南千住の老舗パン屋「青木屋」コロッケパン物語
「たかがコロッケパン、されどコロッケパン」。その一言がぴったりと当てはまる場所が、東京・南千住にあります。小さな下町の総菜パン屋 青木屋。ここで作られるシンプルなコロッケパンが、半世紀以上にわたり人々の心とお腹を満たし続けてきました。2025年9月19日(金)に放送予定のNHK「ドキュメント72時間」では、この店を舞台に、さまざまな人々の物語が紡がれます。放送前にその魅力や背景を知っておけば、番組をもっと深く楽しめるでしょう。
南千住に根付いた青木屋の基本情報
青木屋は、東京都荒川区南千住6-47-14に位置する昔ながらのパン屋です。電話番号は 03-3807-4517。営業時間は朝の7時から売り切れまでで、午前中に完売することも多く、地元では「早起きしないと食べられないパン屋」として知られています。
定休日は日曜と祝日。駐車場はなく、訪れる際は公共交通機関が便利です。アクセス方法としては、
-
JR・東京メトロ・つくばエクスプレス 南千住駅から徒歩約10分
-
東京メトロ日比谷線 三ノ輪駅から徒歩10分
-
都電荒川線 三ノ輪橋停留所から徒歩5分ほど
と、複数の路線が利用できるのも特徴です。下町の住宅街にひっそりと佇み、観光客よりも地元の常連が中心。これが青木屋の“町のパン屋さん”としての存在感を支えています。
看板商品はシンプルで力強いコロッケパン
青木屋の魅力は、なんといってもシンプルな惣菜パンです。取り扱うのは主に4種類。
-
コロッケパン
じゃがいもを蒸して潰し、丁寧に成形したコロッケを店頭で揚げ、ふんわりした大きなコッペパンにサンド。ソースをかけるだけの飾り気のない一品ですが、その温かさと食べ応えで多くの人を惹きつけます。 -
ハムカツパン
厚めのハムカツをサクッと揚げ、コッペパンに挟んだ一品。ハムの塩味とソースの甘酸っぱさが口いっぱいに広がり、懐かしい味として人気です。 -
メンチカツパン
肉の旨味が詰まったメンチカツを豪快にサンド。ジューシーな肉汁とパンの柔らかさが相性抜群で、男性や若者からの支持が厚いと言われています。 -
とんかつパン
ガッツリ食べたいときにおすすめ。厚切りの豚肉を使ったとんかつはボリューム満点で、ランチ代わりにも十分な満足感があります。
価格帯は270円〜320円前後。一個で十分お腹いっぱいになるため、コスパの良さも評判です。いまや全国に惣菜パンは数あれど、青木屋のように揚げたてをシンプルにサンドするスタイルは希少。だからこそ長年愛され続けているのです。
下町に息づく“変わらない味”と人情
青木屋の味は、単なる食事を超えて人々の記憶や暮らしと結びついています。
「学生時代から50年以上通っている」という常連客も少なくありません。若いころに部活帰りに食べた味が、大人になっても変わらずそこにある。その安心感と懐かしさが、多くの人にとって人生の一部になっているのです。
さらに「友人や家族の分もまとめて購入する」という人も多いのが特徴。ここではパンが人と人をつなぐコミュニケーションの媒介になっています。家に持ち帰れば会話が生まれ、近所へのお裾分けは地域の絆を育む。青木屋のパンは、まさに下町の“心の共有財産”なのです。
青木屋の店構えと雰囲気
お店の外観は、昭和の香りを残したレトロな佇まい。派手な装飾はなく、ガラス越しに並ぶパンと揚げ物が主役。テイクアウト専門で、店内にイートインスペースはありません。
揚げ物は店先で調理されており、油の音や香りが漂います。並んでいると、揚げたてがパンに挟まれていく様子を間近で見られる“ライブ感”があり、これもまたファンを惹きつける理由のひとつです。
口コミで見えてくる人気の秘密
口コミサイトやSNSでは、以下のような声が多く寄せられています。
-
「揚げたてでアツアツ、パンがふわふわで最高」
