つまり「支えてほしい人」は増えるのに、「支える人」は増えにくいという形です。国も2040年に向けてこの傾向が強まると見ていて、看護人材の確保がますます難しくなるとしています。
次に、地域差です。看護職員は全国にいますが、人口あたりでみると首都圏などの都市部では全国平均より少ない傾向があります。人が多い地域ほど医療需要も大きく、病院間の採用競争も激しくなります。地方では学校の募集停止や地域外流出が課題になり、都市部では需要に人が追いつかない。どちらも別の形で苦しいのです。
さらに、働き続けにくさもあります。2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%、新卒採用者は8.4%、既卒採用者は16.1%でした。数字だけ見れば急激に悪化しているわけではありませんが、一定数が毎年離れていることは変わりません。しかも新卒だけでなく、経験者の離職も小さくありません。結婚、出産、育児、介護、体力面、夜勤負担、ハラスメント、責任の重さなど、続けにくい理由は人によって違います。
もうひとつ見落とせないのが、病院の外にも看護が必要になっていることです。2024年末時点で、訪問看護ステーションに勤務する看護師は約9万1千人で、看護師全体の6.7%になりました。病院だけでなく在宅や地域でも看護需要が高まっているため、同じ看護師を病院と在宅で分け合う形になっています。これは悪いことではなく、むしろ社会に必要な変化です。ただ、その分だけ「病院にいれば足りる」という時代ではなくなっています。
つまり、今の看護師不足は「待遇だけ」「根性だけ」「学生が減っただけ」で説明できません。教育、人口構造、夜勤、地域差、在宅へのシフト、業務の多さ、病院経営まで、全部が絡んでいます。だから解決も、ひとつの方法で一気に終わるものではありません。
これからの医療現場に必要な改革と解決策
これから必要なのは、単に「もっと採用する」だけではなく、集める・育てる・辞めにくくする・時間を取り戻すの4つを同時に進めることです。
まずは、育成の土台を守ることです。看護学校や養成所が減り続けると、地域で人を育てる力が弱くなります。学費支援、実習支援、地域で学んで地域で働きやすくする仕組み、働きながら学び直せる道など、入口を細らせない工夫が欠かせません。特に地域医療では、学校と病院と自治体がバラバラに動くのではなく、一体で考えることが重要です。
次に、働き続けられる職場づくりです。夜勤負担の軽減、多様な勤務形態、院内保育や子育て支援、休み方の改善、ハラスメント対策などは、やさしさのためだけではなく、人材確保そのもののために必要です。看護職の健康と安全が守られなければ、患者の安全も守れません。
そしてとても大事なのが、看護師が看護に集中できる仕組みです。事務作業を他職種に分担する、クラークや看護補助者を増やす、予約や連絡の流れを見直す、ICTやAIを使って記録や共有を効率化する。厚生労働省は2026年、看護現場のDX推進実証事業を公募し、限られた人材でも効率的にサービスを提供できる体制づくりを進めています。DXは人を減らすためではなく、人にしかできない看護へ時間を戻すために使うべきものです。
最後に必要なのは、社会全体の見方を変えることです。看護師不足を「現場が回らない」で終わらせるのではなく、「患者が安心して医療を受けられるか」という問題として考えることです。看護師は病院の中だけで働く人ではなく、地域医療、在宅療養、災害対応、家族支援まで支える存在です。だから本当に守るべきなのは、人数の帳尻ではなく、患者に寄り添える看護の時間です。その時間をどう増やすかが、これからの医療現場のいちばん大きなテーマになっていくはずです。
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