「ダーウィンが来ちゃった!豪・タスマニア編」
2025年8月17日に放送されたNHK総合「ダーウィンが来た!」では、オーストラリア南部のタスマニア島を舞台に、絶滅とされる動物や独特の生態を持つ生きものたちを紹介しました。この記事では、番組で取り上げられたすべてのエピソードをわかりやすくまとめ、タスマニアタイガーの謎やコガタペンギンの行進、ウォンバットの暮らし、巨大ザリガニの存在まで詳しく解説します。この記事を読むことで、タスマニアの自然の奥深さと今も続く生きものたちの物語が理解できます。
幻のタスマニアタイガーは生きているのか?
今回の特集で最大の注目は、タスマニアタイガー(フクロオオカミ)です。今から約90年前に絶滅したとされるこの動物は、かつて羊や牛などの家畜を襲う害獣として人間に恐れられ、大量に駆除されてきました。その結果、最後の個体は1930年代に動物園で命を落としたと伝えられています。人類の歴史の中で姿を消したとされる生き物ですが、その存在は今なお強い関心を集めています。
驚くべきことに、現在も1200件以上の目撃情報が寄せられており、その中でも250件以上は信憑性が高いと考えられています。島の住民や研究者が語る目撃談は多岐にわたり、「夜の森で奇妙な姿を見た」「犬ともオオカミとも違う鳴き声を聞いた」など、具体的な証言も少なくありません。こうした情報は、単なる噂にとどまらず、研究対象として検証され続けています。
番組の中では、これまでに発見された足跡や動物の骨が紹介されました。しかし、最新のDNA鑑定にかけても確実な証拠は得られず、種を特定するには至りませんでした。それでも「もしかしたら」という期待を抱かせるような手がかりが散見され、人々の想像をかき立てています。
さらに、島の南西部には「タイガーロード」と呼ばれる場所があり、その名の通りタスマニアタイガーの目撃情報が相次いだ地域です。番組では最新技術を駆使し、サーモドローンを使った夜間調査が行われました。体温を感知できるドローンを活用することで、密林に潜む生物を映し出そうとしましたが、残念ながら有力な証拠は発見されませんでした。
それでも、タスマニアタイガーは今も「幻の生きもの」として多くの人を惹きつけ続けています。姿を消したはずの動物がどこかに生き残っているのではないかという希望は、島に住む人々だけでなく、世界中の自然愛好家や研究者の心を掴んで離さないのです。
夜の街に現れるコガタペンギン
タスマニア島北西部のスタンリー地区では、夜になると不思議でかわいらしい光景が広がります。そこには、体長わずか40cmほどのコガタペンギンが、街の通りをゆっくりと行進する姿が見られるのです。このペンギンは世界で最も小さい種類で、小さな体ながらも力強く海を泳ぎ、夕方になると陸に上がって巣へと帰っていきます。
本来、彼らの住処は海岸沿いの岩場でした。しかし、人間の生活圏にも適応し、今では建物の隙間や家の下といった街中のスペースを巣として使うようになりました。まさに自然と人間の暮らしが重なり合う、珍しい共生の形です。そのため町の至るところには「ペンギン出没注意」と書かれた標識が立てられ、住民たちもペンギンが安心して歩けるように見守っています。
さらに、この光景は観光資源としても人気を集めています。夜のスタンリーに訪れる旅行者は、街灯の下を並んで歩くコガタペンギンを一目見ようと集まり、その可愛らしい姿に歓声をあげます。ニュージーランドでも同じ種が見られますが、住宅街や観光地の通りを行進するのはタスマニアならではの特徴です。自然と人間が調和して生み出したこの街中ペンギンの姿は、訪れる人々の心を惹きつけてやまないのです。
ウォンバットが掘る謎の穴
タスマニア島の北東部に広がる牧場地帯を歩くと、あちこちの地面に無数の穴が空いていることに気づきます。その正体は、島の固有種であるウォンバットの巣穴です。体長はおよそ80cmほどで、丸みを帯びた体型と短い足が特徴の草食動物。見た目はずんぐりとして愛らしく、一目見るだけで心をつかまれる存在です。
