静物画の配置と色のコツ大公開!補色と省略で魅せるテクニック
2025年5月6日にNHK総合で放送された『3か月でマスターする絵を描く』の第5回は、「配置と色で決まる!魅せる静物画」がテーマでした。講師の柴崎春通さんが、静物画をぐっと魅力的に見せるための工夫を実演を交えて解説しました。配置や色のバランス、光と影の使い方、細部の省略、布や果物の描き方など、初心者が見てもわかりやすく、すぐに真似したくなるテクニックが満載の内容でした。今回はその放送内容をくわしくご紹介します。
静物の配置で絵の奥行きを作るコツ
番組の最初に紹介されたのは、静物の置き方の工夫です。柴崎さんは、**「奥の方に大きいものを、手前に小さいものを配置する」**と説明しました。この置き方にすると、絵の中に自然な奥行きが生まれて、立体的で広がりのある構図になります。
また、すべてを均等に並べるのではなく、少しだけ斜めに置いたり、左右のバランスをあえてずらしたりすることで、見た目が単調にならず動きのある絵になります。こうしたちょっとした工夫だけで、絵全体の印象が大きく変わることが紹介されました。
さらに、静物の並び方だけでなく、前にある物と後ろにある物の重なり具合や影の入り方にも注意することで、空間の奥行きがよりリアルに見えるようになります。
魅せる色づかいには「補色」を活用する
次に紹介されたのが、色の使い方です。静物画では、色同士のバランスがとても大切で、間違った組み合わせだと、モチーフが背景に埋もれてしまうこともあります。そこで登場したのが「補色」の考え方です。
補色とは、色の輪(色相環)で正反対にある色同士のことです。代表的な組み合わせには、次のようなものがあります。
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赤と緑
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青とオレンジ
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黄色と紫
こうした補色の組み合わせは、お互いの色を引き立てる力があり、モチーフをより目立たせたいときに使うと効果的です。たとえば赤い果物を主役にしたいときは、背景に緑を使うと、果物の赤が鮮やかに映えて目を引く絵になります。
また、補色を使うときは、絵全体を派手にしすぎないように気をつける必要もあります。目立たせたい部分だけに補色を使い、他の部分は落ち着いた色にすることで、主役がはっきりし、画面にメリハリが出てバランスのよい仕上がりになります。
下絵は観察から始めて形をつかむ
配置と色の話のあと、柴崎さんは実際に絵を描きながら、下絵の描き方を教えてくれました。最初は大まかに物の位置を決めてから、それぞれの形を観察して描いていきます。ここで大事なのは、いきなり細かく描き込まずに、大きな形をとらえることです。
まずは丸や四角など簡単な形で全体のバランスをとり、そこから少しずつ輪郭や角度を調整していきます。形が決まってから細かい部分に移ることで、全体が崩れずにまとまった絵になります。
また、見る角度や光の当たり方によって見える形が変わるので、観察を丁寧に行うことが下絵を上手に描くコツです。
白い水差しを塗るときは色のなじみを意識する
続いて描かれたのは、白い水差しです。白はそのままだとのっぺりして見えることがありますが、周りの色を少しだけ混ぜたり、日向と日陰で色を分けたりすることで、自然な立体感が出ます。
柴崎さんは、背景や果物と色味が似るように水差しの色を調整していました。白でもほんのり黄色やグレーを混ぜて、絵全体になじませることで、水差しが浮いて見えず、自然に風景に溶け込んでいました。
さらに日向部分には明るい色を重ねて光を表現し、日陰部分はくすんだ色を塗ることで陰影がくっきりと表現されました。
背景の明暗で物の印象が変わる
次に背景を塗っていく工程では、ただ塗りつぶすのではなく、背景にも光と影を描くことで立体感を高める工夫が紹介されました。明るい部分と暗い部分をつくることで、前にあるモチーフとのコントラストが生まれ、物がくっきり浮き立って見えます。
また、果物を塗るときには、周囲の布が反射して見える部分も描くことで、果物の色がより自然でリアルに見えるようになります。このように、色の映り込みを意識すると、静物画の完成度が一気に高まります。
水差しの柄は「描かない」ことで自然に見える
水差しには花の模様が描かれていましたが、柴崎さんはすべてを細かく描かず、見えにくい部分は省略するようにしていました。柄をくっきり描きすぎると、水差しの形が歪んで見えることもあるため、目立たせたい部分だけ軽く描いて、他はぼかすことで、自然な印象になります。
この「見えにくい部分は描かない」という考え方は、静物画だけでなく風景画などにも通じる大切な技法です。全部描こうとせず、見る人に想像させることで、絵に余白と空気感が生まれます。
布の明暗で立体感を強調する
布の描写では、光が当たっている部分と影になっている部分の違いをはっきりつけることで、布のふわっとした質感や凹凸を表現できます。特に影の部分は、明るい色を塗るのではなく塗り残すことで、立体感が出やすくなります。
このように、光を描くというよりも、影を残すことで光が生まれるという考え方が、とてもわかりやすく紹介されていました。
テーブルに奥行きを出すための工夫
テーブルの奥行き感を出すためには、手前を明るく、奥を暗くするという方法が使われました。手前ほど鮮やかで暖かい色、奥にいくほどくすんだ色を使うことで、見る人の目が自然と奥へ引き込まれていきます。
この工夫により、平面的な構図でも空間の広がりが感じられる仕上がりになっていました。
補色の布と平筆だけで仕上げるラスト工程
仕上げに使われたのは、補色の緑を使った布の塗り方です。柴崎さんは平筆だけを使い、明るい部分は筆を寝かせて広く塗り、影の部分は筆の角を使ってトントンと色を置くというテクニックを紹介しました。
筆の持ち方を変えるだけで、布の柔らかさや凹凸がリアルに表現され、複雑な道具や筆を使わなくても簡単に奥行きのある絵が完成する様子が描かれていました。
完成した静物画は、色と構図、光と影、細部の描き分けが見事に調和した仕上がりで、見る人の目を引く作品となっていました。
次回の放送でも、さらに深いテクニックが紹介されることが期待されます。初心者でもわかりやすく、絵を描く楽しさが広がる『3か月でマスターする絵を描く』シリーズは、これから静物画に挑戦したい人にぴったりの番組です。
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