選挙と日本人の100年:戦時中から現代までの関わりを探る
あなたは「なぜ選挙の投票率は下がっているのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?あるいは「戦争中でも選挙が行われていた」と聞いて驚いた経験はないでしょうか。この記事では、日本人と選挙の関わりを歴史から現代までたどり、戦時中の特異な選挙、戦後の女性参政権の大転換、そして現代の投票率や若者の意識の問題をわかりやすく紹介します。この記事を読むことで、選挙を通じて日本人がどんな「選択」をしてきたのかを理解し、今の社会を考えるヒントを得られます。
NHK 【日曜討論】“10代からの政治教育”が未来を変える?若年層と情報リテラシー・SNSと選挙の関係を深掘り|2025年7月27日放送
戦時中に行われた1942年の総選挙とは
結論から言えば、太平洋戦争中に唯一行われた1942年4月30日の総選挙は、表向きは「選挙」という形をとっていましたが、実際には政府と軍部の強い支配のもとで行われ、国民の自由な意思が大きく制限されていました。
この時期、日本の政党はすでに存在していませんでした。1940年に既存の政党はすべて解体され、代わりに大政翼賛会という政府・軍部寄りの組織に統合されていたからです。そのため、本来あるはずの「政党間の争い」や「政策の比較」といった選挙の自由な構図は完全に失われていました。
また、反戦派や左派の政治家は厳しく弾圧され、逮捕される人も多く、事実上、立候補さえできない状況に追い込まれていました。国民は選挙で投票をする機会こそ与えられていましたが、その選択肢はきわめて限られており、結果的に「政府を支持する候補」に票を入れる以外に道がなかったのです。
それでも投票率は83.1%という非常に高い数字を記録しました。一見すると国民が積極的に参加したように見えますが、実際には「選挙に行くこと」自体が社会的義務のように強調され、国民統制の一環として利用されていました。選挙は人々の声を反映する場ではなく、むしろ戦意高揚や政府体制の正当化のために機能していたのです。
こうして1942年の総選挙は、形式上は民主的な選挙でありながら、その本質は自由のない「統制下の政治儀式」となっていました。
戦後の女性参政権と大転換
終戦からわずか半年後、日本社会は大きな転換期を迎えました。1945年12月17日に衆議院議員選挙法が改正され、それまで男性に限られていた選挙権が、20歳以上の男女すべてに平等に与えられたのです。
そして1946年4月10日、戦後初めての総選挙が行われました。この選挙では、女性が初めて投票に参加できるようになっただけでなく、自ら立候補することも可能になりました。その結果、全国から多くの女性候補者が立ち上がり、最終的に39人の女性議員が誕生しました。これは日本の政治史において画期的な出来事でした。
この背景には、戦前から婦人参政権を求めて活動を続けてきた市川房枝らの粘り強い運動がありました。長年の努力がようやく実を結び、多くの女性たちの声が政治の場へ届く道が開かれたのです。
さらに1947年に公布・施行された日本国憲法は、第14条で「法の下の平等」を掲げ、性別による差別を禁止しました。この一連の流れは、日本の民主主義とジェンダー平等を根本から支える基盤となり、戦後社会を象徴する歴史的な大転換点となったのです。
現代の日本人と選挙の関わり
2024年の衆議院選挙の投票率は約53.8%にとどまりました。これは戦時中の1942年の総選挙(投票率83.1%)や、戦後直後の1946年総選挙(投票率72%超)と比べると大きく低い数字です。かつて「国民の一大イベント」だった選挙が、現代では半分近い有権者にしか参加されていないのが現状です。
特に目立つのは若年層の投票率の低さです。選挙権年齢は2016年に18歳以上へと引き下げられ、若者の政治参加が期待されました。しかし実際には「政治が自分の生活に直結していると思えない」「政策が難しくて理解しにくい」といった声が多く、十分な投票行動にはつながっていません。若者の政治離れが、全体の投票率を押し下げる大きな要因となっています。
一方で、現代の選挙ではSNSやインターネットが情報源として大きな役割を果たすようになりました。テレビや新聞だけでなく、TwitterやInstagram、YouTubeなどから候補者や政党の情報を得る人が増えています。そのため、候補者や政党がどのように信頼性や透明性を示すかが重要になっており、オンライン上での発信力が選挙結果を左右する時代に変わりつつあります。
つまり、今の日本人は「投票行動で関わる」というよりも、「情報を受け取り選別する立場」として選挙と向き合うことが多くなっています。投票率の低下は課題ですが、同時に新しい形の関わり方が生まれているとも言えるのです。
まとめ:選挙の歴史を現代に生かすために
この記事のポイントは以下の3つです。
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戦時中の選挙は「自由な選択」ではなく、政府の支配を正当化する道具だった
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戦後の女性参政権は民主主義と平等社会の始まりを象徴した
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現代は投票率低下や若者の政治不信が課題だが、SNSなど新しい関わり方も広がっている
選挙は日本人の社会参加の姿を映す鏡です。戦時中の制約や戦後の解放、そして現代の課題を知ることで、私たちは「今、自分がどう関わるべきか」を考え直せます。次の選挙、あなたはどんな選択をしますか?
ソース:
ウィキペディア(1942年日本の総選挙・日本の女性参政権)
国立国会図書館「女性参政権100年」特集
国立公文書館 戦後選挙制度改革関連資料
NHK「歴史探偵 日本人と選挙」番組情報(2025年9月17日放送予定)
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