-
「懐かしい味で涙が出そうになった」
-
「ボリュームがあり、1つでお腹いっぱいになる」
一方で、人気ゆえの悩みもあります。
-
「午前中に行かないと売り切れる」
-
「行列が長いのが大変」
それでも多くの人が「並んででも食べたい」と語ることからも、青木屋のパンが地域に根ざし、強く支持されていることが分かります。
昭和の香り漂う南千住の老舗パン屋
舞台は都電荒川線の終点、三ノ輪橋駅のすぐ近く。創業65年の総菜パン屋は、朝から行列ができる人気店です。『コロッケパン』はもちろん、『メンチカツパン』『ハムカツパン』も並びますが、やはり一番人気は昔ながらのコロッケパン。取材初日には、スーパー帰りの女性や東京オリンピックの頃から通っている男性、さらには足立区からまとめ買いに訪れる常連客が姿を見せました。かつて近くには東京球場があり、野球観戦のお供にここのパンを頬張った人も多かったそうです。
海外からの帰国者や子どもたちの思い出
昼時には国際色も。コートジボワールに住んでいる女性が一時帰国で訪れたり、近所の小学生兄弟がおつかいで買いに来たり。夏休みの宿題を抱えつつ、揚げたてのパンを手に笑顔を見せる子どもたちの姿は、地域に根付いた店だからこその光景でした。さらにフードコンサルタントの来店で、このコロッケが冷凍ではなく65年間変わらず手作りであることが明らかになりました。夕方5時にはパンが売り切れ、暖簾が下がる人気ぶりも映されました。
夜明け前から続く仕込みと家族の物語
2日目は、午前3時から始まる仕込みの様子。店は親子2代で切り盛りされ、現店主は44年のキャリアを持ちます。食材価格の高騰で昨年やむなく値上げをしたものの、下町の人々は価格にも味にも敏感。まさに薄氷を踏む日々です。早朝から仕事前に立ち寄る人、透析で食事制限のある男性、イラン出身で32年日本に住む常連、さらには仲良し姉妹や地元高校の卒業生など、多様な人々の人生がコロッケパンに重なっていました。中でも在宅ワークをする女性が「ほぼ毎日通っている」と語る姿は、店の存在が生活の一部になっていることを象徴していました。
三代目へ受け継がれる思いと下町の人情
3日目には、半年ほど前から働き始めた娘さんが登場。コロッケの使い方を間違え、父である店主から商売の基本を教わる場面もありました。簡単に受け継げるものではないからこそ、味と同じように時間をかけて守られていく伝統があります。また、古くから付き合いのあるねじ商社の男性、清掃業の男性、床屋を営む実家を持ちながら別の道を歩む人など、常連客それぞれの人生模様も描かれました。
最後を飾った親子のエピソード
最終日、まず登場したのは郵便局員の男性。すぐ近くで生まれ育ち、コロナ禍で職を失った過去もある彼にとって、このパンは心の支えでした。そしてラストを飾ったのは、自転車で隣町からやってきた親子。子どもが「好きなコロッケがパンに挟まっていてホッとする」と笑顔で語った一言が、この4日間の取材を象徴するものでした。
まとめ:南千住のコロッケパンが語るもの
この記事のポイントは以下の3つです。
・創業65年の老舗パン屋が地域に根ざし、人々の記憶に残る存在であること
・コロッケパンが単なる食べ物ではなく、人生の物語や思い出を結びつける力を持っていること
・親子2代で守り続ける味が、未来へとつながっていく「下町の文化遺産」であること
南千住のコロッケパンは、ただのパンではありません。そこには昭和から令和にかけて、人々の暮らしと感情がぎゅっと詰まっています。あなたがもし南千住を訪れることがあれば、ぜひ立ち寄ってその一口を味わってみてください。きっと、誰かの物語が重なった特別な味が感じられるはずです。
気になるNHKをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。


コメント