- 高齢者“もしも”のときペットは――番組が描く不安と現実
高齢者“もしも”のときペットは――番組が描く不安と現実
2026年3月2日に放送予定のクローズアップ現代
「飼い主も家族も大慌て!高齢者“もしも”のときペットは」は、
老後をペットと暮らしたいと願う人が増える一方で、その裏側にある不安と現実に光を当てます。
「もし倒れたら、この子はどうなるんだろう」
「入院しろと言われたけれど、犬を置いていけない」
番組が追うのは、そんな“声にならない悲鳴”です。
楽しい存在であるはずのペットが、ある日突然、医療や介護の現場で“問題”として扱われてしまう――。
高齢者と動物の関係は、心の支えであると同時に、社会全体で考えないといけない課題でもあります。
今回の回は、その境目にいる人たちに、静かにカメラを向けていきます。
一人暮らし高齢者とペットが増える背景
今、日本では一人暮らしの高齢者が年々増えています。
同時に、犬や猫などのペットを「家族」として迎える世帯も多くなりました。
研究や調査では、ペットと暮らすことが高齢者の外出機会を増やし、心身の健康維持や介護予防につながることが指摘されています。
散歩に出るきっかけになったり、話し相手のいない日でも“命のぬくもり”を感じさせてくれたりするからです。
一方で、年を重ねるのは人だけではありません。
高齢の人が高齢の犬や猫を世話する、いわば老老介護のような状態になることも増えています。
番組は、こうした「支え」と「リスク」が同時に存在する現実を踏まえた上で、
「もしも自分に何かあったら、この子はどうなるのか」という問いを、正面から投げかけていきます。
名古屋の相談窓口に年間一千件超――現場で起きているペット相談
番組でまず取り上げられるのが、名古屋のペット相談窓口です。
ここには、なんと年間一千件以上もの相談が寄せられているといいます。
内容はさまざまです。
「体がつらくて散歩に行けない」
「部屋での糞尿の片づけが追いつかない」
「ペットのことで近所から苦情が来てしまった」
背景には、高齢で体力が落ち、これまで普通にできていた世話が難しくなっている現実があります。
名古屋市には、飼育に不安を抱える人に、ペット関連の事業者や支援先を紹介する
「なごやペットパートナーシップ制度」を担う窓口も整備されています。
相談を受けた職員が、適切なサービスにつなげていくことで、飼い主とペット双方の負担を軽くしようとしているのです。
番組では、この相談の現場を通して、
「困ったときに声を上げられる場所があること」の大切さを、視聴者に伝えようとします。
「ペットがいるから入院できない」医療・介護現場の板挟み
次に焦点が当たるのが、医療と介護の現場です。
治療が必要だと分かっていても、
「犬を置いて入院するくらいなら、このままでいい」
そう言って治療を拒む高齢者がいる――。
番組の予告でも、ペットのために入院治療を拒否する高齢者の姿が紹介されています。
医師や看護師、ケアマネジャーたちは、命を守りたいという思いと、
「ペットの世話が気がかりで病院に来てくれない」という現実の間で板挟みになっています。
こうした問題は、特定の地域だけでなく、日本各地で報告されています。
在宅医療や在宅介護の分野でも、ペットの存在が治療方針に影響するケースがあることが調査で指摘されています。
番組では、
「入院してもペットの面倒を見てもらえる安心感を、どう作るか」
という視点から、医療・介護と動物の支援が結びつく必要性を浮き彫りにしていきます。
飼い主が亡くなったあと犬や猫はどこへ行くのか
もう一つ、深刻な問題が飼い主の死亡後です。
名古屋の相談窓口には、飼い主が亡くなり、残された犬や猫の行き場がなくなるケースも報告されています。
身寄りのない高齢者や、家族が遠方に住んでいる場合、
「誰が引き取るのか」「施設に入るときどうするのか」が、はっきり決まっていないことが多いのです。
