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【新プロジェクトX】復興の象徴“パンダのタンタン”の奇跡と涙の最期|2025年4月26日放送

ドキュメント

“復興のシンボル”パンダを守れ〜神戸の動物園が起こした奇跡

2025年4月26日、NHK総合で放送された『新プロジェクトX〜挑戦者たち〜』では、阪神・淡路大震災の被災地・神戸に希望の光をもたらしたジャイアントパンダ「タンタン」と、それを支えた王子動物園スタッフたちの奮闘の記録が紹介されました。24年にわたり神戸市民を励まし続けたタンタン。中国からの借り物であるパンダを、国際的な責任を背負いながらも命をかけて守った飼育員たちの知られざる努力、そして本場中国の専門家も驚いた世界初の治療法など、数々の感動の瞬間が描かれました。

阪神・淡路大震災とタンタンの来園

1995年1月17日、阪神・淡路大震災が発生し、神戸の街は一瞬にして壊滅的な被害を受けました。震災直後、王子動物園には遺体安置所が設けられ、多くの遺族が悲しみに暮れる光景が広がっていました。当時の飼育員だった兼光秀泰さんも、あの光景が今でも忘れられないと語っています。そんな神戸に、震災から5年後の2000年7月16日、中国から2頭のジャイアントパンダが贈られました。目的は、神戸市民に再び笑顔を取り戻してもらうことでした。

・中国からやってきたのは、オスの「コウコウ」とメスの「タンタン」 ・市民からの公募で2頭の名前が決定 ・一般公開初日には動物園に長蛇の列ができ、公開初年度の来園者数は前年の約2倍、約200万人に達しました

このころからタンタンは「神戸のお嬢さま」と親しまれるようになり、市民の心に深く根付いていきました。しかし、華やかな表舞台の裏側で、スタッフたちにはパンダ飼育未経験という不安と、中国への国際責任という重圧がのしかかっていました。

繁殖に挑んだパンダとスタッフたちの苦悩

タンタンとコウコウには繁殖が大きな期待をかけられていました。しかし、飼育を担当していた兼光さんたちは、パンダ繁殖の知識も経験もほとんどない中で手探りの挑戦を続けることになりました。

・最初のパートナー、コウコウには生殖機能がないことが判明し、中国へ返還 ・その後迎えられた2代目コウコウと、人工授精に何度も挑戦

やがて迎えた2008年8月26日、待望の赤ちゃんパンダが誕生しました。動物園全体が歓喜に包まれ、神戸市民も大きな希望を感じました。しかし、その喜びは長く続きませんでした。

・赤ちゃんは誕生からわずか4日で命を落としました ・初めての出産を経験したタンタンも、我が子を失った喪失感から落ち着かず、ケージ内を歩き回る様子が見られました

この悲劇のわずか2年後、さらに追い打ちをかけるように、2010年に2代目コウコウが急死。原因は急性の消化器疾患でした。再び孤独になったタンタンの心身に大きな負担がかかる中、飼育員たちは「繁殖」よりも「タンタンの幸せ」を第一に考え、無理な繁殖計画を断念。タンタンが安心して暮らせる環境づくりへと舵を切りました。

・好みの笹を選び抜き、体調と心のケアを重視 ・日々の食事記録や行動観察を欠かさず、タンタンのわずかな変化を見逃さない工夫を重ねました

この時期の積み重ねが、後のタンタンの長寿にもつながっていきます。

晩年を支えた静かな努力

年齢を重ねたタンタンは、少しずつ体調に不安を抱えるようになりました。2020年、中国への返還が予定されていましたが、新型コロナウイルスの流行とタンタンの体調悪化により延期が決定します。

・2021年には心臓疾患が判明 ・王子動物園は一般公開を中止し、タンタンの健康維持に全力を尽くす体制に

この時期、飼育チームの中心にいたのが梅元良次さん吉田憲一さんです。

・飼育スタッフは24時間交代制を組み、夜間の異変にも即対応できるように備えました ・健康診断は週2回から毎日1回に増加、血圧・心拍・歩行状態など細かくデータ管理

さらに、タンタンの好みに合わせた竹の選定にも力を入れました。

・吉田さんは、園内に珍しい竹を何種類も植え、タンタンの好みを徹底分析 ・柔らかく甘みのある竹やたけのこを用意し、食欲を刺激する工夫を続けました

SNSを通じたタンタンの近況発信も始まり、観覧ができなくても市民が画面越しにエールを送り続けました。そして2024年3月31日、タンタンは28歳で静かに旅立ちました。ジャイアントパンダとしては非常に長寿であり、人間に換算するとおよそ100歳にあたる年齢でした。

異色のスタッフが起こした世界初の奇跡

梅元さんと吉田さんは、異色の経歴を持つスタッフでした。梅元さんはもともと他の動物を担当しており、吉田さんは王子動物園の造園を担当していた職員です。この2人がタッグを組んでタンタンを支え続けたのです。

・梅元さんは「人間レベルの健康管理」を目指し、ハズバンダリートレーニング(HT)を導入 ・吉田さんは造園の知識を生かして、タンタンに合った竹の育成と提供を実現

ハズバンダリートレーニングとは、動物に負担をかけずに医療行為を受けさせるための訓練です。

・タンタンは10年以上の訓練により、採血、レントゲン、心臓エコー検査など、10種類以上の検査に自ら協力できるようになりました ・この成果は中国の専門家も驚かせ、世界的にも画期的な事例となりました

2021年、タンタンの腹に20kg以上の腹水がたまったときも、全身麻酔なしで局所麻酔とハズバンダリートレーニングによって施術に成功。これは世界初の快挙でした。

市民とともに歩んだ24年

タンタンの死後、王子動物園には献花台が設けられ、約20万人が訪れて別れを惜しみました。そして、タンタンのために育てられたひまわりの種が全国に配られ、各地で花を咲かせるという感動的な広がりを見せました。

・王子動物園の屋上には、吉田さんの発案で「タンタンのひまわり畑」が作られた ・タンタンの思いを受け継ぐ形で、多くの人の心に希望の花が咲きました

タンタンは、単なる一頭のパンダではありませんでした。神戸市民にとって、そして震災を経験した多くの人にとって、「命の大切さ」と「希望」を教えてくれた、かけがえのない存在だったのです。


放送日時:2025年4月26日(土)20:00〜20:50|NHK総合
番組名:新プロジェクトX〜挑戦者たち〜「復興のシンボル”パンダを守れ〜神戸の動物園が起こした奇跡」

※この記事は放送内容をもとに作成しています。実際の内容と異なる場合があります。最新情報が入り次第、更新を予定しています。

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