大切な人へ残す言葉は?死後に届くメッセージ“ラストレター”|2025年6月30日放送内容まとめ
2025年6月30日、NHK総合で放送された「クローズアップ現代」では、大切な人へ思いを伝える“ラストレター”について特集されました。死後に届くメッセージとして注目を集めているこの取り組みは、手紙だけでなく、動画や音声、SNSなどさまざまな形で広がっています。番組では実際のエピソードや、日本人の死生観の変化も紹介されました。
死後に届くラストレターとは?
今回の放送では、お笑いタレントの田村淳さんが、自らの実体験を語りました。田村さんの母・田村久仁子さんは、5年前に癌で亡くなりましたが、その時、久仁子さんからのラストレターを受け取ったそうです。その手紙は、田村さんにとって大きな支えとなり、深い感謝と驚きがこみ上げたといいます。この経験をきっかけに、田村さんは「生前に思いを残す動画サービス」を始めました。
このサービスは、自分が亡くなった後、あらかじめ指定した相手にメッセージが届く仕組みです。映像や音声を使って、自分の思いや感謝、伝えたい言葉を残せます。
最近では、ラストレターの形もさまざまに広がっています。
・動画や音声メッセージを録画し、家族や友人に届ける
・LINEやSNSを使ったメッセージサービスを利用する
・インターネット上の専用サイトやアプリで、文章や写真を事前に登録しておく
こうした仕組みを使えば、自分の死後、特定の日やタイミングに合わせて、相手にメッセージが届きます。たとえば、誕生日や記念日、あるいは自分の命日に、大切な人へ思いを届けることができます。
さらに、ラストレターのサービスは、年配の人だけでなく若い世代にも広がっているのが特徴です。SNSを使い慣れている若い人たちが、自分の将来を考えるきっかけとして利用するケースも増えてきました。
番組では、LINEを活用したメッセージサービスが、大阪府を中心に利用者を増やしている例も紹介されていました。スマホ1つで簡単に登録できるため、気軽に始める人も多いそうです。
このように、「自分の思いを残す方法」は昔と比べて多様化し、より身近な存在になっています。ラストレターは、大切な人へ「ありがとう」や「がんばって」といったシンプルな言葉を残すだけでなく、自分の人生を振り返り、伝えたいことを形にする手段として、多くの人に受け入れられ始めています。
日本人の死生観とラストレター
番組では、タレントの榊原郁恵さんのエピソードも紹介されました。榊原さんは、3年前に夫で俳優の渡辺徹さんを亡くしました。結婚生活の中で、渡辺さんは結婚記念日や誕生日に、毎年欠かさず花とメッセージを贈っていたそうです。そのやさしい気遣いは、夫婦の大切な習慣だったといいます。そして、亡くなる前の最後の結婚記念日にも贈られた言葉が、今でも榊原さんの心の支えになっていると語っていました。
このように、大切な人からのメッセージは、たとえその人が亡くなった後でも、残された人の気持ちを支える力になります。ラストレターはその役割を果たす手段のひとつです。
また、番組では東京大学の堀江宗正さんが、日本人の死に対する意識の変化について紹介していました。堀江さんは死生学を専門に研究しており、最新の調査結果が発表されました。
・「1年以内に祈りをした」と答えた人は28.3%
・「お墓や納骨堂を訪れた」と答えた人は26.4%
これらの数字は、どちらも5年前と比べて減少しています。また、「自分の死について家族と話すことに抵抗がある」と答えた人は43.3%にのぼり、こちらは5年前より増加しました。
この結果からわかるのは、現代の日本では、以前よりも死を身近なものとして語る機会が減っているということです。宗教的な行事や家族間での死についての対話が減少する中で、ラストレターのように、生前に自分の思いを形として残す方法が、より必要とされているのかもしれません。
メッセージを言葉で伝えるのが苦手な人でも、手紙や動画、音声であれば、素直な気持ちを残すことができます。特に、日本人の間では「生きているうちに感謝や愛情を言葉にするのが恥ずかしい」と感じる人が多い傾向があります。だからこそ、ラストレターのような取り組みが注目されているのです。
亡くなった後に届く言葉は、遺された人にとって大きな意味を持ち、悲しみの中にも温かさや前向きな気持ちを与えてくれます。こうした背景からも、ラストレターは、これからますます多くの人に広がっていくのではないでしょうか。
寺が預かるラストレターの役割
番組では、手紙を生前に預かり、亡くなった後に大切な人へ届ける寺の取り組みも紹介されました。東京にある證大寺(しょうだいじ)では、これまでに800通を超えるラストレターが預けられています。住職は、書き手一人ひとりに寄り添い、その人の思いを丁寧に形にするお手伝いをしてきました。
證大寺では、手紙を預けるだけでなく、気持ちを整理する時間を大切にしています。自分の死について考えるのは簡単なことではありませんが、住職はゆっくりと話を聞き、必要なら何度でも対話を重ねているそうです。
この日、住職が訪れたのは、癌の緩和ケアを受けている山口さんの元でした。山口さんは、病状が進行し、日に日に身体の自由がきかなくなっています。そんな中でも「せめて子どもたちに感謝を伝えたい」という強い思いから、ラストレターを書くことを決めました。山口さんは、育て上げた4人の子どもたちへの感謝の言葉を丁寧に綴ったのです。
一方、長谷川さんは、独立して暮らす2人の娘へのラストレターを書くかどうか、長い間悩み続けていました。自分の気持ちをどう伝えたらよいのか、迷いや不安があり、なかなか筆を取ることができなかったのです。しかし、考え続ける中で「いま伝えなければ後悔するかもしれない」という思いが次第に強くなりました。
その結果、ラストレターを書く決心が固まり、3年という長い時間をかけて、ついに思いを込めた手紙を書き上げたそうです。
證大寺のような場所があることで、「自分の思いを安心して託せる」と感じる人は少なくありません。家族や友人へ言葉を残したいと思いながらも、なかなか行動に移せない人にとって、寺の存在は大きな支えとなっています。
亡くなった後でも、愛情や感謝の気持ちを伝えられるラストレターは、残された人にとっても大切な贈り物です。住職が寄り添いながらサポートするこの取り組みは、これからも多くの人にとって必要なものになっていくでしょう。
自分の思いを残すという選択
番組の最後には、ジャーナリストの古田雄介さんも「自分もラストレターを書いている」と明かしました。自分の死後に大切な人へ思いを届けるという選択は、決して特別なことではなく、誰にでもできる身近な行動になりつつあります。
今は、動画や音声、SNS、手紙など、さまざまな形で思いを残せる時代です。「自分がいなくなった後でも、大切な人に言葉を届けたい」という気持ちが、多くの人の心を動かしています。
番組を通して、改めて「いま伝えたいこと」「いま残したい思い」を考えるきっかけになった方も多いのではないでしょうか。これからも、自分らしい方法で大切な人に思いを届ける選択肢が広がっていきそうです。
【情報源】
NHK公式番組ページ:https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/episode/te/49XWV17Q9V/
手紙寺公式サイト:https://souzoku.asahi.com/article/14940431
ラストレター関連記事:https://note.com/kanami_owl/n/n4dff17436d4e
終活情報サイト:https://portal.navi-saras.jp/news/20240131_01
コメント