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NHK【時をかけるテレビ】見えず聞こえずとも…京都・丹後の里山で夫婦が育んだ奇跡の絆(2025年6月20日放送)

時をかけるテレビ

池上彰 見えず聞こえずとも 夫婦ふたりの里山暮らし

2025年6月20日放送の「時をかけるテレビ」では、2015年に放送された「NHKスペシャル 見えず聞こえずとも ~夫婦ふたりの里山暮らし~」を再び紹介。視覚と聴覚に障害を持つ女性と、それを支える夫の心温まる共同生活を描いたドキュメンタリーが、池上彰さんの案内のもと再び多くの視聴者に届けられました。今回は、北斗晶さんと佐々木健介さん夫妻をゲストに迎え、夫婦の絆について深く掘り下げながら、里山での暮らしの魅力と、その中にある小さな幸せを丁寧に伝えていきました。

京都・丹後半島で紡がれる静かな日常

舞台は京都府京丹後市弥栄町中津。自然豊かなこの地で暮らすのは、梅木好彦さんと久代さんの夫婦です。好彦さんは30年以上前にこの土地に移り住み、自給自足の暮らしを目指して農業を始めました。14年前に出会った久代さんは、目が見えず、耳も聞こえないという重複障害を持ちながらも、前向きに生きてきた女性です。夫婦は手話や触手話という方法を使って、心を通わせながら暮らしています。

久代さんは、手の感覚だけを頼りに料理をしたり掃除をしたりしており、夫のために毎朝お弁当を用意します。好彦さんはその日課を大切に思い、朝の連続テレビ小説を2人で観ることを毎日の習慣としています。好彦さんは**「触手話」と呼ばれる方法で、ドラマの内容を久代さんの手を通して伝え**、そのやりとりが夫婦の絆を深めていました。

畑へ向かう夫、家を守る妻

農作業に出かける好彦さんは、車で20分離れた味土野地区にある作業小屋で農業に励みます。彼はこの地で以前一人暮らしをしていた経験があり、今も複数の畑を管理しています。一方、久代さんは自宅で掃除をし、浴室のわずかな汚れやぬめりも手で感じ取って掃除します。掃除を終えると、パソコンでメールを打ち、昼休みに戻る夫へメッセージを送るなど、日常の中でも細やかな思いやりが感じられました。

ふたりの人生と出会いの物語

好彦さんは、もともと集団生活を通じて農業を学びながら生きる道を選んだ人で、全国を旅して自分に合う土地を探し、丹後半島にたどり着きました。当初はひとりで理想の生活を送っていましたが、40代で気持ちに変化が訪れ、視覚障害者を支援する活動に関わるようになります。そのボランティア活動の中で出会ったのが、久代さんでした。

久代さんは大阪・岸和田で生まれ、2歳で耳が聞こえなくなり、のちに視力も失いました。若い頃は和裁士の資格を取得し、手に職をつけようと努力していましたが、最初の結婚はうまくいかず、その後に訪れた視覚の喪失により、絶望から自殺を試みたこともありました。そんな時、医師の「心の中の目が大切」という言葉に救われ、少しずつ気持ちが変わっていきました。

40代で触手話という方法を知り、人との関わりを持てるようになった久代さんは、外出の機会を増やし、その中で好彦さんと出会いました。当初は手話もままならなかった好彦さんですが、次第に会話ができるようになり、2人は交際をスタート。2001年に結婚し、丹後半島で共に暮らすようになりました。

触れることで伝え合う日々

農作業の合間や、冬の休耕期には、2人で散歩に出かけ、季節の移ろいを触手話で伝え合う日々が続きます。久代さんは苔玉に水をやり、毎日指先で植物の変化を確かめることが新たな楽しみになりました。ある日、小さな新芽が出たことを夫に報告する姿は、静かでありながら深い喜びに満ちていました。

丹後半島の冬はとても厳しく、好彦さんはかんじきを履いて山奥の作業小屋を見に行くこともありました。この作業小屋は、2人が一緒に暮らし始めた思い出の場所でもあります。しかし、生活環境が過酷だったため、現在は里の集落に住まいを移し、暮らし方も少しずつ変化しています。買い物に出かけたり、久代さんの好みに合わせて食材を選ぶことも、今では日常の一部となっています。

再び訪れたかつての我が家と春の訪れ

2015年春、2人は結婚15年目を迎えました。その日は朝食を一緒に取り、朝ドラを楽しんだあと、久しぶりに山の家へ出かけました。2年ぶりに訪れた場所は雪の重みで屋根が壊れており、2人は修理作業に取り組みました。久代さんは室内の掃除をし、昼には自分で作った料理で一緒に食事を楽しみました。

家の前には春を告げる福寿草が咲き、好彦さんはその場所まで久代さんを手を引いて案内しました。久代さんはその福寿草を自宅に持ち帰り、大切に飾ることで、思い出の一日が色濃く心に刻まれました。

現在の久代さんと、好彦さんの旅立ち

今回の再放送では、久代さんの現在の暮らしについても紹介されました。2025年現在、久代さんは75歳となり、京都府内の施設で生活をしています。夫の好彦さんは2019年に亡くなりました。久代さんは、天国にいる夫に向けて、「生きているあいだ守ってくれてありがとう」と語りました。

スタジオでは、北斗・佐々木夫妻がこのドキュメンタリーを振り返り、手を握ることの大切さや、お互いに支え合う姿が心に残ったと述べていました。

この放送を通して、障害があっても誰かとつながりながら生きる喜び、自然と共にある暮らしの中で紡がれる夫婦の絆、そして手のひらに込められた思いの力が、多くの人の心を優しく照らしました。

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