静物画の魅力を引き出す!補色と省略の技術
2025年4月30日に放送されたNHK Eテレ『3か月でマスターする絵を描く(5)』では、静物画をより魅力的に仕上げるための「色使い」と「描き方の工夫」について学びました。講師は、絵画教室でも人気の画家・柴崎春通さん。今回は、絵の中で主役をしっかり引き立てる「補色の使い方」や、自然な奥行きを生み出す「見えない部分は描かない」という重要な考え方、さらに「水差しの柄を自然に見せるコツ」などが詳しく紹介されました。わかりやすい解説とシンプルなテクニックのおかげで、初心者でもすぐに実践できる内容になっています。
補色を使えば静物画がぐっと引き立つ!
静物画を描くとき、ただ物を並べて色を塗るだけでは、どうしても地味な印象になってしまいます。そこでポイントになるのが「補色」の使い方です。補色とは、色相環で真反対に位置する色同士のことです。例えば、
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赤と緑
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青とオレンジ
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黄と紫
このように、色の組み合わせで強いコントラストが生まれるのが補色です。柴崎さんは、「主役のモチーフを目立たせたいときは、そのモチーフの補色を背景や小物に使う」と教えてくれました。
たとえば赤いリンゴを主役にするなら、背景に緑系のクロスを敷くとリンゴがより鮮やかに見えます。逆に背景まで赤っぽくしてしまうと、リンゴが沈んで見えてしまうので注意が必要です。
補色を上手に使うことで、絵の中に自然なバランスとリズムが生まれ、見る人の目を引きつける魅力的な作品になります。
また、補色は全部に使うのではなく、「主役だけを引き立てるためにピンポイントで使う」のがコツです。絵全体に使いすぎるとごちゃごちゃしてしまうので、色の配置もよく考えながら描き進めることが大切です。
見えないところは描かない!軽やかな静物画を目指すコツ
風景画や樹木の絵でも大切にされる考え方に、「見えにくい部分は描かない」というものがあります。これは静物画でもとても重要なポイントです。物を細かく描き込みすぎると、絵が重たくなり、見る人が疲れてしまいます。
水差しや花瓶などを描くとき、実際には持ち手の裏側や影の中が見えにくいですよね?そんなときは、あえてその部分は描かないようにするのがコツです。
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描かないことで自然な奥行きと空気感が生まれる
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「ここは隠れている」と想像させることで、絵に余白と広がりが出る
柴崎さんは「全部描こうとしない勇気を持ちましょう」とアドバイスしていました。この“省略”こそが、絵に軽やかさや洗練された印象をもたらすのです。
特に初心者は、「ちゃんと描かないといけない」と思いがちですが、描かないことでかえって絵が良くなるというのはとても大切な考え方です。
水差しの柄を自然に見せる描き方
静物画でよく使われるモチーフのひとつが「水差し」です。水差しには取っ手(持ち手)がついていますが、これを不自然に描いてしまうと、どんなに他が上手くても全体が台無しになってしまいます。
柴崎さんが教えてくれたコツは、
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持ち手を器の曲面に沿わせるように描くこと
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付け根部分をしっかり描き、途中は軽く自然に消していくこと
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線をくっきり描きすぎないで、やわらかく空気に溶け込むようにすること
水差し本体を描き終えたら、持ち手を「後からさらっと足す」くらいの感覚でいいそうです。持ち手を目立たせすぎると不自然になるため、器の一部としてさりげなく存在させることが大切です。
また、柄の線を引くときは、「本体の立体感に合わせてカーブさせる」意識を持つと、自然な立体感が出せます。
水差しのような曲面のある物体では、パース(遠近感)を意識して描くことも重要です。ただし、厳密に測る必要はなく、目で見て自然に感じるカーブを素直に表現するのが一番です。
平筆だけで表現できる!布のふわっと感
番組の後半では、「平筆1本で布の凹凸を描き分ける」という驚きのテクニックも紹介されました。
普通は細い筆で細かく影を描きたくなりますが、柴崎さんは平筆だけを使っていました。その方法はとてもシンプルです。
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明るい部分→筆を寝かせて広く色を置く
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暗い部分→筆の角だけを使ってトントンと色を置く
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影の中間→筆を少し立てて軽くなでる
このように、筆を持つ角度と力加減を変えるだけで、布のふんわりとした厚みや柔らかさを表現できるのです。
また、色もグラデーションを意識して自然につなげることで、シワやふくらみをリアルに表現できます。柴崎さんは、「筆に水分を残しすぎないこと」と「一筆ごとにしっかり観察してから塗ること」が大切だと説明していました。
このテクニックを使えば、道具をたくさん用意しなくても、短時間で布の質感を出すことができます。初心者にとってとても実践しやすい方法です。
まとめ
今回の『3か月でマスターする絵を描く(5)』では、静物画を魅力的に描くための「色」と「描き方」の工夫がたくさん紹介されました。特に重要だったポイントは、
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補色を使って主役を引き立てる
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見えにくい部分はあえて描かず省略する
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水差しの柄は自然に添わせて軽やかに描く
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平筆だけで布の凹凸を表現するテクニック
どれも簡単なようで、実際に描くときには意識して取り入れると絵の完成度がぐんと上がります。これから静物画に挑戦する人は、今回学んだコツを思い出しながら、ぜひ自分の作品作りに活かしてみてください。
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