高齢者の“運転寿命”はどこで決まる?家族と本人の間にある本当のギャップ
家族に高齢ドライバーがいると、「この先いつまで安全に運転できるのか」を気にする場面が増えていきます。本人は自信があっても、家族は事故のリスクを考えて心配になることも少なくありません。『運転寿命』という考え方は、このズレを埋めながら、客観的に運転能力を知るための手がかりになります。今回の『クローズアップ現代』では、桑子真帆アナウンサーの案内で、高齢者の運転をめぐる最新研究や地域の取り組みが紹介されました。この記事では、放送内容をもとに、目の働き・脳の負荷・運転のクセ・AI診断など、運転寿命を考えるうえで知っておきたいポイントをまとめます。
家族と本人で違う“運転寿命”の認識
70歳以上の高齢者を持つ家族へアンケートを行うと、「免許返納を勧めたい」「勧めたことがある」と回答した人が7割を超えていました。理由の多くは『事故を起こしてほしくない』という切実な思いです。一方で運転する本人は、年齢が上がるにつれて「自分は安全に運転できる」と感じる割合が増えていました。
背景には、高齢者事故の中でも特に操作ミス型の事故が長年減りにくい一方、若い世代の事故は減っているという現実があります。それでも“年齢=運転能力”ではないため、視覚・認知・運転行動など複数の要素から判断する必要があります。この考え方が『運転寿命』という言葉に込められています。
最新科学で運転能力を見える化する取り組み
番組では、目の機能を測るゴーグル型の装置が紹介されました。これは視界の広さや明暗への反応などを計測し、運転に必要な視覚能力を客観的に評価する機器です。開発に携わった大学発ベンチャーは、タクシー運転手500人のデータから『眼球運動と事故歴の関係』を分析し、運転能力の変化を科学的に捉えようとしています。
近年は、走行データやセンサー映像から運転中の注意力や認知状態を推定する研究も進んでいて、加速度や走行時間、夜間の運転頻度などから『安全性の低下の初期兆候』を捉える試みもあります。これらは“年齢だけでは判断できない運転能力”を見える化するための大切な一歩です。
ペダル踏み間違いの裏にある“脳の負荷”
高齢ドライバーの事故で深刻なのが、アクセルとブレーキの踏み間違いです。番組では、神戸で行われた脳科学の実験が紹介されました。
高齢者と大学生が同じペダル操作を行ったところ、高齢者の方がアクセル・ブレーキを踏む瞬間に脳血流の変化が大きいことが分かりました。つまり操作そのものに大きな負荷がかかり、そこに別の情報が重なると“踏み間違い”が起きやすくなる可能性があるという内容です。
さらに、駐車場での細かい前進・後退の繰り返しなど、『操作が中断される場面』では年齢に関係なく踏み間違いが増えるという研究もありました。踏み間違いは単なる認知の問題ではなく、『運動制御能力』の変化や運転環境にも左右される複雑な現象です。
交差点で事故が多い理由と“迷い運転”
交通事故全体のおよそ6割が交差点で起こるとされています。交通事故総合分析センター(イタルダ)の分析では、右左折時にアクセルを何度も踏むなどの“迷い運転”が事故につながりやすい傾向があると示されています。
迷い運転には、不安や緊張、判断の遅れや体調の影響などが複雑に関わります。だからこそ、交差点という場は年齢に関係なく注意が必要です。“年齢ではなく、その日の状態や運転習慣”が重要になるという話は、多くの視聴者に新しい気づきを与えた場面でした。
佐賀県で進む多機関連携の運転能力チェック
番組後半では、佐賀大学や佐賀県医療センター好生館などが連携して行う総合的な運転能力評価が取り上げられました。
運転に不安を覚えて相談に来た70代男性に対して、
・認知機能検査
・脳神経内科医による診察
・シミュレーターによる運転評価
・教習所でセンサーを付けた車の走行分析
などを組み合わせて“実際の運転能力”を細かく評価していました。
このモデルは、単純な年齢基準ではなく『個人の運転のクセ・実際の操作・医療的所見』を組み合わせることで、より納得感のある判断を目指すものです。まだ全国的に普及してはいませんが、“公平で安全な運転継続の判断”に向けた先進的な試みです。
AIが運転寿命を延ばす?同乗者ロボットの可能性
番組の最後には、AIを用いた運転支援の未来像も取り上げられました。
シャープや名古屋大学などが関わる研究では、AIが車の位置情報や加速度を読み取り、危険な操作を検出すると“やさしく助言をするロボット”の開発が進んでいます。
また、運転中の映像から注意力の低下を見抜くAIなど、運転時のクセを客観的に評価してくれる仕組みも登場しています。
こうした技術が普及すれば、本人が気づきにくい変化を早い段階で捉え、運転寿命を少しでも延ばすサポートにつながる可能性があります。
まとめ
『運転寿命』を考えるとき、年齢だけで判断する時代は終わりつつあります。視覚、認知、運動制御、運転のクセ、体調、地域の環境、そしてAIによる客観的測定など、多くの要素が“安全に運転できるかどうか”に関わります。
家族と本人の意識に差があるのは自然なことですが、科学的な評価や新しい技術があれば、より穏やかに話し合うきっかけになります。この番組で紹介された取り組みは、これからの交通社会にとって大きなヒントになる内容でした。
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コメント
クローズアップの運転寿命ですが、アクセルの踏み間違いの点、なんで交通省も、足の不自由者に着目しないのでしょうか?まともに歩けない人が、歩けないから車はおかしい。足の検査は何もなく、踏み間違いは足が効かないが、ほとんどでは。池袋の事故も、加害者はまともに歩けない