バランスのよい人物画 〜顔より脚?〜
2025年5月7日(水)放送のNHK Eテレ『3か月でマスターする絵を描く』第6回のテーマは「バランスのよい人物画」。これまで風景や静物を描いてきた流れから、今回はついに人物画に突入します。講師はおなじみの画家・柴崎春通さん。そして受講生として登場するのは、女優でタレントの山之内すずさんです。今回は「誰でもかっこよく描ける法則」がテーマとなっており、人物画の基本にして最大のポイントとも言える「体のバランス」に焦点を当てた講義が展開されます。
放送後、詳しい内容が分かり次第、最新の情報を更新します。
顔ではなく脚が大事!?人物画の“描き出し”の法則
人物画を描くとき、多くの人は顔から描きたくなります。顔はその人の印象を決める重要な部分であり、つい最初に手をつけてしまいがちです。しかし、柴崎春通さんの講義ではその順序を見直す重要性が語られました。人物の脚の位置こそが、絵全体のバランスを決める最も重要なポイントなのです。
脚の位置は、単に「下にある」だけでなく、全身の重心を左右する土台の役割を担っています。頭や胸など上半身だけで描き進めてしまうと、どうしても姿勢が崩れたり、体全体のバランスが不自然になったりします。特に全身を描く場合は、脚の長さ、傾き、接地面をどう描くかによって、完成する絵の印象が大きく変わってきます。
・脚の起点(股関節の位置)と終点(足先の位置)を正しく把握する
・紙面上で人物の立ち位置と重心の中心を定めてから構図を決める
・左右の脚のバランスや角度のズレが、全体の不安定さにつながる
人物の脚は、見た目のスタイルや印象にも大きな影響を与えます。例えば、やや長めに描いた脚は、実際よりもスラッとした印象を与え、見る人に「カッコよさ」や「美しさ」を感じさせる効果があります。逆に脚の配置や長さがちぐはぐだと、どんなに顔がうまく描けていても、全体が不自然に見えてしまいます。
・脚を基準に頭や胸の位置を上下に割り出すと、自然な人体比率がつくれる
・人物が地面にどう立っているか(接地感)を意識することが安定感につながる
・脚の角度や向きで、モデルがどんな姿勢をとっているかを明確に伝えることができる
このように、顔からではなく脚から描き出すことで、絵の構造が最初から安定します。そして、その安定した構造のうえに、頭部や服などを描き加えることで、結果的に自然でスタイルの良い人物画が完成するというわけです。
初心者にとっては意外なポイントかもしれませんが、柴崎さんが実演を通して丁寧に解説することで、その納得感は高まり、「脚から描く」という手法の大切さがしっかりと伝わる内容となっていました。
頭・胸・脚の比率で整える、プロの基本構図
人物画を描くうえで重要なのが、体全体のバランスを保つことです。そのためには、各パーツを適切な比率で描くことが必要です。今回の放送では、「頭・胸・脚」の3つの位置関係と比率がポイントとして紹介されていました。これらを基準に構図を決めることで、自然な姿勢と美しいバランスのある人物画が仕上がるという内容です。
まず、頭から脚先までを「何頭身」として捉え、均等な目安で区切って体の各パーツを配置する方法が説明されました。頭の高さを1単位としたときに、胸や腰、膝、足の位置がどこに来るのかをざっくり把握しておくと、全身が自然に見えるようになります。
・頭〜胸〜脚を一定の距離で分割することで比率が整う
・横幅や体の厚みではなく、縦のバランスが第一の基準となる
・正面や横向きなど、視点によっても比率の意識を変える必要がある
また、こうした比率を守ることは、単に“整った絵”を描くだけでなく、人物の立ち方やポーズの説得力にも直結します。特に脚の長さや胸の位置が不自然だと、全体の印象がアンバランスになってしまいます。そのため、事前におおよその位置関係をガイドラインとして引いておくことも効果的です。
・モデルの実際のポーズをしっかり観察し、重心の位置を見極める
・骨格や関節の位置を意識すると、動きのあるポーズも再現しやすくなる
・姿勢や動きに応じて微調整する柔軟さも大切
比率の考え方をしっかり取り入れることで、どこかちぐはぐだった人物画が、一気にプロのような安定感を持ち始めます。今回の講義では、この「比率が整っているだけで絵がぐっとよく見える」という基本の大切さを、具体的な例を交えて伝えていました。
初心者がつまずきやすい「どこから描けばいいか」「パーツの大きさが分からない」といった悩みに対して、この比率法則はとても頼れる指針になります。バランス感覚を養う第一歩として、この3点の配置に注目する描き方は、まさに人物画の土台といえるでしょう。
人体を描いてから服を重ねるテクニック
人物画を描くとき、多くの人は最初から服を描こうとしてしまいますが、柴崎春通さんは「まずは体を描くこと」を基本にしています。この順番には大きな意味があります。人体を正しく描くことが、自然な服の表現へとつながるからです。
人体は、骨格・筋肉・関節の構造によって動きや姿勢が決まっています。これを無視して服だけを描いてしまうと、しわの向きや布のたるみ方に違和感が出やすくなります。柴崎さんは、「服は体の上にあるものだから、まずはその“中身”である体を把握することが大事」と講義内で示しています。