近年は、老犬・老猫ホームや、終生飼養先を紹介する民間サービスも増えてきました。
入居金や年間費用が必要になる一方で、最後まで責任を持ちたい飼い主のニーズに応える仕組みとして注目されています。
番組は、こうした“新しい受け皿”の存在も踏まえながら、
「そもそも元気なうちから、どこまで決めておくべきなのか」という課題を提示していきます。
飼い主の死亡は避けられない現実です。
だからこそ、そのときペットが路頭に迷わないよう、
早い段階から周囲と話し合い、選択肢を知ることが重要だと伝えます。
港区「動物政策監」という新しいポストのねらい
番組のもう一つの大きな柱が、東京都港区の取り組みです。
港区は、令和七年四月から、獣医師免許を持つ動物政策監という専門職を新設しました。
区の動物施策を推進する責任者として、ペット相談や地域猫活動、動物に関する会議への参加など、幅広い役割を担っています。
動物政策監は、単なる「窓口」ではありません。
・ペットのしつけや行動相談
・地域での猫トラブルの相談
・保健所や動物病院、ボランティアとの連携
こうした実務を通して、
「人と動物がともに暮らしやすい街」をつくるための司令塔となっているのです。
番組では、この港区の試みを手がかりに、
高齢者とペット問題を“動物の問題だけ”として扱うのではなく、
福祉政策の一部として位置づける新しい発想を紹介します。
人の福祉と動物の専門家が連携すると何が変わるのか
高齢者の支援にあたるのは、ふだんは福祉の専門職です。
ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員は、人の生活と健康を見るプロですが、ペットの専門知識を持っているとは限りません。
一方、獣医師や動物看護師は動物の専門家ですが、高齢者福祉の制度や介護保険の細かな仕組みには詳しくない場合もあります。
番組が示すのは、この二つの世界が連携することで見えてくる新しい支援のかたちです。
例えば、
・ケアマネジャーが「ペットも含めた生活全体」をアセスメントする
・獣医師や動物政策監が、高齢者支援の会議に参加する
・地域のボランティアや動物愛護団体と情報を共有する
こうした取り組みは、国の調査研究でも重要性が指摘されています。
ペットを飼うことが介護予防につながるメリットを活かしながら、
「もしも」に備えた仕組みを地域全体で作る――。
番組は、その第一歩となる事例を通して、視聴者にイメージを具体的に示していきます。
帝京科学大学・佐伯潤教授の視点――高齢社会で問われるペットとの付き合い方
スタジオには、帝京科学大学アニマルサイエンス学科の教授で獣医師の佐伯潤さんが登場します。
佐伯さんは、小動物臨床の現場で長年診療に携わってきた経験を持ち、
人と動物の幸せな暮らしを支える視点から、動物看護や動物福祉に取り組んできた専門家です。
番組では、
・高齢者がペットを迎えるときに考えておきたいこと
・ペットの年齢と飼い主の年齢の“バランス”
・動物病院としてできるサポート
といったポイントを、分かりやすい言葉で解説してくれるはずです。
専門家の視点からも、ペットとの暮らしを「感情」だけでなく、「計画」と「備え」のあるものにしていく必要性が語られます。
それはペットの幸せのためであると同時に、飼い主自身の尊厳を守ることにもつながります。
高齢者とペットの生活の質を守るための“事前の備え”チェックポイント
番組では、対策の要は事前の備えと、人と動物の専門家の連携だと強調されています。
記事としては、視聴者がすぐに使えるイメージで、次のようなチェックポイントを整理しておくと分かりやすいです。
・自分に何かあったとき、ペットを預かってくれる人の候補はいるか
・その人に、具体的な意思を伝えているか
・ペットの年齢、持病、かかりつけの動物病院の情報を整理しているか
・経済的な負担(餌代、医療費、終生飼養の費用など)をどう確保するか
・自治体や地域に、ペットの相談窓口や支援制度があるか
