春を包む和菓子「道明寺」の奥深い世界
もちもち食感と桜の香りが楽しめる関西風桜餅「道明寺」は、春を代表する和菓子として長く愛されています。『ララLIFE 森川葵、関西風桜餅・道明寺を粉から作る(2026年5月15日放送)』でも取り上げられ注目されています 。
今回話題になったのは、完成品ではなく“粉から作る工程”に挑戦した点です。道明寺粉とは何なのか、なぜ関西で親しまれているのか、関東風「長命寺」と何が違うのかまで知ると、桜餅の見え方が大きく変わります。
老舗和菓子店の職人技や、春の文化として受け継がれてきた背景にも注目です。
この記事でわかること
・道明寺と長命寺の違い
・道明寺粉から作る本格桜餅の工程
・老舗和菓子店が大切にする職人技
・桜餅が今も愛され続ける理由
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名古屋の老舗和菓子店「お亀堂」に弟子入りした森川葵
森川葵さんが挑戦したのは、ただ桜餅を作るだけではなく、関西風桜餅「道明寺」を粉から作るという、本格的な和菓子作りです。『ララLIFE 森川葵、関西風桜餅・道明寺を粉から作る』でも取り上げられ、春の和菓子を“食べる側”ではなく“作る側”から見られる内容として注目されました。
舞台となる「お亀堂」は、名古屋・愛知エリアで親しまれてきた老舗和菓子店です。老舗というと昔ながらの味を守るイメージがありますが、今の和菓子店に求められているのは、伝統を守りながら新しい見せ方や味にも挑戦することです。お亀堂は全国菓子博覧会で農林水産大臣賞を受賞した和菓子も手がけており、伝統と新しさを両方大切にしている店として知られています。
今回の面白さは、森川葵さんが“完成品を教わる”のではなく、道明寺粉から作る工程に関わるところにあります。桜餅は見た目がかわいらしく、食べるとすぐになくなってしまう和菓子ですが、その小さな一個の中には、もち米、あんこ、桜の葉、蒸し加減、包み方、香りの出し方など、たくさんの技術が詰まっています。
特に道明寺は、もち米の粒感が残るお菓子です。そのため、少しの水分量や蒸し加減の違いで、かたくなったり、べちゃっとしたり、粒の食感が弱くなったりします。見た目は素朴でも、作る側から見るとかなり繊細な和菓子です。
森川葵さんの挑戦が注目された理由は、和菓子作りの難しさを身近に感じられるからです。職人の手仕事は、機械のように同じことをくり返しているだけではありません。生地の状態を見て、水分を調整し、手の感覚で包み、見た目の美しさまで整えていきます。そこに、和菓子の奥深さがあります。
関西風桜餅「道明寺」はなぜ愛され続けるのか
道明寺が長く愛されている理由は、春らしい見た目だけではありません。最大の魅力は、もち米から生まれるつぶつぶ、もちもちした食感と、桜の葉の香りが一緒に楽しめるところです。
道明寺は、もち米を蒸して乾かし、粗く砕いた道明寺粉を使って作ります。小麦粉の生地とは違い、米の粒が残っているため、口に入れたときにやさしい弾力があります。なめらかなあんこと、粒感のある生地が合わさることで、ただ甘いだけではない食べごたえが生まれます。
桜の葉の塩漬けも、道明寺が愛される大きな理由です。甘いあんこに、ほんのり塩気のある桜の葉が重なることで、味に深みが出ます。甘さだけだと途中で重たく感じることがありますが、塩気と香りが入ることで、後味がすっきりします。
道明寺が春の和菓子として強いのは、見た目、香り、味、季節感がすべてそろっているからです。
淡いピンク色は桜を思わせます。
桜の葉の香りは春の空気を感じさせます。
もち米の食感はお祝いごとの温かさにつながります。
あんこの甘さは、ほっとする安心感をくれます。
このように、道明寺はただのスイーツではなく、春を味わう和菓子として受け継がれてきました。
また、道明寺は地域性がはっきり出るお菓子でもあります。関西では桜餅といえば道明寺を思い浮かべる人が多く、関東では長命寺を思い浮かべる人が多いとされています。つまり、桜餅は同じ名前でも、地域によって頭に浮かぶ姿が違うお菓子です。こうした違いがあるからこそ、「自分の地域の桜餅はどちらだろう?」という関心も生まれます。
