夏の風物詩・線香花火の工場へ
福岡県みやま市にある「筒井時正玩具花火製造所」が、NHK「探検ファクトリー」で特集されます。日本でも数少ない国産線香花火の工場を舞台に、中川家とすっちーがその魅力を探っていきます。江戸時代から続く伝統と、科学的な視点で解き明かされる火花の不思議、そして職人の手仕事に注目が集まる25分間です。
筒井時正玩具花火製造所とは
番組の舞台となるのは、福岡県みやま市にある「筒井時正玩具花火製造所」です。1929年に創業し、現在は三代目の筒井良太さんと今日子さん夫妻が伝統を受け継いでいます。かつて福岡県八女市にあった線香花火製造所の技術を引き継ぎ、国内でも数少ない“本物の国産線香花火”を今も作り続けています。原料には、宮崎産の松煙や八女産の手すき和紙など、国産の自然素材が使われています。
この工場では、東日本で見られる「紙巻きタイプ(長手牡丹)」と、西日本に伝わる「わら巻きタイプ(スボ手牡丹)」の両方を製造。特にスボ手牡丹は、国内でもここだけが作る貴重な伝統花火です。
工場探検で見えた線香花火のすごさ
線香花火の魅力を深く知るために訪れたのは、福岡県みやま市にある老舗の線香花火工場。この工場では、年間およそ20万本もの線香花火が手作業で作られています。現在、日本国内で線香花火を製造しているのはたったの3社しかなく、その貴重な1社として全国に伝統を守り続けています。
線香花火には大きく分けて2つの種類があり、東日本で親しまれているのが「長手牡丹」、**西日本で多く使われているのが「スボ手牡丹」**です。特にスボ手牡丹は竹ひごを使ったスタイルで、日本最古の形状とも言われている“元祖線香花火”。竹の持ち手に紙で包んだ火薬が巻きつけられていて、素朴な見た目が特徴です。
昔ながらの染色と手仕事の技術
製造工程の最初は、火薬を包むための和紙を染める作業から始まります。この染色には伝統的な技法が使われており、色合いの中でもとくに「緑色」が線香花火の仕上がりにとって重要な役割を果たします。和紙に色を入れることで、見た目の鮮やかさだけでなく、燃焼時の見映えにも影響するため、ひとつひとつ手作業で丁寧に染められています。
その後、染めた和紙に火薬を包む作業が行われます。紙を巻きつける際にできる「羽根」の角度が大事で、羽根の開き具合を45度に保つことが、火花が放射状に美しく広がるためのコツです。さらに、紙のねじれの強さにもこだわりがあり、首をしっかりと締めることで花火としての安定性と持続力が増すといいます。
日本の手しごとの象徴としての線香花火
こうした細やかな工程を経て完成する線香花火は、手作業の積み重ねによって一つひとつ表情が異なるのが特徴です。大量生産では出せない味わいと、江戸時代から続く0.08gという正確な火薬量の伝承が、この小さな花火に込められています。
工程のすべてに意味があり、熟練の職人たちが守る技術によって、日本の夏の風物詩として今日まで受け継がれている線香花火。そのひとつひとつに、日本人の美意識と感性が宿っていることが、今回の工場探検を通してよく伝わってきました。
線香花火はわずか0.08gの火薬で魅せる
線香花火の芯の部分にあたる「首」をしっかりとねじることで、火薬が包まれた部分の強度が上がり、火の玉が落ちにくくなるという特徴があります。このねじり加減は熟練の技に頼る部分が大きく、和紙には目安として緑の線が印刷されており、それを基準に均一なねじりが行われているのです。細かい作業が繰り返されることで、完成度の高い花火が生まれます。
火薬の量は江戸時代から受け継がれている0.08gという非常に小さな分量。それでも線香花火は、わずか数十秒の間に**「蕾」→「牡丹」→「松葉」→「散り菊」**という美しい4段階の変化を見せてくれます。この繊細な変化は長年、なぜ1種類の火薬で可能なのか謎とされてきました。
この不思議を解き明かしたのが、九州大学の准教授による研究です。その解説によると、蕾の段階では火薬がまだ完全に燃えきっておらず、小さな火玉がじっとしている状態。続く牡丹では、ガスが発生してしずくのように弾け飛び、それが火花に変わります。松葉になると、その火花がさらに空中で細かく分裂し、シャラシャラとした動きに。そして最後の散り菊では、ガスが尽きていき、残った火薬が静かに燃え尽きる姿となるのです。
