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NHK【最深日本研究】〜外国人博士の目〜 鉄道を知りたい|乗り鉄文化と観光列車の魅力を解明!(2025年9月9日放送)★

最深日本研究

最深日本研究 〜外国人博士の目〜 鉄道を知りたい

2025年9月9日に放送されたNHK総合「最深日本研究〜外国人博士の目〜」は、日本の鉄道をテーマにした深い特集でした。観光社会学者の安ウンビョルさんが、来日9年の研究の中で見えてきた「日本人と鉄道の特別な関係」に迫ります。鉄道は単なる移動手段ではなく、乗ること自体が目的や体験になる――その独特な文化が丁寧に描かれていました。

鉄道を研究する外国人博士の視点

安さんは韓国出身で、東京大学大学院で博士課程を修了。研究テーマは「モビリティーズ研究」という新しい学問分野で、人々の「移動」そのものに価値を見出す試みです。彼女が着目したのは、日本人が鉄道をどのように利用しているかということ。単に目的地へ向かうためではなく、鉄道に乗ること自体がレジャーや趣味、さらには生活文化として根付いているのではないかという仮説を立てています。

本屋の棚には鉄道関連書籍や雑誌が並び、海外では廃刊が進む紙の時刻表が今も発行され続けています。しかも毎号2万部もの時刻表が売れるという事実に、安さんは日本人の鉄道愛の強さを感じ取っていました。鉄道が学術研究の対象になるだけでなく、日常の文化としても大切にされているのです。

乗り鉄と秩父鉄道の調査

番組では、埼玉県を走る秩父鉄道での調査の様子が紹介されました。安さんは中央大学鉄道研究会の学生と合流し、始発駅から終点までの「乗りつぶし」に同行。あえて会話に参加せず、少し距離をとって観察する「モバイル・エスノグラフィー」という手法を用い、研究会のメンバーがどのように鉄道を楽しんでいるかを克明に記録していきました。

学生たちは車両の床下から響くモーター音に耳を澄まし、番組スタッフのマイクを使って録音。鉄道ファンならではの細やかな楽しみ方が垣間見えます。安さんは次々とノートに書き込み、鉄道に乗る行為そのものが人々に特別な感覚を与えていることを確かめていました。

特別列車が生み出す観光体験

安さんの研究のもうひとつの柱が「観光列車」です。彼女は学生時代から全国の鉄道を乗り歩き、特別列車の多様さに魅了されてきました。例えば「わたらせ渓谷鐵道」では、週末限定で運行されるディーゼル機関車の特別列車に乗車。昔ながらの客車スタイルで、トンネルを抜けると天井にイルミネーションが広がる演出がありました。

こうした仕掛けは、鉄道を単なる交通機関ではなく「観光の目的地」に変えるものです。全国に180以上ある観光列車の存在は、日本が「観光列車大国」と呼ばれる理由のひとつ。安さんはこれを「環境目的地化」と定義し、観光そのものを演出する仕組みを「上演論」という社会学の手法で分析していました。

地域と共に生きる地方鉄道

番組では、赤字でも走り続ける地方鉄道の姿にも光が当てられました。わたらせ渓谷鐵道の前身・足尾線は、40年前に廃線の危機に直面しました。しかし、沿線住民の「鉄道は地域の象徴」という強い思いが存続運動を生み、自治体と協力して鉄道を守り抜きました。今も赤字経営ではあるものの、地域住民の支えで運行が続いています。

安さんはこの姿に強い関心を寄せ、経済合理性だけでは割り切れない日本人と鉄道の絆を感じ取っていました。鉄道は単なる輸送手段を超え、地域の誇りであり、生活文化を象徴する存在になっているのです。

SLと新幹線、日本独自の鉄道文化

安さんが週に一度教鞭をとる高崎では、SL(蒸気機関車)が観光列車として運行されています。ファンの要望で40年前に復活したこのSLは、鉄道黄金期の記憶を現代に残す存在です。懐かしさを大切にし、古き良き時代を楽しむ文化もまた、日本ならではと安さんは語ります。

一方で、日本は高速鉄道「新幹線」を世界に先駆けて実用化しました。1960年代、世界的に鉄道事業が衰退していた時代に逆行するように誕生した新幹線は、日本人に鉄道への信頼を与え、鉄道文化を一層広げました。懐古と革新が同時に存在する――これが日本の鉄道文化の大きな特徴です。

まとめ

今回の「最深日本研究」では、日本人と鉄道の関わりが多角的に描かれました。鉄道は目的地に行くための道具でありながら、同時に「旅の目的」にもなる存在です。観光列車、SL、新幹線、さらには赤字でも残る地方鉄道――いずれも日本人の暮らしや文化に深く根ざしています。

安ウンビョルさんの研究は、日本人が無意識に大切にしている「鉄道と共にある生活」を見つめ直すきっかけを与えてくれました。鉄道が移動手段以上の意味を持ち、世代や地域を超えて人々をつなぐ文化であることを改めて実感できる内容でした。


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