ウォンバットは有袋類であり、カンガルーやコアラと同じ仲間です。お腹には袋があり、子どもを安全に育てることができます。特にユニークなのは、袋の入り口が後ろ向きになっている点です。これは、地面を掘るときに土が袋の中に入り込まないようにするための進化と考えられています。
彼らは鋭い前足の爪を使って、硬い地面をどんどん掘り進めます。やがて地下には広々としたトンネル状の巣が出来上がり、そこが住みかとなります。こうした巣穴は涼しく安定した環境を保つことができるため、真夏の暑さや冬の寒さをしのぐのに最適です。
ただし、牧場の土地にも数多くの穴が空いてしまうため、農業や放牧を営む人々にとっては頭の痛い問題でもあります。家畜が足を取られたり、土地の管理に支障をきたすこともあり、共存の難しさが浮き彫りになります。それでも、ウォンバットののんびりとした姿や穏やかな性格から、地域では「愛されキャラ」として親しまれています。
このように、牧場に残る無数の巣穴は、人間の営みと自然が交差するタスマニアらしい風景のひとつとなっているのです。
世界最大のザリガニ「タスマニアオオザリガニ」
さらに番組では、タスマニア島の清流に生息する驚きの生きもの、タスマニアオオザリガニが紹介されました。このザリガニは世界最大級の淡水ザリガニとして知られており、その大きさはなんと体長60cm以上、重さは最大2.6kgにも達します。通常のザリガニの姿を思い浮かべると、その圧倒的な大きさに驚かされます。
特に注目すべきは、その大きなハサミです。鋭く力強いハサミは、主に縄張りをめぐる争いに使われ、川底で繰り広げられる戦いはまさに迫力満点。小さな甲殻類のイメージを覆す堂々とした存在感があります。
さらに、このザリガニは非常に長寿であり、野生でも60年近く生きる個体が確認されています。これは甲殻類としては異例の長さで、ゆっくりと成長しながら川の生態系の一員として生き続ける姿は、自然の神秘を感じさせます。
しかし近年では、生息地の環境悪化や乱獲の影響によって数が減少し、絶滅危惧種に指定されています。そのため、研究者や地元の人々による保護活動が進められており、川の水質保全や生息環境の維持が重要な課題となっています。
この巨大ザリガニは、タスマニアの自然の豊かさを象徴する存在です。川の中でゆったりと暮らすその姿は、島が誇る固有の生態系の貴重さを改めて感じさせ、人と自然が共に守るべき宝であることを伝えていました。
人間と共に生きるタスマニアの生物たち
番組の最後では、タスマニア島に暮らす動物たちが、今もなお人間の活動から大きな影響を受けていることが強調されました。かつてタスマニアタイガーが駆除や開発によって姿を消したように、島に生息する多くの固有種もまた、道路建設や森林伐採、環境の変化によって絶滅の危機にさらされています。
そのため、研究者たちは新たな取り組みを始めています。島のあちこちに大量のカメラを設置し、動物たちの行動や人間との関わりを長期的に記録するプロジェクトです。これにより、どのエリアで人間の活動が生態系に影響しているのか、どんな種が減少しているのかを詳細に把握することができます。
こうして集められたデータは、絶滅の危機に瀕した動物を守るための重要な手がかりとなります。実際に解析結果をもとに保護区の設定や人間活動の規制を検討するケースも増えつつあり、科学的な根拠に基づいた自然保護が進められているのです。
タスマニアの豊かな自然は、動物たちだけでなく人間にとってもかけがえのない財産です。今回の番組は、その自然を未来に残すために、人と動物がどう共存していくかという課題を私たちに投げかけていました。
まとめ
今回の「ダーウィンが来た!」は、幻のタスマニアタイガーを軸に、タスマニア島の豊かな自然と独特な生きものたちを紹介しました。コガタペンギンが街を行進する姿、ウォンバットが掘る広大な巣穴、世界最大のタスマニアオオザリガニの存在は、まさに驚きの連続でした。そしてそれ以上に、人間の活動が動物たちの運命を左右する現実を伝えていました。タスマニアの自然は不思議と魅力にあふれていますが、それを守る努力がこれからますます重要になることがわかります。
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