たった一種類の火薬でありながら、熱の変化や燃焼速度、ガスの発生量によってさまざまな表情が現れる線香花火。その構造はとてもシンプルですが、自然の力と人の知恵が重なり合ってできた、奥深い芸術のような存在です。
長持ちさせるコツを知って花火名人に
線香花火をできるだけ長く楽しむためには、ちょっとしたコツを知っておくことが大切です。今回の番組では、線香花火の魅力をより深く体感するために「線香花火長持たせぐっちょ大会」が開催され、プロの花火職人・中尾さんと中川家&すっちーが真剣勝負を繰り広げました。火薬の量や作り方はすべて同じでも、ちょっとした持ち方や準備の違いだけで、燃えている時間に差が出るという奥の深さが紹介されました。
とくに線香花火を長持ちさせたいときに注目したいのが、「首のねじれ」「角度」「選び方」の3つ。それぞれのポイントは以下の通りです。
| コツ | 説明 |
|---|---|
| 首がしっかり締まった花火を選ぶ | 首の部分がゆるいと火薬が早く落ちてしまうため、締まりの良いものは安定して長く持ちます |
| 首が緩い場合は自分でねじる | 締まりが甘いと感じた場合は、紙を外側から軽くねじることで火薬がより密着し、火の玉が落ちにくくなります |
| 火の玉と紙の角度を45度にする | 点火時に線香花火を斜めに持つことで、火薬の玉と紙の接地面が増え、火が安定して続きやすくなります |
実際の勝負では、礼二さんが中尾さんをおさえて見事に勝利。職人の指導のもと、コツを取り入れたことで素人でもプロに勝てるという結果が印象的でした。
線香花火は、見た目の華やかさだけではなく、その裏にある繊細な手仕事と自然の理が組み合わさった日本独自の伝統文化です。たった数秒の火花にも、職人の技と知恵が詰まっていることを感じられる、そんな時間が味わえます。
今回の放送を見たあとでは、線香花火の美しさをただ楽しむだけでなく、少しの工夫でより長く、美しく咲かせる楽しさに気づく人も多いかもしれません。夏の夜に、もう一度ゆっくり線香花火を手に取ってみたくなる、そんな気持ちを呼び起こしてくれる特集でした。
線香花火をいちばんきれいに楽しむための時間とコツ

ここからは、私からの提案です。線香花火は、繊細な火花の動きと色の変化を楽しむ花火です。その美しさを最大限に引き出すには、「時間帯」「環境」「持ち方」の3つがとても大切です。少しの工夫で、いつもより長く、もっと美しく火花を楽しめるようになります。
夜の暗さと風の静けさが重要
線香花火がいちばんきれいに見えるのは、完全に日が沈んで、あたりがしっかり暗くなってからの時間です。とくに夜の8時以降は、周囲の明かりが減り、火花がくっきりと見える時間帯になります。周囲がまだ明るいと、火玉の細かい分裂や輝きが目立たなくなってしまいます。
そしてもうひとつ大切なのが風がないことです。線香花火の火玉はとても軽くて小さいので、少しの風でも形がくずれたり、すぐに落ちてしまったりします。庭の壁ぎわや建物のかげなど、風が入りにくい場所を選ぶことで、火花が静かに広がり、枝分かれする様子がよく見えるようになります。
背景を暗くすると火花が映える
線香花火を楽しむときは、背景の色にも気を配ると、さらに美しく見えます。白い服や明るい背景だと火花が見えにくくなるので、黒や紺などの暗い色の背景を背にするのが理想です。たとえば、黒いTシャツを着て花火を持ったり、暗い植え込みの前で楽しんだりすると、火花の輪郭がはっきり浮かび上がります。
また、スマートフォンで撮影したい場合は、ナイトモードや明るさ調整機能を使うと、火花の輝きをよりリアルに残すことができます。撮る角度も正面よりも斜め下から狙うと、火花の流れが立体的に映ります。
楽しむときのポイントまとめ
| ポイント | おすすめ条件 |
|---|---|
| 時間帯 | 夜20時以降の完全な暗がり |
| 場所 | 風の入らない壁ぎわや庭の一角 |
| 背景 | 黒や紺などの暗い背景・服装 |
| 持ち方 | 斜め45度にして火玉が安定しやすく |
| 撮影 | ナイトモード使用・固定撮影でブレ防止 |
少しの工夫で、線香花火はさらに幻想的に楽しめます。今年の夏は、暗くて静かな場所で、ゆっくりと火花の一瞬のきらめきを味わってみてください。息をひそめて見守る時間もまた、線香花火の魅力のひとつです。
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