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NHK【ドキュメント72時間】鹿児島・菱刈鉱山のリアル 金を掘る若者たちと“山に生きる誇り”|2025年10月10日★

ドキュメント72時間

鹿児島の“金の山”で生きる人たちへ——見えない誇りを掘り続ける物語

山の奥深くで、金を掘り続ける人たちがいます。鹿児島県伊佐市にある菱刈鉱山。ここは日本で唯一、今も年間3トン以上の金を産出する現役の金鉱山です。1985年の操業開始から40年近く、途絶えることなく金を掘り出し続けてきました。その金は、ジュエリーだけでなく、スマホや家電、医療機器などにも使われ、私たちの暮らしの中で“見えない形”で支え続けています。
今回の『ドキュメント72時間』では、この“金の山”で働く人々の3日間に密着。若手からベテランまで、さまざまな世代がどんな想いで山と向き合っているのか、番組を通して見えてくるものがあるはずです。この記事では、放送前の段階でわかっている鉱山の背景や現場のリアル、そして金という存在が持つ深い意味を掘り下げていきます。

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若手とベテランが支える“金の道”

菱刈鉱山で働くのはおよそ190人。その中には10代の新入社員から、60代の熟練技術者までがいます。彼らが共に働く舞台は、全長100キロを超える坑道。地上の光が届かない世界で、金を含む鉱石を探し、掘り、選別する作業が続きます。
若手社員は入社後、採掘・選鉱・設備保守・保安管理など複数の部門を順番に経験するジョブローテーションを通して、鉱山全体を理解します。現場に出れば、自ら重機を操作し、地質のデータを解析し、どこに金が眠るかを判断する。
一方で、ベテランたちは、長年の経験と感覚で“金の匂い”を読み取ります。鉱脈の走る方向、地層の微妙な色の違い、音の響き…。データでは測れない感覚を頼りに、若手の判断を支えています。
若手がデジタルの力で見つけ、ベテランが勘で確かめる——そんな世代を超えた協働が、菱刈の強さを作っているのです。

現場では「失敗から学ぶ」文化も根づいています。作業中の小さな判断ミスや機械の不具合も、隠さず共有する。危険な場所だからこそ、仲間同士の信頼が何よりの安全対策です。こうした環境が、若手にとっても“挑戦できる現場”を作り出しています。

山とともに生きる誇り

鉱山で働く人々に共通しているのは、「山に生かされている」という感覚です。
坑道の中は常に30度前後、湿度90%を超えることもあります。水の音、重機の振動、爆薬の衝撃。そんな環境の中で、1ミスが命に関わることもあります。それでも、彼らは毎朝ヘルメットをかぶり、地底へと降りていくのです。
あるベテランはこう語ります。「金は神様がくれたもの。人の欲のために掘るんじゃない。自然の恵みをいただいているんです」。この言葉の中には、自然に対する敬意と謙虚さが息づいています。
鉱山には「全山笑顔でケガなく帰る」という合言葉があります。これは安全目標であると同時に、仲間と家族を想う祈りのような言葉。山で働くすべての人が、無事に家に帰ることを第一に考え、互いを気遣う文化が受け継がれているのです。

さらに、菱刈鉱山は地域との関係も深く、地元住民と共に歩んできた歴史があります。操業が始まった1980年代、鉱山ができたことで伊佐市には多くの雇用が生まれました。地元出身者がUターンして働くことも多く、「生まれ育った山で働ける誇り」を感じている人も少なくありません。

暮らしを支える“金”の力

金と聞くと、ネックレスや指輪などの装飾品を思い浮かべがちですが、実は現代社会のあらゆるテクノロジーに欠かせない素材です。金は電気をよく通し、腐食しにくく、酸化しないという特性があります。そのため、スマートフォンやパソコンの基板、スイッチ、接点部分などにごく微量ながら使われています。
スマホ1台あたりに含まれる金はおよそ0.03グラム。しかし世界中の台数を考えると、途方もない量になります。つまり、菱刈で掘り出された金は、ジュエリーではなく“通信”や“情報”という形で、世界の隅々にまで届いているのです。

また、金は人体との相性もよく、医療の世界でも活躍しています。歯科治療や人工関節、心臓ペースメーカーなど、体の中で長期間使われる医療機器にとって、錆びない・安全な素材である金は理想的です。さらに、金は精密機器や人工衛星の部品にも利用されており、地上だけでなく宇宙の技術をも支えているのです。

そして忘れてはならないのが、「都市鉱山」という概念です。使い終わったスマホや家電には、まだ使える金が眠っています。これを再利用するリサイクル事業が注目されており、国立環境研究所なども“都市の中の鉱山”として研究を進めています。金は掘って終わりではなく、使って、再び生まれ変わる循環の資源なのです。

日本唯一の“金を生む山”の使命

住友金属鉱山株式会社が運営する菱刈鉱山は、1981年の発見以来、国内の金生産量の9割以上を担っています。鉱石1トンあたりに含まれる金の量は約20グラム。これは世界平均(3〜5グラム)の約4倍という驚異的な数値です。
この高い“品位”こそ、菱刈が世界有数の金鉱山と呼ばれる理由です。採掘された鉱石は愛媛県新居浜市の東予工場へ運ばれ、99.99%の純度まで精錬されます。こうして生まれた金は、再び社会の中で新たな命を持つのです。

菱刈の金は単なる経済資源ではありません。それは“日本の技術の誇り”でもあります。国内で金を自給できることは、非常時の供給リスクを下げるという意味でも重要です。今後、再生可能エネルギーや電子機器の需要が増えるなかで、国産の金の存在はますます価値を増していくでしょう。

続く探鉱と未来への挑戦

鉱山の仕事は、ただ掘るだけでは終わりません。現在も新たな鉱脈を探すため、地質学者技術者が周辺地域の地質を調査しています。近年は菱刈西部地区で新たな鉱脈が発見されるなど、探鉱は進化を続けています。
AIを使った地質データ解析、ドローンによる地形測量、IoTセンサーでの坑内環境モニタリングなど、最新技術が導入されています。それでも最後の判断は、人の目と感覚です。
現場の職人たちは、「AIは金を見つけてくれるけど、掘るのは人間」と笑います。デジタルと人の技が共存しながら、100年続く鉱山を目指しているのです。

この鉱山で働く人々は、金を“掘る”だけではなく、“未来を掘る”という信念を持っています。自分たちの仕事が、地球の資源と人の暮らしをつなげている。その確かな誇りが、今日も山の奥深くで輝いているのです。

まとめ

この記事のポイントは3つです。
菱刈鉱山は日本唯一の現役金鉱山で、年間3〜6トンの金を産出。
・若手とベテランが協力し、技術と勘を融合させながら“山を生かす誇り”を守っている。
・掘り出された金は、スマホ・医療機器・宇宙技術など、私たちの生活の根幹を支えている。

金は単なる“富の象徴”ではなく、人と自然、過去と未来を結ぶ絆のような存在です。放送後には、『ドキュメント72時間』で映し出される現場の声を加え、彼らのリアルな姿を追記していきます。

ソース:
・住友金属鉱山株式会社 公式サイト(https://www.smm.co.jp/)
・サライ.jp「日本唯一の金鉱山・菱刈鉱山」
・東洋経済オンライン「世界最高水準の金品位 菱刈鉱山」
・まっぷるウェブ「鹿児島・伊佐 菱刈鉱山の現場」
・国立環境研究所「都市鉱山プロジェクト」


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