・頭〜胴〜脚の基本構造を描いてから服を重ねることで、服の形も自然になる
・服のしわや動きは体の向きや曲がり方に連動しているため、体を描かないと再現できない
・肩や肘、膝などの位置を正確に取ることで、服の形に説得力が生まれる
また、人体を描いた上で服を描くと、体の動きや重心も服に反映されるため、躍動感のある仕上がりになります。 これは静止画でも同じで、服がただ貼りついているのではなく、動きの中にあるような雰囲気を出せるようになります。
さらに重要なのが、「服が体を完全に隠してしまわないようにする」ことです。描いた体のラインを意識的に残し、体の厚みや奥行きを想像させるように描くことがリアルな人物画には欠かせません。
・服を描く際は体のラインをなぞるように描き始めると、自然な形になる
・たとえば袖やズボンのしわは、関節の動きに従って描くとリアルに見える
・布のたるみや伸びも、どこに力がかかっているかを体の動きで判断できる
この手法は、絵を描く上での「順序」に注目した教えです。形の基礎をしっかり描いたうえで装飾に進む、という考え方は、初心者にも応用しやすく、自然な絵づくりの土台になります。
服を描く前に体を描くことで、見た目だけでなく、描く人の「理解力」も深まるというのが柴崎流の狙いです。人物画をより立体的で魅力的に仕上げるためには、この順番がとても有効だといえるでしょう。
山之内すずさん、初の“自画像”に挑戦
今回のモデルを務めるのは、番組のレギュラー受講生である山之内すずさん。第6回目の放送では、ついに自画像の制作に挑みます。自分の顔や体を描くことは、他人を描く以上に難しいとされており、感覚と客観性のバランスが問われます。
・鏡を見ながら自分の顔と体を観察し、そのまま紙に写す練習
・ポーズの取り方、表情、手足の長さなど、すべてを自分自身で意識する
・描くことで、自分の新たな一面に気づける楽しさもある
すでに数回の講義を通して描画技術を習得してきた彼女が、自分自身をどのように表現するのかは、視聴者にとっても楽しみなポイントです。
肌に青や緑を使う?色彩テクニックの秘密
人物画において肌の色はとても大切な要素です。一般的には、肌=ピンクやベージュ系の色で塗るというイメージがありますが、柴崎春通さんはあえて青や緑の色を使って肌を表現します。この方法は、単なる色の選択ではなく、光や空気感を絵に取り入れるための繊細なテクニックです。
肌には赤みがあって当然と思われがちですが、実際の人の肌には、場所や光の加減によってさまざまな色が含まれています。たとえば、影の部分にはほんのり青みがかった冷たい色が入り、血管が透けて見える箇所には緑がかって見えることもあります。柴崎さんはこの自然な色の変化をとらえ、光の当たり方や反射を色で再現するという方法を採っています。
・青は頬や首筋、鼻の下など、柔らかな影を描くのに最適
・緑は肌の透明感や、血の流れを感じさせる部位に使うと効果的
・単色で塗らず、色を少しずつ重ねることで肌の深みが増す
こうした技法を使うことで、完成した人物画は立体感があり、まるで本物のように見える質感になります。肌の色は単に「肌色」を塗ればいいわけではなく、どの部分が冷たく、どこが温かいかを考えて色を置いていくことが、リアルな表現につながるのです。
また、人物の背景や周囲の光源によっても、肌に映り込む色は変わります。柴崎さんは、**周囲の色の影響も考慮しながら肌に青や緑を足すことで、絵の中の空気感までも描き出しています。**これは、プロの画家ならではの視点といえるでしょう。
・青や緑を使うことで単調さがなくなり、自然な立体感が生まれる
・温かい色と冷たい色をバランスよく配置すると、光と影のコントラストが引き立つ
・「目で見えないけど感じる色」を使うことが、絵に説得力を持たせる秘訣
今回の放送では、柴崎さんが実際に描いた参考作品も紹介される予定で、その作品には肌の色づかいにおける緻密さと完成度の高さがよく表れています。静止画でありながら、まるで肌が呼吸しているように見えるその表現力は、ぜひ注目したいポイントです。
色づかいに悩んでいる初心者にも、この技法は新たな気づきを与えてくれるはずです。「肌は肌色だけではない」という発想が、人物画の幅をぐんと広げてくれます。
放送ポイントのおさらい
・人物画は顔より脚の位置が重要
・体の各部位を比率に合わせて描くとバランスが整う
・体を描いてから服を重ねる方法が自然な仕上がりを生む
・モデルの山之内すずさんが初の自画像に挑戦
・肌表現には青や緑の色も効果的に使われる
・柴崎春通さんの参考作品も放送内で紹介予定
『3か月でマスターする絵を描く』は、技術的な話に偏らず、絵を描く楽しさや発見も一緒に学べる番組です。今回の人物画編は、初心者が人物を描くときに感じがちな「難しさ」や「不安」を、具体的な法則や描き方のコツで優しく解消してくれる内容になると予想されます。
放送後にはさらに詳細な情報を追記していく予定です。興味のある方は、番組とあわせてチェックしてみてください。
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