こうした「もしもノート」のようなものを作っておくことで、
急な入院や施設入所、万が一のときにも、周囲が動きやすくなります。
実際に、福岡県古賀市などでは、高齢者の急な入院や死亡に備えて、
ペットの預け先や引き取り先を事前に決めておく仕組みを導入しています。
番組で紹介される名古屋や港区のような事例と合わせて、「まずは自分の住む地域の情報を調べてみよう」という行動につながる内容になっています。
それでもペットと暮らしたい――高齢者と動物が安心して共生できる社会へ
最後に番組が問いかけるのは、
「それでも、ペットと一緒に暮らしたいですか?」という、少しドキッとする質問です。
答えは、もちろん「はい」で良いのだと思います。
高齢者 ペットの暮らしは、寂しさをやわらげ、
生きる意欲や生活のリズムを生み出してくれます。
ただ、その幸せを続けるためには、
・現実を直視すること
・元気なうちから周囲と話し合うこと
・自治体や専門家の力を借りること
この三つが欠かせません。
クローズアップ現代「高齢者“もしも”のときペットは」は、
「ペットを手放せ」と責める番組ではなく、
“どうすれば最期まで一緒にいられるのか”を、一緒に考えようとする番組です。
この記事では、名古屋の相談窓口や港区の動物政策監、そして専門家の視点を手がかりに、
これから高齢期を迎える人や、すでにペットと暮らす人が、
一歩先の未来を想像できるようなヒントをまとめました。
自分と、自分の大切な犬や猫のために。
今日のうちにできる小さな備えを、一つだけでも始めてみたいですね。
NHK【午後LIVEニュースーン】ペットを諦めない!高齢者とペット共生を支える最新支援とは|2025年6月30日放送
高齢者とペットの“平均寿命差”から見えるリスクを紹介します

高齢者とペットが一緒に暮らすとき、平均寿命の違いがとても大きな意味を持ちます。ここでは、その事実を丁寧に紹介します。数字だけを見るとシンプルですが、生活の中では大きな影響を生むため、あらかじめ知っておくことが大切です。高齢者とペットが安心して暮らすために、まずはこの寿命差がどんなリスクにつながるのかを見ていきます。
ペットのほうが早く年をとるという確かな事実
犬や猫の平均寿命はおよそ十四〜十六年ほどと報告されています。これは人間の平均寿命と比べるとかなり短く、ペットは人よりもずっと早いペースで年をとります。たとえば十五歳の犬や猫は、人間でいえば七十〜八十歳に相当すると言われており、体の衰えが一気に進む時期です。高齢者が、すでに高齢のペットの世話をする状況になることも多く、その負担は日常生活に直接影響します。ペットが老いていく速度を知っておくことは、暮らしの準備を考える上で欠かせません。
“寿命差”が生活に生むリスク
人間は八十歳前後まで生きる可能性がありますが、犬や猫はその五分の一ほどの期間しか生きられません。この大きな差は、飼い主が元気なうちにペットが高齢期を迎えるという現実につながります。ペットの介護が必要になると、食事の補助、トイレの世話、薬の管理など、日々の手間が増えていきます。高齢者自身が体力に不安を抱えている場合、この負担は大きく感じられます。同時に、急な入院や体調不良のとき、ペットの世話が誰にもできないという問題も起こりやすくなります。
最後まで守るために必要な視点
もう一つの重要なリスクは、飼い主が先に弱った場合のペットの行き場です。高齢者が体調を崩したり、予期せぬ状況になったりしたとき、ペットをどこへ預けるのかが急に問題になります。寿命差が大きいからこそ、飼い主の体調悪化や生活の変化がすぐにペットの暮らしに影響します。生活の中で起こりやすいこの“ずれ”に気づき、身近な人や地域の制度、動物病院などと早めに情報を共有しておくことが、安心して暮らし続けるための大切な一歩になります。
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