道明寺が今も愛される背景には、昔ながらの味でありながら、見た目がかわいく、SNS時代にも相性がよいことがあります。丸くてやさしい形、淡い色、桜の葉に包まれた姿は、写真でも春らしさが伝わりやすい和菓子です。昔からの季節菓子でありながら、今の人にも伝わりやすい魅力を持っている点が、道明寺の強さです。
道明寺粉から作る本格桜餅の工程と職人技
道明寺作りで大切なのは、道明寺粉の扱いです。道明寺粉は、もち米を蒸して乾燥させ、粗くひいたものです。普通の粉のように細かくサラサラしているのではなく、米の粒が残っています。そのため、火の入り方や水分の含み方が仕上がりに大きく影響します。
大まかな流れは、次のようになります。
道明寺粉に水分を含ませる
蒸してやわらかくする
砂糖などを加えて生地を整える
あんこを丸める
生地であんこを包む
桜の葉で包んで香りをまとわせる
この流れだけを見ると簡単そうに感じますが、実際には一つひとつにコツがあります。
まず、道明寺粉に水分を含ませるときは、粒の中心まで水が入るようにする必要があります。表面だけがやわらかくても、中がかたいままだと、食べたときに芯が残ったような食感になります。逆に水分が多すぎると、粒がつぶれてしまい、道明寺らしいつぶつぶ感が弱くなります。
次に大切なのが蒸し加減です。道明寺の生地は、もちもちしているけれど重すぎず、粒の形が残っているけれど口当たりはやさしい、というバランスが理想です。この加減は、数字だけでは判断しにくい部分があります。職人は、湯気の上がり方、生地のまとまり、手に取ったときの感触を見ながら調整します。
あんこを包む工程にも技術があります。道明寺は生地に粒があるため、薄くのばしすぎると破れやすく、厚すぎるとあんことのバランスが悪くなります。中のあんこが見えないように包みながら、丸く美しい形に整える必要があります。
さらに、桜の葉の使い方も大切です。桜の葉はただ巻けばよいわけではありません。葉の香り、塩気、やわらかさが生地やあんこと合うことで、道明寺らしい味になります。葉の向きや包み方によって、見た目の印象も変わります。
道明寺作りの職人技は、派手な技ではなく、小さな調整の積み重ねです。水分、温度、手の力、包む速さ、形の整え方。そのどれか一つがずれるだけで、仕上がりが変わります。だからこそ、粉から作る道明寺には、完成品だけを見ても分からない深さがあります。
農林水産大臣賞を受賞した和菓子店のこだわり
農林水産大臣賞を受賞する和菓子店には、ただおいしいだけではない強みがあります。味、見た目、技術、地域性、新しさ、物語性など、いくつもの要素がそろっていることが大切です。
お亀堂が評価された和菓子は、食用花を使った華やかな上生菓子として紹介されています。伝統的な和菓子の技術に、地域の素材や現代的な感性を組み合わせた点が特徴です。老舗でありながら、新しい表現に挑戦していることが伝わります。
ここで大事なのは、老舗のこだわりとは「昔と同じことだけをする」ことではないという点です。もちろん、あんこの炊き方、生地の扱い方、季節感の出し方といった基本の技術は守られます。しかし、それだけでは今の時代に広く届けることは難しくなっています。
今の和菓子には、次のような力も求められます。
見た目で季節が伝わること
食べる前から気分が上がること
地域の魅力が入っていること
若い世代にも興味を持たれること
手土産や贈り物として選びやすいこと
道明寺も同じです。昔からあるお菓子ですが、今あらためて注目されるのは、手作りの工程や、素材の意味、地域による違いが見直されているからです。コンビニやスーパーで手軽にスイーツが買える時代だからこそ、職人が一つずつ作る和菓子の価値が目立ちます。
農林水産大臣賞を受賞した店で森川葵さんが道明寺作りに挑戦する意味は、和菓子の“完成品のきれいさ”だけでなく、そこに至るまでの手間を見せるところにあります。
和菓子は、派手な香りや強い甘さで勝負するものばかりではありません。素材の持ち味を生かし、季節を感じさせ、食べる人の気持ちをやわらかくするものです。道明寺のような季節菓子は、そうした和菓子の魅力がとても分かりやすく出ています。
関東風「長命寺」と関西風「道明寺」の違い
桜餅には、大きく分けて**関東風「長命寺」と関西風「道明寺」**があります。同じ桜餅でも、材料、形、食感、作り方がかなり違います。
