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NHK【探検ファクトリー】京田辺市のサイレン工場へ!ピーポー音誕生秘話と最新フェードイン機能|2025年9月26日

探検ファクトリー

救急車の『ピーポー音』はどこで生まれたのか?サイレン工場探検から見えた最先端技術

救急車の『ピーポー音』。私たちの生活の中で最も耳にする“公共の音”のひとつです。ですが、この音がどのように誕生し、どこで作られているのかをご存じでしょうか。今回「探検ファクトリー」で紹介されたのは、京都府京田辺市にあるパトライト京田辺工場(旧・日本信号関連工場として知られる拠点)。ここは、消防車や救急車のサイレンや赤色灯、操作盤といった「光と音を操る装置」を一貫して生産する、日本におけるサイレン技術の中心地です。この記事では、工場内部の様子や製造工程、改良の歴史、そして『ピーポー音』誕生の秘話をたっぷりお伝えします。

消防車・救急車を支える製造の現場

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パトライト京田辺工場は、年間およそ2000台ものサイレンを生み出しています。1台の赤色灯に使われる部品はおよそ100種類。LED、電子基板、スピーカーなどの精密部品を、熟練の職人が一つひとつ手作業で組み立てていきます。大量生産の工業製品と思われがちですが、実際には高度な職人技が不可欠で、1人が1日に作れるのは6台ほど。数値だけでも、この製品が「簡単に作れるものではない」ということが分かります。
また、光源はかつてハロゲンランプが主流でしたが、耐久性や省エネの観点からLEDに置き換わりました。LEDは明るい一方で光の広がりが狭いという弱点がありますが、工場独自開発のレンズによって横方向に光が広がるよう工夫されています。このレンズには、長年培われた光学設計のノウハウが詰まっているのです。

サイレン音の改良と社会的背景

サイレンの役割は「注意喚起」だけではありません。社会生活との調和が求められています。法令では、サイレンの音量は90dB以上120dB以下と厳しく定められています。しかし深夜の住宅街では「うるさすぎる」という苦情が後を絶たず、工場では音程を半音下げる工夫を導入しました。さらに、サイレンの音をフェードイン・フェードアウトできるように改良。これは病院からの要望によって開発されました。従来のサイレンは急に鳴り止むため、入院患者にとってストレスとなっていたのです。こうした配慮は、やじ馬防止や周辺住民への負担軽減にもつながっています。
さらに、操作盤には「住宅モード」ボタンも搭載。走行環境や時間帯に応じて音を調整できる柔軟なシステムは、日本ならではのきめ細かな技術と言えるでしょう。

操作盤に込められた多様性と進化

パトライト京田辺工場のもう一つの特徴は、操作盤の開発にあります。消防署ごとに設置条件やニーズが異なるため、操作盤はすべてセミオーダーで制作されます。登録可能な音声メッセージは500通り以上あり、「前方に注意してください」「車を避けてください」といったアナウンスが流せるほか、観光地の消防署では外国語対応の依頼が急増しています。国際化が進む地域社会の中で、消防・救急活動も言語の壁を越える必要があり、サイレンだけでなく音声による情報伝達が果たす役割は年々大きくなっています。

過酷な環境を想定した試験場

工場には、製品の耐久性を試す専用の実験場も設けられています。振動耐久試験、耐水試験、音響試験など、多角的なチェックが行われます。さらに、部品を庫内に入れて温度を急激に変化させることで、極寒から猛暑まであらゆる気候条件を再現し、正常に動作するかどうかを確認します。救急車や消防車は災害現場で確実に作動しなければならないため、こうした試験が信頼性を支えているのです。

『ピーポー音』誕生の秘話

救急車の代名詞ともいえる『ピーポー音』。これを初めて開発したのが、先代社長の上岡淑男さんでした。1970年以前、日本の緊急車両はすべて同じ「ウー音」でした。これでは消防団員がサイレンを聞いても、救急車なのか消防車なのか分からず、出動が遅れることが課題となっていました。そこで上岡さんはフランスのパトカーのサイレンを参考に新しい音を試作。1966年には神戸市消防局で試験的に運用され、その後1970年から全国の救急車に導入されました。
『ピーポー音』は「シ」と「ソ」の長3度という音程で構成されており、音楽的に明るい響きを持つ組み合わせです。専門家によれば、この音は患者や周囲の人々に不快感を与えにくく、心理的なストレスを和らげる効果があるとされています。単なる警報音ではなく「人を安心させる工夫」が盛り込まれている点が画期的でした。

技術と社会を結ぶ工場の存在意義

今回の番組を通じて浮かび上がったのは、パトライト京田辺工場が単なる製造拠点ではなく、日本の安全・安心を支える社会インフラの一部だということです。サイレンの音一つにも、医療現場や地域住民への思いやり、国際化への対応といった社会的要請が反映されています。光と音を扱う技術は、常に人々の暮らしとの接点を意識しながら進化しているのです。

まとめ

この記事のポイントは以下の通りです。

  • パトライト京田辺工場は年間約2000台のサイレンを生産する日本の中枢拠点

  • サイレンは音量や音程の調整、フェード機能などを備え、地域社会や患者への配慮が組み込まれている

  • 操作盤はセミオーダーで、500以上の音声メッセージを登録可能。外国語対応も拡大中

  • 『ピーポー音』は1966年に神戸市消防局で試験導入され、1970年から全国標準に。音楽的効果でストレスを和らげる音として評価されている

救急車の音は、ただの騒音ではなく「社会を守る音」であり、人の命を支える技術の結晶です。放送後には、番組で取り上げられたさらなる開発エピソードや工場の最新情報を追記し、未来へと進化するサイレン技術の姿を更新していきます。


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