関東風の長命寺は、小麦粉や白玉粉などを水で溶き、薄く焼いた生地であんこを包むタイプです。見た目はクレープのようで、生地はなめらかです。江戸の文化の中で広まった桜餅として知られています。
一方、関西風の道明寺は、道明寺粉を蒸して作った生地であんこを包みます。見た目は丸く、おまんじゅうのような形が多く、食感はもちもち、つぶつぶしています。もち米を使うため、食べごたえがあり、米の甘みも感じやすいのが特徴です。
違いを整理すると、次のようになります。
関東風「長命寺」
生地は小麦粉や白玉粉を薄く焼いたもの
食感はなめらかでやわらかい
形は薄い生地で巻くような姿
江戸風の桜餅として知られる
見た目は和風クレープに近い
関西風「道明寺」
生地は道明寺粉を蒸したもの
食感はもちもち、つぶつぶ
形は丸く、あんこを包み込む姿
関西で親しまれてきた桜餅
米の風味と粒感が楽しめる
この違いを知ると、桜餅の楽しみ方が広がります。今まで「桜餅」とひとくくりにしていた人も、実は自分が食べていたのが長命寺なのか道明寺なのか、気になってくるはずです。
面白いのは、どちらが正しいという話ではないことです。長命寺には長命寺のよさがあり、道明寺には道明寺のよさがあります。関東風は薄い生地とあんこの一体感が魅力で、関西風はもち米の食感と桜の葉の香りがしっかり楽しめます。
また、全国的に見ると、道明寺タイプの桜餅が広く親しまれている地域も多いとされています。地域によっては、桜餅と聞けば自然に道明寺を思い浮かべる人も多く、逆に関東では長命寺のほうがなじみ深い人もいます。
この地域差こそ、桜餅のおもしろさです。ひとつの和菓子を通して、食文化の違いや暮らしの歴史まで見えてきます。
森川葵が挑戦した“粉から作る和菓子作り”の魅力
森川葵さんが挑戦した“粉から作る”という部分は、道明寺を深く理解するうえでとても大きな意味があります。
完成した桜餅を食べるだけなら、見た目のかわいさや味のよさに目が向きます。しかし、粉から作るとなると、和菓子がどれほど細やかな作業でできているのかが見えてきます。
特に道明寺は、材料がとてもシンプルです。道明寺粉、砂糖、あんこ、桜の葉。基本だけ見れば、特別に複雑な材料ではありません。だからこそ、作り手の技術がそのまま味に出ます。
水分が少なければかたくなる。
蒸しすぎると粒感が弱くなる。
包み方が雑だと形が崩れる。
桜の葉の塩気が強すぎると甘さが負ける。
あんこが多すぎても、生地が厚すぎてもバランスが悪くなる。
このように、道明寺はシンプルだから簡単なのではなく、シンプルだからごまかしがきかない和菓子です。
粉から作る魅力は、素材の変化を感じられるところにもあります。乾いた道明寺粉が水分を含み、蒸されてやわらかくなり、あんこを包む生地になっていく。その変化を知ると、一個の桜餅を見る目が変わります。
また、和菓子作りには“誰かに食べてもらう”という楽しさがあります。道明寺は、ひなまつり、お花見、春の手土産など、人に渡す場面にもよく合います。森川葵さんが作った道明寺を振る舞う流れには、和菓子が持つ人と人をつなぐ力も感じられます。
洋菓子は華やかなクリームやチョコレートで気分を上げてくれるものが多いですが、和菓子は季節や余白を楽しむものでもあります。道明寺は、まさにその代表です。強い主張ではなく、桜の葉の香り、淡い色、もち米のやさしい食感で、春をそっと届けてくれます。
今回のテーマが深く響くのは、道明寺がただの食べ物ではなく、日本の季節感と職人技が詰まった小さな文化だからです。
食べるだけなら数分で終わる桜餅も、粉から作る工程を知ると、そこにかかる手間や工夫が見えてきます。そして次に道明寺を食べるとき、「これはもち米からできているんだ」「桜の葉の塩気が甘さを引き立てているんだ」「関東風とは作り方が違うんだ」と、味わい方が少し変わります。
それこそが、粉から和菓子を作る魅力です。道明寺は、春を知らせるかわいい和菓子でありながら、地域の違い、米文化、職人技、季節を楽しむ心まで教えてくれる、とても奥の深いお菓子です。
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